編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.613 2015.04..27 掲載
 激動の20世紀を残す写真集  第2巻
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『わが町の昔と今』第2巻「川崎中部編」
サイズ A4判
紙数 127ページ
発行日
平成12年(2000年)10月1日 発行
頒布方法  定価2500円
表紙
題字:新舟律子(書家・川崎市高津区久末)

掲載写真:
 1. 明治時代、大山街道端の人力車乗り場
 2. 昭和42年、最後の丸子の花火
 3. 昭和58年、中丸子のチンドン一家
装丁
デザイン:品田みほ(三ッ沢下町)
巻頭「はじめに」 作家 北方謙三(川崎市中原区上小田中在住)
目次と掲載画像点数
 
1. 生業編(写真28点・絵2点)
2. 多摩川編(写真34点)
3. 新丸子編(写真36点、絵2点、
               昔の町並み復元2頁)
4. 武蔵小杉編(写真52点、絵2点)
5. 元住吉編(写真82点、絵1点
              /昔の町並み復元1頁)
6. 南武線沿線編(写真65点)
7. 旧日吉村編(写真36点)
8 高津区の町(久末・蟹ヶ谷・明津・子母口)編
                   (写真27点)
9. .風俗編(写真29点)

   「川崎中部編」の写真から・・・

  高津区久末の風景「楸谷、42年の歳月」 



   昭和33年(1958)、中原街道のバス停「山崎」から楸谷(ひさぎや)を望む

手前の川は有馬川。中央の一軒家は文殊川昇さんの家。周囲に電柱は無く、まだ電気がきていません。家族はランプ生活です
。                     撮影:森 昇さん(高津区久末)



写真上の12年後、昭和45年(1970)。大規模な宅地造成が終わる。中央にまだ文殊川さんの家だけが見える                          撮影:森 昇さん(高津区久末)



写真上から30年後、平成12年(2000)10月、平地は住宅で埋まりました。
                                  撮影:岩田忠利


     昭和32年1月、川崎市営バスの終点「井田バス停」

砂利道にボンネットバス、車は通らず、静寂そのもの。まだ川崎市営バスの井田営業所はなく、ここが終点でした     撮影:橋本禎二さん(井田中ノ町)



      写真左の平成25年

 
現在は車の往来が激しく、写真を撮るのもひと苦労の尻手黒川道路の交差点「井田病院入り口」です。
 撮影:岩田忠利









     昭和32年4月、標示板「川崎市名所井田堤の櫻」

 
後方は下流で昭和橋。右手が矢上川、標示板の後が江川の河口です。標示板は矢上川と江川の合流点にありました。
    提供:橋本禎二さん(井田中ノ町)



  写真左を昭和橋から合流点を見た平成25年

 
左が矢上川、右が江川の河口。標示板は後方正面の赤い屋根の家の所にありました。
                            撮影:岩田忠利













昭和30年7月、井田中ノ町の井田交番付近

右手に交番が見えます。静かで目に眩しいほどの緑。
提供:橋本禎二さん(井田中ノ町)



        写真左の平成25年

 
右手の白い建物が井田交番。周囲の景観は変わっても道のカーブは変わっていません。
                             撮影:岩田忠利












        昭和32年、幅員わずか1.5mの木橋のガス橋

 板ぶきの橋はちょうど中間辺りの板が腐っていて数か所、折れたままの状態……。その真下はすぐ川面。風の強い日には吹き飛ばされそうになります。
 新丸子の浅見徳太郎さんという人は実際に足を滑らし、板の隙間からドボ〜ンと真っ逆さまに落ちてしまったのです。
 左手、対岸の建物はキヤノン下丸子工場です。
    提供:山田勇さん(田尻町)



      写真左のガス橋、平成25年時

 
橋の両側に歩道が付き、車歩道分離で安心して通れるガス橋になりました。
 対岸のキヤノンなどの建物も高層化、手前左右に走る道は交通量の多い多摩沿線道路。左右写真の落差に時代の変遷を痛感します。
   撮影:石川佐智子さん(日吉











 明治時代、高津村の中心地であった「はかり田中屋」

 現代のタクシー乗り場に相当する、大山街道端の人力車乗り場です。
                             提供: 鈴木 穆さん(溝口。溝ノ口郵便局局長)


     写真左と同方向を望む平成25年時

 
大山街道と府中街道との交差点「高津」。正面の田中屋ビルの1階が「はかり田中屋」です。
   撮影:石川佐智子さん(日吉)




大正時代、押すな押すなの満員、丸子の渡し

提供: 榎本幹雄さん(上丸子八幡町)










