その14
題字 書家・新舟律子


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71. 神奈川県唯一の横綱、武蔵山が四国から持ち帰った松


昭和10年横綱武蔵山が四国巡業で記念に四国のマツを持ち帰った4本のうちの1本。実家の隣の家、金蔵寺に寄進したもの。本堂前の「武蔵山武 遺愛の松」
名 称 第33代横綱武蔵山の
遺愛の松
樹種 マツ科
マツ属
樹齢&
大きさ
樹齢80年 樹高5m 幹周り約30cm
所在地 横浜市港北区日吉本町2丁目 金蔵寺境内
行き方 東横線日吉駅から徒歩13分。地下鉄グリーンライン日吉本町駅から徒歩3分

中央が昭和10年(1935)第33代横綱に栄進した武蔵山(本名横山武)。右に露払い笠置山、左に太刀持ち・大邱  (沿線雑誌『とうよこ沿線』32号から)

生い立ち&
見どころ
 日吉の名刹、金蔵寺は東横線日吉駅西口の「普通部通り」を真っ直ぐ進み、日吉台小学校前の急坂の赤門坂を下った先、右側。金蔵寺の手前、東隣が、神奈川県が生んだただ一人の横綱、第33代横綱武蔵山、本名横山武の生家でした。
 
 横山武少年の家は横山治夫家の分家で、武は農業と米屋を営む家の長男でした。当時の徴兵制は長男は家業の跡継ぎのため徴兵免除、武は小学生の頃から力持ちで家業の労働力として大いに役立つ子でした。父の手伝いで子牛を引いて近所の菰(こも ※ワラで編んだムシロ)を買い集めているときのことでした。積荷が重くて子牛がどうしても急坂の赤門坂を登れません。と、武は荷車を子牛から外して自分で引っ張り上げてしまいました。その怪力はやがて日吉村の評判になりました。

 近郷の青年団は多摩川の河川敷に土俵を作って相撲大会を開くのが年中行事でした。武は出場するたびいつも優勝し、賞金を稼ぎ、家計の足しにしていたそうです。<本家の横山治夫さんの話>
 
 この相撲大会に来賓で列席していた中原町長(川崎市中原区)の安藤安さんは武少年の無敵の強さに無限に伸びる天性の能力を予見、出羽海部屋に世話したのが相撲界入りでした。大正14年(1925)、16歳で入門。初土俵は翌年1月でシコ名はあの多摩川の土俵から「玉川」。その後、怪力ぶりを発揮して幕内に昇進、ふるさと武蔵の国にちなみ「武蔵山」と改名し、7年で関脇を飛び越して大関に昇格するスピード出世。ついに昭和10年26歳の若さで第33代横綱に栄進したのでした。

 長男・武青年は横綱になっても家族や隣近所のことがいつも気がかりでした。横綱になって初の地方巡業は四国でした。その記念にいつまでも心に残る四国土産を何にしようか・・・、思案の末、“四国の松”に決めました。その四国の松4本を買い求め、持ち帰って、横綱になるまで格別のご支援お世話になった先に配ったのでした。その1本は境内が子どもの頃の遊び場であり、実家が自分の留守中何かと面倒を見てくれた隣の家の主人、金蔵寺・内田住職への手土産となったのでした。

 

撮影・文 岩田忠利 撮影日 2010年9月.12日


72. 日吉・金蔵寺の、ノッポの「一本ムク」

日当たりの良い場所を好むムクノキは遮るものない墓地の中は最適

名 称 横浜市指定名木古木
金蔵寺のムクノキ(椋)
樹種 ニレ科
ムクノキ属
樹齢&
大きさ
樹齢320年 目通り幹周り3m 樹高20m(目算)
所在地 横浜市港北区日吉本町2丁目 金蔵寺境内
行き方 東横線日吉駅から徒歩13分。地下鉄グリーンライン日吉本町駅から徒歩3分

320年南日吉を見下ろしてきたノッポの一本ムクは、金蔵寺と地元のシンボルツリー

生い立ち&
見どころ
 名刹の金蔵寺には横浜市指定の名木古木がこのムクノキ以外にも本堂前にギンモクセイ、サルスベリ、フジがあります。しかし、この木だけが仲間外れのように離れた墓地の中にポツンと一本だけ立っています。その姿もユニーク。真っ直ぐ20メートルほども直立した幹に枝が無く、先端の樹冠だけに帽子をかぶったように枝葉がついている姿・・・。こうした樹形には滅多に出合えません。

 これを私は勝手に「ノッポの一本ムク」と名づけ、悦にいっています。金蔵寺の風景をカメラに収めると、決まってこのムクノキが入っているので、どこのお寺さんかが一目瞭然、金蔵寺のいわゆる、シンボルツリーです。

 ムクノキは関東ではポピュラーですが、関東以北では見られない。関東以西の山野の日当たりの良い場所に生える木です。名前の由来はザラザラした葉を漆器の木地やベッコウを磨くのに使ったことから「杢(もく)の木」が訛ったものとする説があります。

 ※ムクノキの花は「木花-World]18ページNO.28に、ムクノキの実は同22ページNO.36に掲載。 
撮影・文 岩田忠利 撮影日 2010年9月.12日


73. 調布市・青渭(あおい)神社のご神木、ケヤキ

高さ8メートルにある直径約2メートルの大きな空洞は枝が枯れた痕

名 称 調布市指定天然記念物
青渭(あおい)神社のケヤキ
樹種 ニレ科
ケヤキ属
樹齢&
大きさ
推定樹齢600〜700年 幹周り5.5m 樹高34m
所在地 調布市深大寺元町5−17-10 
行き方 京王線「調布駅」からバスで「青渭神社前」下車

