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誌面への登場希望者、誌上登場者との交際希望者の申込書付き |
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この連載は第21号“”から
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表紙絵は桜の名所、錦が丘の桜。絵:井崎一夫 |
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Dくんの提案で「縁線で愛コーナー」新設
「編集長、ボクも嫁さんが欲しくなりました〜! 嫁さん探しを『とうよこ沿線』の誌上でできませんか?」
カメラマンのDくんが真面目な顔をして私にそう提案した。
歳を聞けば、33歳。男としても適齢期を少々過ぎている年頃、そんな心境になるのも、もっともな話だ。彼の場合、生まれも育ちも京都で、大学も京都。こちらに親戚も友人知人も無く、縁談の話も女性と出会う機会もなかったという。
約2000万人もの人口が集中いる東京・川崎・横浜、これほど多くの男女がいれば出会いの機会も多いかと思えば、“隣は何をする人ぞ”で、隣近所の付き合いも無く、男女出会いの機会は田舎よりも少ない。創刊の頃から“東横の家”をやってきて、それは分かっていた。
独身男女出会いの場のシステム化
Dくんの要望に応え、『とうよこ沿(縁)線』を縁にして『出会い(で愛)』コーナー」というタイトルで独身男女の誌上見合いの連載を始めた。それは、第21号からだった。
読者が登場希望や交際・文通希望する場合、以下のような出会いの場をシステム化したのだった。
1. 登場希望者の情報・・・個人情報の公開なので苗字はローマ字の頭文字で氏名を公表した。登場者の情報は、名前・年齢・住所の最寄り駅。@職業(勤務先) A出身地 B最終学歴 C身長・体重 D特技・免許 E趣味 F人生のモットーまたは座右の銘 G好きな異性のタイプ Hあなたのセールスポイント I推薦者の一言と推薦者実名・間柄
2. 登場希望者は、上記の項目を書き、顔写真1枚を同封すれば掲載料無料で掲載した。
3.、登場者と交際・文通を希望する読者は、「何番のどなたと交際・文通したいか」を明記し、名前・年齢・自己紹介・交際または文通希望理由を書き、写真1枚と60円切手2枚を封書に同封し編集室に郵送する。
4. 上記3の封書は、編集室で責任を持って登場者本人に転送する。ただし、その後に関しては編集室では一切関知しない。
提案者Dくんに女性8人から交際申込み
第1回は、Dくんら編集室スタッフの結婚希望者とスタッフの友人知人を男女24名を顔写真または似顔絵付きで掲載した。果たして反響はいかに? と心配していたが、着た! 着た! 続々、封書が届いた!
なかでも、最高は提案者のDくんの8通・・・。彼はカメラマン、自分の顔写真をプロマイド風に撮り、実物以上に格好良く、俳優のように見える写真である。それからというもの、Dくんは8人の女性と次々デートする“モテモテ男”に変身、服装もバリッと決め、性格も一段と明るくなったのだった。
一独身寮で3組のカップル誕生
「おかげさまで結婚することになりました。『とうよこ沿線』でお世話になったついでに、結婚式場を紹介していただけませんか? 横浜の海が見える式場がいいんですが・・・」。日吉本町の清水建設独身寮の男性から、カップル誕生の嬉しい電話だった。この寮では3組のカップルがゴールインしたそうだ。
大倉山のエルム通りの「たくぼカメラ」に新刊の配本に行ったときのこと。店長がニコニコして私に話した。「『とうよこ沿線』のおかげで結婚し、子どもが生まれた記念写真を撮りに来たお客さんがたった今、帰りました。編集長が来たら、よろしく、と言っていましたよ」。大倉山に支店がある銀行に勤める男性と、大倉山駅に近い大曽根で生まれ育った学習院中等部の女性教師とが誌上見合いで結婚し、赤ちゃんまで産まれたという朗報だった。
「その後のことは、編集室では関知しない」ことになっているので、何組が結ばれたかは正確には把握していないが、私のほうに報告をくれたケースは、登場者106人のなかで読者と結婚したケースが“8組”だった。
いまインターネットの“出会い系サイト”は犯罪の温床となり、何かと物議をかもしている。が、本誌の誌上見合いは当時の社会のニーズに応えた独身男女の出会いの場を提供する“無料結婚相談所”みたいなものだった。なかでも、めでたくゴールインできた若い男女には大変感謝されたが、皆さん、今頃、どんな家庭を築いているだろうか・・・と時々ふと思う。
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