その7
題字 書家・新舟律子

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36. 近くを中原街道が走る清林寺のシラカシ

左がシラカシ、右は寄り添うように生える藪椿の大木
名 称 横浜市指定名木古木
清林寺の
白樫
樹種 ブナ科コナラ属
樹齢&
大きさ
推定樹齢290年。樹高約20m 目通り幹周り約5m
所在地 横浜市都筑区大棚町250 清林寺境内
行き方 東横線「綱島駅」下車、東急バス荏田行バス(3番乗り場)に乗り「中川中学校前」で下車、徒歩3分

本堂横に高くそびえるシラカシ。手前の高い木はツバキ、その下が刈り込んだツゲの木
生い立ち&
見どころ
  樹木名は材の色が赤いアカガシに対し白色であることに由来。また、樹皮が黒いことから「クロカシ」とも呼ばれます。
 福島県以西、朝鮮半島南部に自生しますが、主に関東地方の照葉樹林帯に多いようです。用途としては樹木は防風樹、防火樹、街路樹として、材は堅くて重いので木刀・器具材や建築材などになったり、葉は結石の溶解作用があるとかで民間薬として使用されています。
 植物は梅の花を始めとして赤と白で対をなす木々や花々があります。そこで前回はNO.32の篠原八幡神社のアカガシに対し、今回はシラカシを取り上げました。
 外見上はアカガシと見分けがつきにくいですが、シラカシの葉は縁にまばらな鋸歯があり、幹に艶があるような気がしました。
 清林寺は1692年(元禄5年)の開山。寺の前方に家康が1604年(慶長9年)に平塚市中原に別荘を建て鷹狩りと休養のために通った“中原往還道”(中原街道)が走っています。
 古木は5本あったのですが、地盤の緩みへの懸念からケヤキ、エノキ、クスノキが切り倒され、今はこのシラカシとイチョウが残っています。山門に向かって左がシラカシ、右がイチョウです。2本の大木に寄り添うように白い幹の椿の木(これも椿としては大木です)があり、春のお彼岸の頃にはピンクと赤の花を咲かせて綺麗だと寺の奥様が仰っていました。
取材・撮影 杉本洋一 撮影年月 2009年9月

37.国の天然記念物、河津「来宮様の大クス」

こんもりとした森は「来宮さまの大クス」、その一本の木の姿。それは、はるか遠方から望めます
名 称 昭和11年国指定天然記念物
杉鉾別命神社の
大クス
樹種 クスノキ科
クスノキ属
樹齢&
大きさ
推定1000年以上。樹高24m 目通り幹周り14m
所在地 静岡県賀茂郡河津町田中154 杉鉾別命神社境内
行き方 伊豆急行線の河津駅で降りて、駅を横切る大通りを、北西方向に真っ直ぐ800mほど進むと、突き当たり(車道は道なりに右に曲がっている)に神社に入る細い道があり、これを300mほどずんずん進むと神社です

河津七抱七楠で現存する唯一の巨木です
生い立ち&
見どころ
 町内の有志と伊豆の早咲き「河津桜」の花見に行ってきました。
 道中ひときわ目立ったのが杉鉾別命(すぎほこわけのみこと)神社のクスノキ。菜の花が咲く田んぼの野道を歩いているとはるか前方の家並みの先にこんもりとした森が見えます。これが国指定天然記念物、たった一本のクスノキです。

 ここ河津には明治時代中ごろまで「河津七抱七楠(かわづ七かかえ七クス)」といわれるクスノキの巨木が7本ありましたが、現存するのはこの大木一本だけ。

 この神社は平安時代の『延喜式』という書物に載っている格式ある神社だけあって「鳥精進 肉精進」という大変珍しい行事が今も残っていることで有名です。
 氏子は年末の12月18日から23日まで禁酒し鳥肉と卵を食べません。このおきてを破ると火災に遭うという言い伝えがあります。
 昔、祭神の杉鉾別命が酒に酔い、野原で寝ていると野火が起きてその火に囲まれてしまいました。そこに羽根に水を含ませた鳥たちが飛んできて、水を降らせて野火を消し止め、その神様の命を守ったという。
 この由来によって「鳥精進 肉精進」行事は今でも氏子から氏子へと平安時代から連綿と受け継がれ、今に続いています。
 
取材・撮影 横山 磯港 撮影年月 2010年2月18日



38. 国の天然記念物、三嶋大社のキンモクセイ

日本で最長寿、最大のキンモクセイです
名 称 昭和9年キンモクセイで唯一の国指定天然記念物三嶋大社のキンモクセイ 樹種 モクセイ科
モクセイ属
樹齢&
大きさ
推定樹齢1200年。樹高10m以上、 目通り幹周り約4m
所在地 静岡県三島市大宮町2-1-5
行き方 JR東海道新幹線または東海道線「三島駅」から徒歩約10分

おみくじはご神木キンモクセイの枝に結ぶのではなく、写真左下のロープに結びます
生い立ち&
見どころ
 三嶋大社の由緒によれば創建は不明で古くから三島の地に創建されたようです。奈良時代や平安時代の文献にも記録が残っています。
 とくに中世以降、伊豆に流された源頼朝が源氏再興を祈願しそれが成功した神社として有名です。以来、武士の崇拝神社として知られています。また、昔から三島は交通の要塞。東海道の宿場町であり、伊豆地方の幹線道、下田街道の起点でもありました。今でも新幹線の停車駅ですので私は横浜から気軽に三島へ出かけ、三嶋大社を参拝します。

