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遅い春の饗宴
この春は仕事で周囲の環境が変わったり出張に出ていたりと、何かと忙殺され続け色々な変化に気がつかなかったりします。こういう時の季節の移ろいというのは、とても早く感じられるものですね。
前回は、北海道のゴールデンウィークとその時分に見頃を迎えるサクラについて掲載させていただきましたが、今はもう、次の花々が先を争うように咲き乱れてきました。一瞬で過ぎ去っていってしまう花々の花期は、見る者を楽しませてくれるものですが、その短さ故に一期一会のような、刹那とも言える、はかなさがあります。
次に来るときに写真を撮ればいいやと考えていても、次にはもう咲いていない、そんな経験は結構あるのではないでしょうか。
今回はそんな「春のはかなさ」……スプリング・エフェメラルと、はかない思い出を題材に綴っていきたいと思います。
近所での散策
私の家は、北海道大学のすぐそばにあります。その昔、札幌農学校と称していた同校は、今でも自然豊かな環境に恵まれ、札幌駅北側から展開する敷地は北上するにつれ、人間が作り出した牧場などの自然のほか、原始のままの自然が色濃く介在するキャンパスになっています。
そんなキャンパスを札幌駅方面への買い物に行く際に、自転車を走らせて行くときが、私の野花観賞の時間になっています。時には、後ろに子供を乗せ、時には自転車カゴにカメラを乗せ、雪のない自転車を使えるシーズンであれば、月に2〜3回程度の頻度で通っております。
以下に、「恵迪の森」といういつも通る林のような森で咲いている花々の近況をお伝えしていきます。
春の妖精たち
4月23日に投稿したキクザキイチゲとキバナノアマナも、やはりこの「恵迪の森」のもので、その時はエゾイタヤやハルニレの林床を広く覆っていましたが、つい先日見たときにはエゾエンゴサクの絨毯に替わっていました。淡い水色の色合いがとても柔らかい印象で、春の代名詞とも言える花でしょう。ただ、ここにはカタクリがないのが残念です。代わりにと思い、ピンクや紫の変異体を探しましたが、あまり見つけることはできませんでした。たまに見る白色の変異体も見つけることができると、得した気分になるのは私だけでしょうか。
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エゾエンゴサク |
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出合えば嬉しい白い花 |
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そんなこんなで暖かい日が続いたからと、3〜4日経った後にふと出かけてみると、今度はエンレイソウが台頭していました。エンレイソウの中でも大ぶりなオオバナノエンレイソウが重たい花弁をもたげて群生しております。このオオバナノエンレイソウは北海道大学の校章になるくらいですから、その分布の多さはお分かりいただけるでしょう。
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オオバナノエンレイソウ |
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北大の校章のモチーフになっている |
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さらに負けていないのが、ニリンソウ、通称フクベラです。場所によっては、ニリンソウの大群生となっており、一つ一つは小さいながらもその群落は他を圧倒しています。
ニリンソウで注意を要するのが食用ですね。山菜として広く愛されておりますが、近似している葉の形にトリカブトがあります。横浜を始めとして本州ではどうか分かりませんが、北海道内ではトリカブトは当たり前に自生しております。8〜9月にかけ短い夏を惜しむように透明感のある青紫の花をつけて、目だけは楽しませてくれます。
このトリカブト、幼い葉形がニリンソウと似ているのですね。トリカブトの方が亀裂が深いのですが、それは並べて見たときの話で、単体では判断しようにもなかなか難しいと思います。当然、一か八かの勇気はありませんから、不確実な物は採らない(もしトリカブトなら、全草毒草なのでどの部位であっても触っていると、手が渋ってきます。)どうしても食べたいなら、咲いた花を確認してから摘むといった具合に防衛策を採らないと大変なことになります。そもそもニリンソウが属するキンポウゲは、食べられるものが少ないです。ニリンソウとエゾノリュウキンカ(=ヤチブキ)くらいではないでしょうか。
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可愛らしいニリンソウ |
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ミドリニリンソウ(函館山にて) |
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昔の探しもの
こういったものを見つける感覚は、四つ葉のクローバーに近いものがあると思います。今まで何度か見たことがあるにもかかわらず、でもまた探したくなるような、見ることができれば何だか得したような、安心したような、そんな気持ちで満たされていくような気がします。
と、ここまで書いて、またいつものように、幼少の頃、あざみ野西公園や大場町の野原で探した四つ葉のクローバーが脳裏に過ぎ去っていくのでした。
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