編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.896  2016.02.23 掲載
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地域   「妙蓮寺(前編)」 ウォッチング
★昭和62年3月発行『とうよこ沿線』第37号菊名・妙蓮寺特集「Do You Know 菊名?」から
取材・文:高橋かすみ(向河原)

 

 駅を降りると左手に“妙蓮寺”の赤い山門、その奥にはお墓まで並んでいる。
 どの駅にもあるお決まりの派手な商店街とは一見変わった趣。ここが妙蓮寺駅前。

 渋谷、横浜、どちらに出るにも便利なここは、住宅地としての機能は十分。
 パチンコ屋はできてもすぐつぶれる、一杯飲み屋も少ない――静かな街である。

忙しかった一日を終え、皆ここに戻ってくる……。




  その1.  異色の駅前情景


   迷路のような道をぬけると…

 駅前は一方通行。道も狭く、車で来るには、ちょっと不便なところも。山あり谷ありのこの地形。坂道、路地、石段と、街そのものが迷路ゲームのよう。車も入れないような路地を抜けると、急に下町風景が広がる。

 ふと横を見ると、昔はしゃれた家だったんだろうなって感じの洋館。こんな家もどんどん建て替えられるのかと思うとちょっぴり淋しい。
 下町風景と横浜くさい、異国情緒の混じり合った雰囲気がする街だ。



妙蓮寺駅改札口


散歩中、見つけた洋館


駅を降りて左手、妙蓮寺山門














  ノスタルジックな昔ながらの店

 商店街の中にも、昔のままの姿を留めている店は多い。

 駅を降りて右手に真っすぐ進むと突き当たる八百屋さん。おじいちゃんとおばあちゃんの2人で細々と経営。背中のかごに仕入れた野菜をかついで戻り、店頭に並ぶのは午後。夕方には店の前に行列ができる。新鮮な野菜をバラ売りしているからとも、野菜を新聞紙に包む動作が遅いからともいわれている。



おじいちゃんとおばあちゃん経営の八百屋

 その隣にも看板のない駄菓子屋。旧綱島街道沿いにも、文具屋とか、電器屋など、「昔、よくこんな店に買いに来たよねー」なんて、子供の頃の思い出に浸りたくなるような店ばかりだ。



「ばばやJとも「5円や」とも呼ばれる駄菓子屋



  その2.  緑豊富な街、動物も棲みやすそう


自然を楽しめる街

 街の中に、これほど自然か残っているところも珍しい。これからのお花見のシーズン、妙蓮寺境内武相高校前菊名池綱島街道沿いなど、あちこちで花を楽しめそうだ。

 綱島街道沿いの斉藤栄太郎さんは今でも専業農家。この辺の高台から、富士山を背景に眺める景色がまた絶景!



菊名池の桜  撮影:池田はるみさん(大豆戸町)

 東横線開通前は、篠原、富士塚ほかそれぞれに農家か数十軒ずつあったという。その田んぼの用水が必要とされ、菊名池・篠原池・白幡池ができた。今では公園となって住民の憩いの場となっている。中でも菊名池には、久しぶりといわれる鴨のキンクロハジロが、この冬、仲間入り。
例年より鳥の数か多い。




本号表紙絵登場の菊名池の鴨。この鳥、地元の人に聞いたら「カイツムリ」。編集室スタッフが図鑑で調べたらガン・カモ科の「キンクロハジロ」。どっちが正しいのでしょう! 詳しい方、教えてください。


また、松見町方面では、今でもキジやウグイスなどがうれしそうに飛び回っている。

 動物やペットも棲みやすいのか、スーパーOKの店長さんも「ペットフーズが他店に比べよく出ます」と語る。
 10数頭の犬を毎日ひき連れ、菊名池付近を散歩する
犬のおばさん″はあまりにも有名だが、それに対抗(?)してか、猫のおばさん″と呼ばれる方も出現したとの噂。
 こんな方たちに拾われた犬や猫はいいけれど、無責任に捨てないて欲しいね。



  その3.  この街が人を呼べるものとは…


   沿線の鎌倉〃、妙蓮寺

 沿線の鎌倉″と呼ばれるゆえんともいわれるお寺・神社・そして“横浜七福神”の弁財天。イラストマップを参照して、是非訪れてみてね。

 また、この辺で最大のお祭りといえば、妙蓮寺の御会式。遠く鎌倉などから集まった人々がまといを振りかざして踊る。この日だけは、街中がお祭りに浮かれる。



妙蓮寺の御会式

 祭りは一日限りですが、妙蓮寺の街が夏場2カ月間、一気に活気づきます。横浜市営菊名池プールが開放され、子供たちの歓声が街中に響きわたるからです。



妙蓮寺で唯一、外から人を呼べる公共施設・市営プール

   知識人・文化人の集まる街

 ゆっくりものを考え、静かな生活を守るのに最適なせいか、大学教授・芸術家・会社の重役・マスコミ関係者など知識人・文化人が多いのも特徴。ここにいるだけで、インテリゲンチア気分が味わえそう。

 音楽家も多いが、地元で演奏する場がないのが淋しい。
 過去に、
妙蓮寺のうた″をつくろうという話もあったが、とうとうレコード化されずに終わった。音頭調に編曲し、地元でうたい親しんでは?



レコード化されなかった妙漣寺のうた
作詞・竹内幸 作曲・蔵野今春






  その4.  いま、街が躍動しだした…


   妙蓮寺にも新しい動き…

 昔はとんと見かけなかったという学生など、若い人か増え、また、新しいマンションが建ち始めた。



仲手原2丁月の公園予定地。バックにはこの街最大の妙蓮寺ハウス。地下には新横浜貨物が通っている

 商店の中にも個性的な店がちらほら。旧街道沿い菊名寄りにある古着屋さん。アンティックな小物もずらりと並び、異彩を放っている。オーナーは代々木フリーマーケット出身というから、うなずける。



古着屋。店先まで物があふれて‥



 こんなところにレストラン? 住宅街の真ん中に、変形六角形の白い建物。「駅前は高いし、貸店舗は四角い決まったスペースしかない。もっと凹凸のある形を楽しみたい」と、あえてこの場所に。若者をあてにしていた店長さん、意外にも熟年のご夫婦や親子連れなどが集まってくるのでびっくり。お客さんは「こんな落ち着ける場所か欲しかった」と口々に言うそうだ。



住宅地の中にあるレストラン。外見だけでなく内装も素敵

 駅前にも喫茶店など新しい店が出現し、色彩的にも造形的にも、私たちの目を楽しませてくれる。

   もっと住みよく快適、素敵な街に

 妙蓮寺には、大型店より小さな個性的な店の方がしっくり溶け合うような気がする。そんなお店もやっと最近でき始めたという感じ。もっとここに住む知識人・文化人が集い、熱く語り合う場所かあっていいのでは?
             

 古いものを知ることにより、新しい文化が生まれる。妙蓮寺は、そうなりうる街だし、それを認めることができる街だと思う。

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