その17
題字 書家・新舟律子


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86. 歴史的話題の多い川崎市最古の寺、影向寺の乳イチョウ

樹高28メートルの乳」イチョウを山門をくぐった正面から眺めと、左の本堂の屋根よりはるか高く聳え立っています

名 称 かながわの名木百選/川崎36景
影向寺(ようごうじ)
乳イチョウ
樹種 イチョウ科
樹齢&
大きさ
樹齢約600年 樹高28m 目通り幹周り8m
所在地 川崎市宮前区野川419
行き方 JR南武線「武蔵小杉駅」から東急バスで鷺02系統「鷲沼駅行き、「影向寺」下車、徒歩8分

本堂の裏、西から東側に向かって乳イチョウを眺めると、根元に2本の木が見えますが、これはヒコバエが立派に生長し太い幹に育ったもの。将来は親木の幹と合体することでしょう。

根元の前には可愛い男の子が竹ボウキで掃除している石像が建っていて、なんとも微笑ましいですね

生い立ち&
見どころ
 JR武蔵小杉駅から鷺沼行きの東急バスに乗り、南武沿線道路をしばらく行くと、武蔵中原駅前の手前でバスは左折して中原街道に入ります。
 この街道は、徳川家康公が東海道の、いわゆるバイパスとして貨物の運搬や将軍の鷹狩り用に造成したもの.。東海道の平塚市中原から江戸城までを結んだ“中原往還道”と呼ばれ、歴史ある幹線道路です。街道名は、川崎市中原区を通ることから名づけられたものではなく、平塚市中原を起点としたことが名前の由来です。
 
 左折したバスが数分走り、千年交差点を過ぎ、そこから先は切通しで右手にあるバス停「影向寺」で下車、坂道を登ること8分ほどで寺の山門前に着きます。

 この影向寺は川崎市内では最古のお寺さんで、地元では「東の正倉院」と言って誇りにしています。
 今から1271年前、天平11年(739年)、光明皇后が病気に伏されました。それを心配されていた聖武天皇の夢枕にこの地に霊石があるというお告げがありました。聖武天皇は当時の高僧、行基を使って祈願したところ、この石は霊験あらたかで、皇后の病気がぴったっと快癒してしまったという。その翌年、ここに寺が建てられ、近隣住民の信仰を集めてきました。
 
 「影向(ようごう)」とは、神仏が一時姿を現すという意味だそうです。この影向寺は、こうした歴史的な話題が多い寺で、県外からもバスで団体でお参りに見える人たちが多いとか。

 歴史あるお寺さんだけに境内にはサルスベリ、ケヤキ、イチョウなど川崎市の保存樹指定樹木が多い。本堂右手奥にある乳イチョウは、「かながわの名木100選」に川崎市内で指定されている2本の樹木の1本です。もう1本は、本誌15ページNO.76で掲載済みの王禅寺の禅寺丸柿

 乳イチョウの名前の由来は、嘘か誠か、この木の気根である乳柱を削って煎じた汁を飲むと女性の乳が出るという伝説からきています。たしかに、このイチョウの木には数メートルもある気根の乳がぶら下がっている様は、お見事です。
 
 このイチョウの葉が黄色く色づくのが待ち遠しくて、まだかまだかと3度も訪ねました。前回うかがった折には、大きなバスが山門前の駐車場にあり、その車椅子に乗ったお年寄りの一行がイチョウの木の前で記念写真を撮っていました。樹齢600年のイチョウの長寿にあやかって、というもののようです。

 この乳イチョウは、木花5ページNO.3でも取り上げています。
  
撮影.文 岩田忠利 撮影日 2010年12月.5日

87. 日本三大榧の一つ、国の天然記念物・横室の大カヤ

全盛期の秋には4石(約720リットル)もの実をつけ、食糧や灯油として住民生活に大いに役立ってきました
名 称 昭和8年指定の国天然記念物
横室の大カヤ(榧)
樹種 イチイ 科
カヤ属
樹齢&
大きさ
樹高24.2m 目通り幹周り8.1m 根回り14.4m
所在地 群馬県前橋市富士見町横室(旧行政区:勢多郡富士見村横室)
行き方 前橋市の北のはずれ、国道17号の田口町信号を右折し赤城山方向へ約500mの右側。大正用水の南側にあります