三鷹通りに面した巨木の老樹が倒れないよう電柱ほどの太い支柱ががっちり支えています

テレビ番組「ゲゲゲの女房」で一躍脚光を浴びる人気スポット、調布市と深大寺の人出は連日スゴい! 
 写真はソバ店が軒を連ねる深大寺参道

生い立ち&
見どころ

 のっけから不躾な話で恐縮ですが、「名木古木」の題字を仰せつかるまで樹木にはまったく無頓着でした。久しぶりに実家(三鷹市)に帰り、まだ自然が残る調布には市の天然記念物のケヤキがあることを知り、十数年ぶりの深大寺ソバにもつられ、姉と二人で見に行きました。
 
 深大寺表参道の深大寺小学校と並ぶ大ケヤキは、神社入口にあってひときわめだっています。高さ8メートルほどの個所で3本に枝分かれしたその枝が枯れ、大きな痕が残っています。この大木が三鷹通り沿いにあるため万一の事故に備え、電柱ほどのズ太い支柱でがっちり支えられている姿は、大きな空洞とともに、なんとも痛々しい光景です。
 
 ケヤキの前にある説明板によると、文化・文政期(1804〜1829)に編集の武蔵国の地誌である『新編武蔵風土記稿』に「社ノ傍ニ囲一丈五尺アマリノ槻(ケヤキのこと)ノ老樹アリ」とあります。また、江戸時代後期の天保年間発行の地誌「江戸名所図会」にも「社前に槻の老樹あり。数百余霜を経たるものなり」と記され、さし絵には樹姿が描かれています。今から約200年前に、すでに巨木であり、老樹であったとは、大変な長寿の木であることがわかります

 そのケヤキが太い支柱に支えられているとはいえ、いまなお、しっかり枝を伸ばし葉を茂らせているその健やかさに、私もパワーをたっぷりいただいた一日でした。
撮影・文 新舟律子 撮影日 2010年9月.19日


74. 地域と子どもたち見守って400年、桜小学校のオオアカガシ

校庭にそびえるアカガシは、桜小学校131年の歩みを静かに見守ってきました

名 称 東京都指定天然記念物
桜小学校の
オオアカガシ(大赤樫)
樹種 ブナ科
アカガシ属
樹齢&
大きさ
樹齢400年 樹高約13.5m 目通り幹周 3.4m
所在地 東京都世田谷区世田谷2-4-15 世田谷区立桜小学校 校庭
行き方 東急世田谷線 「上町駅」下車 徒歩5分。またはバスで行く場合:渋谷駅から東急バス、小田急バス。または東急バスで田園調布駅から世田谷区民会館行きに約30分乗車、バス停「上町」下車、徒歩5分

ただ今、校舎改築工事中! 根元を踏み固めないよう板敷きされ、保護されています

樹齢は400年。今なお枝先に新しい枝を伸ばし、樹勢はすこぶる良好です

生い立ち&
見どころ
 桜小学校は創立131周年の歴史をもつ伝統のある学校です。校庭には樹齢400年の「オオアカガシ」の木があり、多くの子どもたちを見守ってきました。      

 私が撮影に行った時はちょうど校舎を改築中で「オオアカガシ」の根元は板に保護されていました。樹形は少し傾いていますが、帽子のような形で元気がいいです。
 
 もともとは仙蔵院(廃寺)本堂の裏にあったものですが、明治13年(1880)に同寺が桜小学校として利用されて以来、同校構内の樹木として、地元の人たちに支えられて現在に至っています。
撮影・文 石川佐智子 撮影日 2010年9月.21日

75. 異空間体験ができる夢見ケ崎動物公園。イブキのトンネル

イブキのトンネル。両側にイブキの木がうっそうと茂るトンネルの長さは40メートルほど。子どもたちは中で鬼ごっこ、木々の間を走り回っています

名 称 夢見ケ崎動物公園の
イブキのトンネル
樹種 ヒノキ科
ビャクシン属
樹齢&
大きさ
樹齢約50年 樹高約5〜6m 目通り幹周20〜30cm
所在地 川崎市南加瀬1丁目 川崎市夢見ケ崎公園
行き方 JR川崎駅西口からバス「夢見ケ崎動物公園前」下車徒歩5分。またはJR横須賀線「新川崎駅」から徒歩15分、またはJR南武線「鹿島田駅」から徒歩20分。または東横線「元住吉駅」から川崎駅西口行きに乗り、約20分

ここからイブキの木々に覆われた別世界、トンネルの中に入ります

50メートルほどの異空間の世界を体験し、パッと明るい現実の世界へ出ます

生い立ち&
見どころ
 夢見ケ崎動物公園は川崎市幸区西部の市街地に囲まれた標高35メートルの自然林が残る小高い丘にあります。四季折々に植物、野鳥、昆虫を自然の中で楽しめます。
 
 園内には、レッサーパンダなど64種、約380点の動物たちが飼育・展示されています。
 園内の広場にはイブキの木が2列に植えられ、その間が幅1.5メートルほど、長さ約50メートルのトンネルになっています。

 枝葉がうっそうと茂り、ところどころ木漏れ日が差す異空間の世界・・・。森林浴を楽しみながら通り抜ける人たちや木々の間を走り回って鬼ごっこする子どもたちの人気スポットです。

 春は桜の大木500本が咲き誇る花見の名所でもあります。当サイトの「さくら-World お花見の名所」をご覧ください。
撮影・文 岩田忠利 撮影日 2010年9月.26日

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