 境内でとくに目立つのは推定樹齢1200年を超えるキンモクセイの大木。この木は2度も満開時期があるという珍しい木です。第1回は9月上旬から中旬に薄黄色い花を全枝につけて満開になります。次の第2回は9月中旬に開花が始まり、9月下旬に満開のピークに達し、10月上旬ころまで楽しめます。
 
 花が放つ甘い香りは、10キロ四方に匂うそうで、風向きによっては2里(約8キロ)先まで届くといわれています。
※キンモクセイの花は「木花」11ページNO.11に載っています。
取材・撮影 大田孝子 撮影年月 2010年3月31日


39. 重要文化財江川邸のビランジュ(博打の木)&キササゲ

参拝客の殆どがこのビランジュ(博打の木)を撫でるため、幹はツルツルに光っています
名 称
江川邸の
ビランジュ

キササゲ
樹種 ビランジュ:バラ科サクラ属キササゲ:
ノウセンカズラ科
樹齢&
大きさ
ビランジュ(博打の木):推定樹齢120年。樹高10m以上、 目通り幹周り約3m 
キササゲ:推定樹齢500年 樹高20m以上
所在地 静岡県伊豆の国市韮山1番地
行き方 JR東海道新幹線または東海道線「三島駅」で伊豆箱根鉄道に乗り換え、二つ目の駅「韮山」下車、徒歩約10分
関ケ原の合戦の慶長5年(1600)当時建てられた江川邸の母屋。右手がキササゲの木

北条早雲手植えのキササゲ。
推定樹齢500年
生い立ち&
見どころ
 江戸末期、鉄砲製造のために造られた韮山反射炉と、それを幕府に提案して造った江川英龍の江川邸見学に出かけました。
 
 母屋正面右手にまだ若葉を芽吹く前の大木のキササゲが私たちを出迎えてくれました。4ページNO.23に掲載のようにマメ科の野菜「ささげ」に似た細長い莢(さや)をつけ、枝から垂れ下げています。室町後期の武将、北条早雲が植えたそうですから、少なくとも樹齢500年になっているでしょう。

 屋敷の出口右手に上記「ビランジュ」の大木が立っています。
 この木は別名を「博打(ばくち)の木」、「裸の木」「サルコカシ」「ゴイギ」と呼ばれ、どれが本名なのか・・・分からないほど変わった名前が付いています。
 「ビランジュ」は、自然に樹皮が剥がれ落ち、赤い肌が丸見えのため、この名が付いたという。また「博打の木」は、賭け事に負けて身ぐるみ剥がされた様子を形容。「サルコカシ」は、ツルツルした樹皮には木登り上手な猿もコケて登れない様になぞらえたもののようですね。
 多くの見学者がこの木肌を触ってみるようで、ワックスでも塗ったかのように蝶々も留まれないほどツルン、ツルンに・・・。
 こんな変な比喩的ネーミングだけでなく、この木の葉を煎じて飲むと、咳止めや鎮静薬となる薬効があるそうです。

 ※「博打の木」の名で「木花9ページNO.29」に樹皮が赤褐色のビランジュが載っています。キササゲの花を「木花8ページNO.22に、実が連番のNO.23に掲載。 
取材・撮影 尾嶋万里子 撮影年月 2010年3月31日



40. 浜離宮恩賜庭園の都内最大級の松「三百年松」

300年前、徳川6代将軍が植えた黒松は幹が4.4メートルの太さ。都内最大級の松です
名 称 浜離宮の
  三百年松
樹種 マツ科マツ属
樹齢&
大きさ
推定樹齢300年 樹高10m 幹周り4.4m 正面の枝張り17.7m 幹からの枝張り17.3m
所在地 東京都中央区浜離宮庭園1−1
行き方 都営大江戸線「汐留」「築地市場」ゆりかもめ「汐留」徒歩7分。JR.地下鉄銀座線「新橋」徒歩12分。水上バス両国⇔浜離宮 浅草⇔浜離宮   

横に張り出した枝葉は、なんと17.7メートル.。私のカメラに収まりきれません
生い立ち&
見どころ
 
 「浜離宮恩賜庭園」は潮入の池と二つの鴨場をもつ江戸時代の代表的な大名庭園です。
 もともと、ここは江戸時代、甲府の大名だった松平綱重の別邸でした。その子が徳川6代将軍・家宣(いえのぶ)となったのを機に、およそ300年前の宝永6年(1709)、将軍家の行楽や来客の接待用に茶屋や鴨場を造り、この庭園を大改造、そのときこの黒松を植えられたと伝えられいます。それ以来、「浜御殿」と改称されたそうです。
 
 300年の歳月の間、幹は上に伸びず、枝葉が横に横に17メートル余も張り出し、私のカメラには到底収まりきれない堂々たる樹形を見せてくれます。枝葉の樹勢もお見事で、どこが幹なのか定かでないほど、その枝ぶりは圧巻です。 
 
 都内で現存する松では最大級の黒松です。この黒松を見るだけでも一見の価値があります。その雄姿を眺め、昔時をしのぶひと時をお薦めします。           
取材・撮影 八城幸子 撮影年月 2010年3月13日


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