      昭和40年、皇族ご一行が丸子橋下に

 
ご一行は丸子橋下で開催された日本赤十字・救難演習の模様を参観されるためにお見えになりました。昭和皇太后はまだお若くお元気、ご結婚6年目の美智子皇后がひときわ美しいですね。
 提供:水島治良さん(上丸子天神町)


昭和12年12月横山新太郎さん宅は家族総出のしめ縄作り

 
右が本人、中央が父・辰五郎さん、左端が奥さん。手前のしめ縄は川崎大師平間寺に納める品です。
   提供:横山新太郎さん(市ノ坪)



自宅の庭で石垣イチゴを始めた大谷文治さん

 
旺盛な研究心と努力の人で24歳の若さでした。
 提供:大谷正勝さん(今井仲町)




 二人の“山本周五郎”がこの写真に。ひとりは質店店主、もう一人は文豪

 店主引退後の毎年正月には山本質店に勤めていた人たちが集まって店主を慰める会を新丸子の店主別宅で催しました。

 前列右から3人目が店主・山本周五郎さん。隣が末娘・敬子さん、妻きんさん。敬子さんの後ろ、メガネの人が当時38歳の新進作家・山本周五郎(本名・清水三十六)です。

 作家の山本周五郎、その名はペンネーム。それは彼の恩人である質店店主・山本周五郎の本名です。そのいきさつは、本書に詳しく書きました
    提供: 山本敬子さん(上丸子八幡町)







炭俵を高く積んだ大正時代の初荷風景

中央紋付き袴は鹿島兄弟の奉公先の店主・中澤さん
提供:鹿島進さん(下小田中)

    編集後記      岩田忠利(編集長) 


 
このたび「とうよこ沿線」20周年記念誌「わが町の昔と今」第2巻「川崎中部編」を、じつに多くの地元川崎の皆様や当編編集室関係者のご協力のお陰でまとめることができました。
  本書編集のスタートは617日。本誌74号の編集と同時進行で始めました。
 出発に当たり取材範囲を行政区分にとらわれず、本誌よりも広げて「川崎中部編」とし、以下のように決めました。
 中原区全域、そして南武線溝ノロ駅から南へ鹿島田駅までの南武線沿線地域、昭和
12年まで日吉村だった幸区内の日吉地区、さらに東横線を利用する高津区内の地域としました。

     昭和30年代にランプ生活の家

  本誌『とうよこ沿線』を創刊した1980年(昭和55年)から2000年までの20年間、私たちの生活環境や生活様式は大きく変わりました。さらに20年遡って昭和30年代から昭和50年代までを掲載写真で見ると、その変化は目を見張るほどであることがお分りになると思います。

“古い写真探し”で高津区内のある家に立ち寄ると、ご主人が次々と奥から珍しい写真を出してきて説明してくださいます。なかでも私が興味を持ったのは一枚のパノラマ写真。昭和30年代の、のどかな田園風景が広がる風景、その丘の麓にポツンと一軒だけ家が建っています。
 「この家にはまだ電気が来てなくて、ランプ生活でしたよ。家の周りに電線が見えないでしょ……」とご主人。
  そう言えば、たしかに一本の電柱も電線もない風景写真です。昭和30年代になっても川崎市内にまだランプの家があったとは、私には新鮮な驚きでした。その写真の下に電柱が林立した住宅街の同じ場所の風景写真と見比べると、その変貌ぶりは一目瞭然です。

       一目で業種や生業が分かる店名に

  いま街を車で走って気になることは、やたら店名に横文字のカタカナが多いことです。
 イエローハットの看板を見て、帽子屋かと思ったら意外にもタイヤ専門店。エネスト…・‥。はて、何屋かな。わが家のガス給湯器が故障し修理の車が来て初めて東京ガスの店、とその商売が分かった始末。誰でも業種や生業が分かる店名にしてもらいたいと願うのは私だけでしょうか。

 本書では私たちの生活の必需品を生産・販売・サービスする営みの原点を探るため「生業」と題し、昔ながらの生業を営々と守り続けるお店の写真を載せてみました。
  燃料は台所でガス台のスイッチをヒネれば出るもの、とばかり思っていた現代っ子がおりましたら、店頭に炭俵を山積みした燃料店の写真を見ていただきたいものです。

 本書発行に当たり、貴重な写真やお話、大切な資料など多数お寄せいただいた方々、また、炎暑の中を古い写真を借り歩いてくださった実行委員の方、ご多忙中に巻頭文を執筆してくださった北方謙三先生、題字をお書きくださった新舟律子(旧・先名)先生、編集の各分野でご協力くださった当編集室スタッフの皆様に厚くお礼を申し上げます。
                      平成129月            本書編集発行人 岩田忠

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