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グラウンドのベンチで作品を審査中の王さん。右上は義母・鈴木善子。
フィルムが無いのを気づいたのは、このシーンを撮ろうとしたときだった |
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自由が丘で初めて会ったとき
巨人軍の王さん、世界のホームラン王・王さんに初めて会ったのは、創刊3号を出して間もない頃だった。渋谷の公園通りに住む友人と自由が丘のレストランで食事中、隣の席にお嬢さんと一緒に来ていたのが王さんだった。どんな人に会っても気おくれしない友人は王さんに気楽に声をかけた。
「王さん、この男を知っていますか? 彼は“スワローズ”の丸山完二外野手の親友です。いまは『とうよこ沿線』というコミュニティー誌の編集長をやっていますが・・・」。友人は自分のことはさておき、私のことを紹介した。
王さんが定期購読者に
スワローズは巨人と同じセリーグで在京球団。王さんと私は、丸山完二という立教1年生の頃からの親友の話で盛り上がり、つづいて『とうよこ沿線』の話題に移り、王さんがお世辞かどうか分からないが、こんな言葉を。「私も東横沿線の住民の一人ですから、その雑誌を読んでみたいですね〜!」。
こんなふうに話がトントン拍子に進み、世界のホームラン王・王さんが『とうよこ沿線』の定期購読者になった。以来、私は新刊が出るたび、目黒区中根町の王さん宅のポストに入れに行った。その投函口はステンレス製で40センチほどもあり、その受け口が母屋の中に落ちる仕組みに造られていて、10冊を入れると、それが滑り台を滑り降りるように落ちて「ボト〜ン」という音がしたものだった。
本会主催「イラスト漫画大会」の審査委員にも
第13号の編集中、私は本会主催「イラスト漫画大会」の応募作品集めに東京・川崎・横浜の各学校を車で次々訪ね回って校長先生や美術担当の先生にご協力をお願いした。その道中、沿線在住の著名人宅を訪ね、審査委員もお願いして歩いた。王さんにもご協力をお願いした。「絵心はないが、自分で好きな作品を選べるのだったらいいですよ」との快諾だった。
作品審査中の王さんを撮影しようとしたら、フィルムが?!
審査当日はプロ野球のシーズンオフとはいえ、“世界の王さん”は助監督の仕事で忙しい。多摩川グラウンドでの練習と会議、各界のレセプションなど公私とも過密スケジュールだ。
秋季宮崎キャンプの二日前、多摩川の雨天練習場でやっと会えた。このチャンスを逃したら九州の宮崎まで行って審査してもらわなければならない。江川卓投手、原辰徳内野手、西村聖投手らの練習を横目に、王さんの作品審査が始まった。
その審査シーンを写真に収めようと私はシャッターを切った。と、シャッターが妙に軽い・・・。巻戻しのレバーを持って回してみると、クルクル回ってしまう。さぁ〜、タイヘン! フィルムが入っていないのだ。カメラバッグを夢中で探しても予備のフィルムがない。田園調布駅前あたりまで車を飛ばして買ってこようと思っていると、義母が大声で叫んだ。「また、ヘマやったのぉ〜?」。
王さんは咄嗟に立ち上がり、フェンスの向こう側に群がり、グラウンドの選手にレンズを向けているカメラマンたちに向かって大声を発した。
「お〜い、オレにフィルム1本、くれぇ〜〜〜!」。それを聞いた一人の若いカメラマンが脱兎のごとく走って届けてくれた。「どうぞ、これを使ってください!」
いや〜、王さんの機転に私のドジが救われた。この素早い王さんの行動に“人間王貞治”の人間性の一面を見たようだった。
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