編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.409 2014.12.09  掲載

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  創刊号で最大の反響



  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:昭和55年7月7日発行本誌No.1 号名「夏」

   

 『トイレが少ない東横線』



                  石川 輝(ボクシング評論家。横浜市港北区大曽根台)
                               


 いつだったか朝日新聞が、田園都市線各駅のトイレ不足で沿線の乗客が大変困っているという記事を載せていた。
 ところが東横沿線の各駅のトイレ設備も、ご同様にきわめてお粗末で、乗客の不便は非常なものである。


 私が東京の世田谷から今の大倉山ヒルタウンへ転居したのは、昭和52年の10月だった。それ以来、ついこの5月10日までの2年7カ月間、私は襲いくる生理現象≠ノずいぶん悩まされた。なぜならば大倉山駅にはトイレが無く、また駅の外にも無いからである。

 この前の区会議員選挙の時、共産党の候補だったと思うが、公約に「大倉山駅にトイレを設けさせるか、もしくは駅の付近に設置させる」とあったので一票を投じたが、落選してしまった。

 東急サンにしてみれば「渋谷から大倉山までは
35分間。渋谷で用を足してお乗りください」ということだろうが、その渋谷駅のトイレはホームから南口改札口ヘ降りたところにある。しかも、案内の表示はホームにはない。
 それに、これから暑くなればビールの一杯もひっかけるし、また、冬の寒い時は、高齢者の私は35分が待てないことがしばしばである。

 さて、試みに自由が丘駅から大倉山駅までの各駅のトイレの有無を調べると、下記のとおりである。
  
  〔注〕「無し」は駅の改札口を入ってからの場所に無い意味である。

●自由が丘駅=有り。(田園都市線大井町行きホーム)

●田園調布駅=無し。

●多摩川園駅=無し。

●新丸子駅=有り。(西口改札のそばだが、旧式のもの)

●武蔵小杉駅=有り。(元住吉寄りの西口改札口のそばだが、分かりにくい)

●元住吉駅=無し。

●日吉駅=無し。

●綱島駅=有り。(上りのホームを降りたところだが、古色蒼然)

●大倉山駅=有り。(5月10日から駅員用の利用を許可。男女共用で便器は一つ)



武蔵小杉駅のトイレ

絵:島田浩子(奥沢)




 以上が東横線の一部地域のトイレの現状である。この東横線のトイレ新設計画とその必要性について、東急本社の見解を本誌誌上で公開を願いたい。


  反響


  この記事を読んだ人が、当時元住吉に住んでいた久米 宏さん(当時TBSアナウンサー。のちフリーになり、テレ朝「ニュースステーション」キャスター)。
 久米さんはラジオ番組の特集「トイレが少ない東横線」を組み、東横線利用客のインタービューで生の声を報道、東急にトイレ新設を迫ったのでした。

  以後、東横線のトイレは、各駅に次々新設されたり、旧式トイレの改築が着々と進んだのでした。

  「たった1ページのこの記事」と久米さんのラジオ報道が沿線住民の“声”となって大企業、東急電鉄を動かし、東横線23駅にトイレを造らせました。
 この事例こそ活字の威力とメディアの底力をまざまざと世に示した好例ではないでしょうか。


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