地上3メートルほどの枝分かれしている部分は、大人3人が楽に立てるほどの広さがあります


約17メートル四方に大きな枝を広げている姿は、まさに1000年の風雪を耐えた威厳を感じさせます
生い立ち&
見どころ
  群馬県内には国指定天然記念物の巨木が3本、この横室の大カヤ、沼田市の薄根の大クワ、群馬郡榛名町・榛名神社の矢立スギが現存しています。

 「横室の大カヤ」は、一昨年(2009年5月)に前橋市と合併した勢多郡富士見村横室の地にあることからその名で呼ばれています。
 
 ここで、誌面を借りてわが旧富士見村を紹介させてください。当村は関東平野の北西端にあり、赤城山の山頂周辺から南側にかけて南北に広がる長い村でした。赤城山山頂の大沼では冬季のワカサギ釣り、小沼と覚満淵の周辺はミズバショウなどの高山植物や白樺や赤城ツツジが有名で多くの観光客が訪れます。県都前橋市に隣接しているため人口が増え、全国で4番目に人口の多い村でした。
 
 横室の大カヤは、地元の旧家・金澤氏の先祖が江戸時代中期の寛延2年(1749)に諏訪神社を建て御神木として保護し保存してきたものです。昔から静岡県「浜北の大カヤ」、埼玉県「与野の大カヤ」とともに、日本三大カヤと呼ばれてきました。

 しかし、近年の大気汚染などの影響で、樹勢の衰えが進み、それを防ぐため、かなりの枝を切った跡が見られます。また、根の周りを踏み固めないよう金網フェンスで囲み、大きく広げた枝は重みで倒れかかるのを支柱で支えています。

 カヤの材は世界で一番高級な碁盤が「榧(カヤ)盤」、そしてその実は世界で一番美味しい木の実が「榧実(ひじつ)」と珍重されますが、この横室の大カヤの全盛期は、秋になると4石(約720リットル)もの実をつけ、灯明用の油や食糧となり、村人の生活に大いに役立ってきました。
撮影.文 鈴木昭男 (前橋市富士見町時沢在住) 撮影日 2010年4月.1日

88. 真夜中になると寝入ってイビキをかくという根(寝)入りの杉


神楽殿の前に垂直に立つこと
樹高35メートル
名 称 諏訪大社下社秋宮御神木
根入りの杉(別名:寝入りの杉
樹種 スギ 科
樹齢&
大きさ
推定樹齢 800年  樹高 約35m 幹周り 5.03m
所在地 長野県諏訪郡下諏訪町上久保5828 下社秋宮境内  
行き方 循環バスあざみ号で「諏訪大社秋宮前」下車(下諏訪駅から終日計13便)。JR下諏訪駅から徒歩約15分
幹の枝葉は樹勢旺盛。葉先の緑は色濃く、まだ元気に生長しています

背面の姿。前面と同じように端正な樹形
生い立ち&
見どころ
 全国に1万あまりの末社をもつ諏訪神社の総本山。「お諏訪さま」「諏訪大明神」と崇敬されています。また、御柱祭で有名な、諏訪大社(諏訪湖の周辺に4カ所あります)の1つ諏訪大社下社秋宮は旧中仙道と甲州街道の分岐点にあります。

 鳥居をくぐると正面に大きな「根入りの杉」の樹が目に付きます。参拝客のほとんどは、背後に控える神楽殿や拝殿を目指して、進んでしまいます。実家が諏訪近くの私も何度もお参りしていますが、この「根入りの杉」のことは知りませんでした。

 このスギは言い伝えによると、真夜中(丑三つ時)を過ぎると枝先を垂れ下げて寝入ってしまい、イビキが聞こえると言われているそうです。このことから「寝入り杉」とも伝えられています。
 
 イビキをかくスギが隠岐の島にも存在するそうです。玉若酢神社の「八百杉」と言い、この樹に耳を当てると大蛇のイビキが聞こえると言われているそうです。
 
 また、諏訪大社下社秋宮のこの樹の枝を煎じて子供に飲ませると、夜泣きが止まるとも言われています。
撮影.文 北澤美代子 撮影日 2011年8月.27日


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