現存の煉瓦ドックは世界に4基、そのうち2基が浦賀に
さて、ドックの跡は船一艘が丸々入る大きさで、躯体は煉瓦で造ってあります。
ドックの大きさはおよそ幅30b、長さ200b程度でしょうか、地上で見ると、さほど大きく感じませんが、上から見ると大きいことを実感します。
船をドックに導き入れるのは、海側にある衝立を海に倒すと、どっと海水が入ってきてこのドックを満たします。ウィンチをバランスよく巻き取って船を所定の位置に移動します。3〜4時間かけて排水し、船の修理に掛かります。
浦賀ドックは日本に2基しか残っていない煉瓦ドックのひとつで、もうひとつも浦賀にある川間ドックと言われています。何しろ、煉瓦ドックで 現存するのは、世界でも4基しかないそうですので、そのうちの半数が浦賀にあるのは凄いことです。
この1号ドックは修理専用で、船の建造はしません。この煉瓦積みは、「フランス積み」(正確には「フランドル積み」)と呼ぶものです。
浦賀造船所は1853年(嘉永6年)のペリー来航を機に、江戸幕府が造ったものです。日本初の軍艦「鳳凰丸 」を建造し、太平洋横断を行った「咸臨丸」の整備も行われたという貴重な遺構です。
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浦賀地下壕入口
2010年2月11日撮影:外観は綺麗で工場跡とは見えません |
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浦賀ドック跡
2010年2月11日撮影:海側から浦賀の町に向かって
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浦賀ドック跡
2010年2月11日撮影:南の海側に向かって
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見るほどにその威容は増すばかり
中央には大きなクレーンがあり、この上に更にブームが乗るので、その威容はいや増すばかりでありました。底に置かれたコンクリート塊の列は、船の底部を支えるもので、精度よく並んでいます(穴の位置が寸分の狂いも無く通っている)。一歩間違えると、船が倒れてしまいます。
このドックでは、何回かコンサートやイベントが行われたそうです。
地上には、何やら錨(いかり)がごろごろ……。これは修理した外国船が、修理代を支払わないで逃げるのを防ぐ意味があるとか。船は錨がないと航行できないのだそうです。
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ポンプ室、巨大な工場内、事務室
ドックの海に面した先端は、渡し板一枚の仮設の通路。「周りの手摺は腐っているので当てにしないでくださいね。今日は雨ですので、足元に気をつけてくださいね」と言われながら、狭い渡り板を危うい足付きで反対側に行きます。
「ポンプ室に寄って見ますか」と誘われ、寒かったし、少しでも暖かい所に行きたい。全員が「はいっ!」と頷いたのは言うまでもない。
このポンプ室には、明治時代の窓の一部が残っています。ご覧の通りのレトロっぽい飾り窓です。見難くて申し訳ありませんが、左側のパイプの脇の窓です。
続いて、造船所の工場に入ります。大きな空間が広がります。天井にはホイストクレーンがあり、ドックからはずされた機械のメンテナンスが行われます。
空間を生かした中2階の事務室。傍らには、昔懐かしい達磨(だるま)ストーブがあり、寒い冬には、暖を取ったのかと思われます。
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ポンプ室の窓
2010年2月11日撮影:建屋は木造です |
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造船所の工場内
2010年2月11日撮影:上にクレーンが走っています |
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進水式はこちらで……
見学コースには無かったのですが、屋外にある造船ヤードを見せていただきました。
遥か向こうにある建物あたりが、船尾でしょうか。先端がこの「スヒード20k(m)」と書かれた辺り。船の大きさが判ろうと言うもの。
このインクライン(傾斜鉄道)に新造船が乗り、ワインによる祝福を受けながら、スルスルと海に滑り落ちていく訳ですが、毎回うまくいくとは限りません。そのためには、このレールに石鹸を塗って滑りやすくしました。ミニ雑学でした。
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造船ヤード
2010年2月11日撮影:進水式は壮観だったでしょうね |
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歴史遺産としてぜひ残して欲しい!
次に案内されたのが、工場の中にある昔の事務所跡でした。
「薄暗くて危険なので、足元には気を付けて」との注意があり、2階に上る階段を登り始めた時、突然沸き起こる悲鳴の渦?!
何事が起ったのか、階段を何かが転げ落ちていく音が……。私の足にも何かがぶつかり、まるで生首のような感触でした。それは、灰色の猫君でした。
浦賀ドックには、ドックで使われた煉瓦と同じもので造られた塀があります。だいぶ年月が経ち、色々補修の手が入っています。大きな地震も被災しているのか、大きな亀裂も入っていました。
これらのものは、横須賀市が歴史遺産としてぜひ末長く残しておいて欲しいものです。
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階段での怪談
2010年2月11日撮影:幽霊の正体を見たり。それは枯れ尾花… |
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昔の事務所跡
2010年2月11日撮影:映画のロケに使えそう
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煉瓦の塀
2010年2月11日撮影:崩壊防止の帯金がアクセントになっています
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