編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏
NO.533 2015.3.23 掲載

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樹木 駅名の由来@ 
  
     北大・恵迪の森に春の訪れ

                      投稿:坂上武史(札幌市中央区在住)

                                                  


 

    少雪だった札幌、今年の冬

 今冬期の札幌はとても雪が少なかったです。北海道の中でも本来多雪の地域に2月以降まとまった降雪がなく、その代わりに普段はあまり降らないオホーツク海側や釧路方面で大雪になることが多い年でした。

出張の多い時は自宅の除雪が家族への負担になり敬遠されるのですが、少雪のおかげで家庭内の不和は最小限に抑えることができました。
 振り返ってみると年末年始の頃がピークでした。あとは融ける一方で、せいぜい降っても一晩で数センチ程度と非常に楽な冬でした。おかげでまだ3月というのに家の周りの雪はすべて融け、地面が見えています。もう除雪のような面倒な作業に追われることなく、通勤や子供たちの送迎に自転車が使えるようになり、生活が機動的になってきました。

  北国の者にとって、このような瞬間が春を感じる一つのきっかけなのです。今年はそれが半月以上も早く感じられます。

 最近は通勤の通り道にある軒先にクロッカスの芽を見つけるなど、季節の移ろいを感じさせる光景が多く見られます。先日まで白一色に覆われた銀世界も今は土の温もりが感じられるまでになりました。

そんな春を目の前にした晴れた休日、4歳の息子を自転車の後ろに乗せ、よく行く近所の北大に出かけてみました。目的は花探しです。北大にある「恵迪の森」という原始林まで行ってきました。


        真っ先に春を告げるフキノトウ

 北大の敷地に入ると、埃っぽい都心部とは打って変わって空気が澄んでいるように思えます。道端を注意深く見ていくと早速咲いていました、フキノトウが。久しぶりに見る自生の植物です。雪解けの真っ先に冷たい大地を突き破って直ぐさま花を咲かす力強い息吹に春を感じずにはいられません。何とも可愛らしいと思いつつ、摘もうかどうか悩んでしまいます。
 私にとってはフキノトウを天ぷらにして蕎麦といただくのも春の代名詞。


フキノトウ

 でも、もう食べるには遅い株なので辞めにします。傘を被っているのが柔らかくて、ほどよい苦味があって日本酒に合うから旨いのですね。でもせいぜい1つか2つで良いのですね。フキノトウってそういう存在です。

         
       季節ごとに表情を変える恵迪の道



冬枯れの道



草いきれの道


 恵迪の森に続く道は、季節毎に色々な表情を見せてくれるので好きです。今は冬枯れていますが、あと2ヵ月もすれば草いきれの新緑に覆われることでしょう。虫が飛び交う夏を終えると駆け足に秋がやってきて直ぐに雪に覆われてしまいます。雪に覆われてしまう期間は1年のうち5ヵ月から半年にも及ぶと思います。
 年間の半分近くを雪に覆われているこの周辺は、今まさに冬が終わろうとしていました。雪解けが進みあと1ヵ月もすれば水芭蕉や座禅草がひっそりと佇んでいそうな林床が広がっていました。その時また来るのが楽しみです。


        役目を終えたオオバユリ

  恵迪の森の前でサドルから子供を降ろし、一緒に残雪を踏んで森に入って行きました。子供は久々の雪の感触にはじめは走り回っていましたが、そのうち落ち葉拾いを始めました。私は何か新芽はないか探しましたが、さすがにこういった森までは春は未だ遠くただただ冬の延長でした。
 「これ、なーにー?」と声がするので子供の元へ行ってみると、ドライフラワーとなったオオウバユリの実を指さしていました。中の種をすべて飛ばした後でも乾いたまま、立っていたのでしょう。最近の風の影響か残雪の上に倒れています。9月頃にはち切れんばかりに鈴なりの実をつけた姿が思い出されます。



オオバユリのドライフラワー

 
            ニリンソウ春の息吹き

 恵迪の森で圧巻なのが、春先のニリンソウです。こんな枯れ枝と雪しかない殺伐とした森も、あと1月もすれば生命力をムンムン放った森に変わるはずです。当たり前なのですがちょっと不思議な気もします。
 


残雪が目立つ恵迪の森





ニリンソウが群生する春の姿(5月上旬)

 花にはまだちょっと早かったと思い帰途につきます。子供がドライフラワーに興味を持ち面白がっている。帰りがてら途中の牧場の横で自転車を停めて降ろしてやり、葉っぱ拾いをさせてやりました。深追いしていくと道からは目に付かないちょっとした陽だまりにフキノトウが群生していました。白い雌株と黄緑の雄株が背丈を争うように太陽に向かって顔を覗かせて…。子供は無邪気にエゾアジサイの乾燥した花を拾って、姉と母にあげるんだと喜んでいます。


雪解けは北国の楽しみ



人知れず生長するフキノトウ

 子供というのはフキノトウと一緒なのでしょうか。そのうち直ぐにトウが立って煮ても焼いても食えなくなっていくのかな。とは言っても、こうやって花を撮りに行くぞと言って一緒について来るのですから可愛いものです。

  早く終わった冬に、ちょこっと散歩して春の訪れを感じました。来週はまた月曜から金曜日まで出張です。子供の成長と春の移ろいは何と早いものかと思う最近です。

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