難局を救ってくれた
城南信用金庫
連載広告は16年間、62号分ご提供 |
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昭和58年(1983)3月発行の第15号〜平成11年(1999)10月発行の第73号までの16年間、連載広告62号分、ご提供くださった広告誌面 |
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宴席で“思わぬ人”の名前が挙がる
Tの使い込んだ金額の穴は、余りにも大きかった。印刷所や諸経費の支払いの資金繰りに汲々とする毎日だった。どんなにやり繰りしても印刷代金の支払いができない。私の貯金もその支払いに使い果たした。
第7号から表紙絵を担当している漫画家・井崎一夫さんを表紙絵の取材に車で案内し編集室に帰り、例のごとく自宅応接間で酒を飲み始めた。そして、その席で編集室の実情をつぶさに井崎さんに説明した。
と、彼が言った。「いい人がいるよ、編集長! その人はワシが毎号『とうよこ沿線』を上げている愛読者だよ。城南信用金庫本店の専務理事だから、相談に行ってみな!」。人には相談してみるものだ。
トントン拍子に進んだ融資の話
さっそく翌日、五反田の城南信用金庫本店の専務理事室をノックした。恰幅のいい、柔和な竹村由男専務理事が歓待してくださり、『とうよこ沿線』を読んだ感想などを楽しそうに話された後、私の用件を尋ねた。 「そりゃあ〜、あの『とうよこ沿線』がツブれちゃあ、困りますよ。金額はいくらご入用ですか? 当方の支店はどこが一番お近いですか?」。
私が元住吉支店の名を挙げると、すぐに電話の受話器を取って元住吉支店の支店長を呼び出し、私の用件を説明し、受話器を置いた。「岩田さん、明日、元住吉支店へ有賀という支店長を訪ねて行ってください」と竹村専務理事さん。
先方から「うちの広告はいかがですか?」
専務理事は私がまったく予期しない嬉しいことを話された。「せっかくお見えになったのですから、理事長は不在ですが、うちの役員を紹介しましょう! みんなに会えば“お土産”も出るかも・・・」。
副理事長、常務理事、総務部長を専務室に呼び、名刺交換させていただいた。その席で鈴木総務部長が願ってもない話をされたのだった。
「御誌『とうよこ沿線』にうちの広告はいかがですか?」
お客様のほうから、喉から手が出るほど欲しい広告の話を持ち出していただけるとは!? 専務理事の“お土産”とは、広告ご提供の話だった。全国の信用金庫で最大の規模を誇る城南信用金庫が広告を提供していただけるとは・・・。こちらは何としてもこの難局を乗り切りたい! 拝むような気持ちで融資のお願いに上がったのに、広告提供のお話まで・・・。しかも、即断即決、連載広告が次号15号から掲載してもらえることになったのである。この二重の喜びは飛び上がるほど嬉しかった。
翌朝、元住吉支店の有賀支店長を訪ねた。私の印鑑証明書さえ揃えば、連帯保証人も抵当も不要、明日にでも融資金額を新規開設した口座に振り込んでいただけることになった。
悶々としていた胸の内が、あたかも台風一過のように一気に晴れ渡ったのだった。
Tのようにこちらの心を踏みにじって人間関係を捨てる者もいれば、 こちらの心情を察し救ってくれる者もいる。まさに世の中は<捨てる神あらば拾う神あり>だ、と痛感した。
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