樹木
札幌便り(2)
サクラへの想い

投稿:坂上武史(札幌市中央区在住)     NO.43 2014.5.11 掲載
                                                   

 サクラは5月の花

 5月のゴールデンウィークが終わりました。北海道民にとってのゴールデンウィークは、冬から解放される節目の時期にあたります。
 札幌ではゴールデンウィーク中にサクラが開花すると平年並みです。今年は、前半では固い蕾でしたが、後半で満開となり、これをもって北海道に春が到来したことを実感できました。

 とはいえ、私は満開にはこだわらず、むしろヤマザクラがひっそり咲いているのが好きです。一方で、妻は参ったかと言わんばかりのソメイヨシノのようなものが好き、子供達はサクラよりも木の下で焼くジンギスカンが好き、と言った具合に花とそれにまつわる嗜好は人それぞれ。



開花直前の円山公園のサクラ
平成26年4月26日撮影


人知れず散るヤマザクラ
平成25年5月26日撮影

サクラを見ると思い出すのが入学式。横浜で育った私にとって小中高大の入学式を回想するとき、そこにはいつでも桜があったような気がします。北海道では5月の花ですが、横浜は4月ですよね。


 か細いサクラへの郷愁

開校したばかりの横浜市立あざみ野第一小学校での入学式を終え、あざみ野2丁目から3丁目を経て大場町との境界まで続く桜並木を、新しいランドセルを背負って帰ったときのことを覚えています。両親が「頃合い良く咲いたね」なんて話しているので、桜の木を見上げると、ヒョロヒョロの幼木にチラホラと花をつけていたのを覚えています。特に綺麗だと思いませんでしたし、当然圧巻といえるものではありませんでした。どちらかと言えば有り難さもなく、高学年になるにつれ、悪戯心に幹を蹴飛ばしてチャドクガの幼虫を落として遊んだ木としての印象が強いかもしれません。
 この文章を書くにあたりグーグル・マップで検索してみました。ストリートビューがちょうど見頃を撮っていて、鈴なりの超満開にビックリしてしまいました。入学式の帰路に見た桜の思い出には、背景に広がる空が青かった記憶が鮮明なのですが、今では空を覆い尽くすほどの枝振りに年月を感じてしまいます。

 当時のあざみ野、特に2年後に開校される第二小学校周辺は住宅が張り付いてきたとはいえ造成地ばかりが目立ち、大場町に入るとそれもなくなり、景色は一変、完全な里山の様相を維持していました。車一台が通れるほどの細い道を辿ると、市が尾方面へ抜けられる林道のような道があったのですが、私の家はその中程の集落にありました。雑木林と竹林に囲まれて、なぜか十数軒の世帯が山間に住んでいるといった感じでした。本来の学区は歩いて40分かかる鉄小学校だったのですが、父が役所に掛け合い、新設されるあざみ野第一小学校への入学を認可してもらったとのことでした。なので、近所には鉄小に通う子も何人か居ました。

そんな里山にも桜が咲いていたように思います。細い道から畑を挟んだ林に桜が咲いていたような気がします。あの時、当たり前過ぎて特に気を留めることなかった光景も、今となっては記憶の中のみのものとなってしまいました。私の好みが満開ではなく、あまり咲きすぎていないものが好きな理由は、先述の入学式の帰り道で見たか細い桜や、里山で何気なく見ていた桜が影響しているのかもしれません。

 ウメとサクラは同時に咲く花

 北海道のサクラはコブシの臭いに誘われて開花すると言われ、コブシの花を見つけると「もう少しで桜だねと」いう塩梅になります。「塩梅」ときましたので、ついでにいうと、ウメはサクラと同時に開花します。ツツジもやや遅れ気味ですが、ほぼ同時といって良いでしょう。このように北海道の春は一気にやってくるのです。



サクラとコブシの芽吹き
平成26年4月26日撮影






サクラとウメの花
平成26年5月6日、円山公園で撮影


ゴールデンウィークに我が家は恒例となっている富良野への温泉旅行に行きました。道中、雪山を背に新しい芽吹きや新緑に埋もれながら咲くエゾヤマザクラやチシマザクラとコブシの光景を楽しみながらのドライブでした。そこで思い出すのは、あざみ野の桜並木と大場町の山桜です。今でこそ「あざみ野桜通り」と「みすずが丘」に変貌しましたが、脳裏に焼き付いていて、なおかつ、今でも私が求める春の景色には、当時の控え目な桜があります。



エゾヤマザクラ
平成26年4月29日撮影



チシマザクラ
平成26年4月29日撮影

この春、上の子が入学式を迎えました。好く晴れた雪解けの道を帰りましたが、そこで何を見て何を感じたのか、もう少し大きくなってから聞いてみようと思います。

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