商店街発展物語
駅前に降り立つと、いつもたくさんの買物客。右手に12メートルの高さのモニュメントの立つ広場。そこから2方向に、パルムのショッピングモールが何百メートルも続いている。
この武蔵小山商店街(愛称パルム)には、語り尽くせぬ長い歴史がある。
前号の大岡山・洗足同様、この地も目蒲線開通と関東大震災によって、急激な人口増をみた地域。それと呼応するかのように大きな発展をとげた商店街は、しかし昭和20年の空襲で壊滅的打撃を受ける。ゼロからの再出発を余儀なくされた人々は、焼け跡にバラックを建て、新しくやってきた人々とともに復興を始めた。
そして昭和31年暮れ、当時東洋一と言われたアーケードが設置され、一躍注目をあびることとなる。全長470メートルの「横のデパート」は、住宅地を背景に発展、昭和40年頃には近県まで商圏が拡大、40万人のお客を抱えるまでになった。
(詳しくは当サイト「沿線風土記」をご覧ください)
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入口のモニュメントの人形。オルゴールとともに15分おきに動く
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武蔵小山は安い!
大発展の裏には、商店主たちのたゆまぬ努力と苦労もあった。さらに、安くて実用的な商品が評判を呼んだこともある。安さの秘密は諸説あるが、ともかくアーケードのどこかで必すバーゲンがあり、人が群がっている。衣料品店が比較的多く、それも気どらない普段着が中心。
昭和60年に、本通りと銀座通りあわせて延べ1000メートルのカラー舗装と、開閉式アーケード(天候によって天窓がスライドして開く)が完成。明るくあかぬけたお店も増え、キャッチフレーズの「めざしからロココまで」どおり、庶民的で、でも、ちょっぴりおしゃれな街になった。
さらにこの1月には、イタリアで130年の歴史をもつミラノ商店街と友好提携が結ばれた。
ところで、パルムで買い物していて、めざすお店がどこだったか分からなくなることはない? 長いアーケード、往復するのも楽じゃない。
本通りは横道を区切りとして4ブロックに分かれているから、それを目安に、看板を見ていくと確実。
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看板の数字がブロックを示す。駅寄りから1部、2部……と数え、4部まである |
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血塗られて満蒙開拓団の記録
戦前の武蔵小山商店街を築いた人びとの多くは、太平洋戦争終結の2年前、満州に新天地を求めて移住した。そこでどんな悲劇が彼らを待ちうけていたのか……。
今もひそかに語りつがれ、商店街の人びとの心のささえとなっている満蒙開拓団秘話。
命からがら生還した元副団長・足立守三氏による生々しい記録、壮絶なドキュメントが1冊の本になっている。
武蔵小山に関心のある人のみならず、生きるということを考える全ての人に一読をおすすめしたい。
この本のあらすじは、当サイトの「沿線風土記16 武蔵小山商店街 激動のあゆみ」をご覧ください。
在庫が少ないので、書店で申し込むか、送料とともに直接郵送で申し込むとよい。
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「曠野に祈る」 恒友出版
1200円(送料250円)
申込先:〒106 港区六本木3−15ー22 恒友出版
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一番通りから後地へ
パルム1部と2部の間の通りは一番通り商店街。駅近辺では唯一のスーパー、東急ストアがある。この建物は、品川区荏原第一出張所も兼ねている。道の反対側には朗惺寺。意外に入り口がわかりにくい。東急ストアの並びには、“武蔵小山こども文庫”もある。近くに図書館がないこの地区のために、毎週日曜・水曜・土曜日の午後、本の貸し出しを行っている。
この道の先が京栄会の商店街で、右に曲がると、朝日地蔵のある後地(うしろぢ)へ出る。タケノコの碑はさらに先を左に行ったところにあるが、分かりにくいので、地図をよく見て行こう。
これはすごいぞ、PALジェクト
どうもパルムが伸び悩んでいる。
今後、消費者と商業者両方にとって望ましい21世紀の街づくりとは、どんなものだろうか…。
それを検討していこうと、この4月から1年計画でプロジェクトチームが結成された。商店街のメンバーを中心に、商工指事所の診断員や外部講師などを招いて研修会を行ったりしている。
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パレムの未来構想を語る、商店街副理事長・国枝博さん(11YA・社長) |
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具体的には例えば、通りの商店の業種や商品の構成について。伝統的に、店がびっしり軒を並べ、遊びの空間がない。ゆっくり休めるような飲食店や、文化的な施設も少ない。
買い物の後、家族でくつろげる場所が欲しい。表通りで難しければ横道にその余地はあるのではないか。
また、裏の専用駐車場をテナントビルにする構想があるが、ハード面先行でなく、時代の二−ズに合ったソフトの検討が必要ではないか――などなど。
駅前の商店街とその奥の飲食街の再開発も話題になっている。さらに、目蒲線への東横線乗り入れに際し、大岡山から目黒まで急行が停車しないという噂があり、住民の便宜を考えて、「武蔵小山に急行を停車させる会」も発足させたという。
大きな商店街だけに、全体が一致団結するには困難が多いようだが、パルムの未来のためにがんばってほしい。
武蔵小山の夜の顔
駅前通りの奥に見え隠れする「飲食街」は、夜になると活気が出てくる。それほど広くない敷地に無数のバー、スナック、居酒屋がひしめいている。これがほとんど借地の上で商いをしており、権利問題などで再開発の大きなネックになっているようだ。
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狭い路地にたくさんのネオンが並ぶ |
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許せません、犬のトイレ
毎日午前1時、人通りの絶えたアーケードを見回る白衣の人物がいる。銀座通りでワンワンランド「マウンテン」を経営する動物研究家・蓮見良夫さんだ。夜になると、この通りで犬の散歩をさせる人が結構いるが、問題になるのはその排泄物の始末。
尿は異臭を放ち、糞は寄生虫の源となる。見かねて処理を始めてもう20年。以前より良くなってきてはいるが、まだまだモラルの低い飼い主も多い。
「こんなことをしないですむように、早くなってほしい」と訴えている。
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片手にポリ袋、片手に消毒剤を持って、夜のアーケードを歩く蓮見さん
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こんなおしゃれなお店もあるよ!
パルム3部と4部の間を横切るプリンス通り。26号線手前に、通行人が思わずガラス越しに覗きこんでゆく、かわいいお店を発見。
狭いけれど明るい店内には、ノーブルな香りただようベニスの仮面やアクセサリー、銀器、キャンドル、ベネチアグラスの小物、ミニチュアなどがいっぱい! ヨーロッパ気分になっちゃうメリーゴーランドのオルゴールとか、エミール・ガレの貴重なガラス工芸品まであって、思わずうっとり。すべて店主の影山さんのお気に入りの品を集めてあるということで、気さくに相談にのってくれるから、気軽にのぞいてみよう。
現在、商品は、国産・輸入品をとりまぜているけれど、将来はヨ一ロッパのアンティークものを増やしていきたいとのこと。美しいものに断然こだわってる、こんなおしゃれなお店が武蔵小山にもっと増えると楽しいね。
「建都」03(766)7753
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