近くにこんな大黒様
ドーンドンドン…。鳴り響くのは、大太鼓のお題目修業。こちらは雪谷念力大黒天(法友会)、昭和51年開堂以来、1日3回、罪障消滅、信力増強進を祈願。わざわざ遠方から来る信者も多いようだ。
トレビの泉に劣らぬ泉は、
歌手「雪村いずみ」の芸名に
「円長寺の上あたりにカンニャクボと呼ばれる馬捨て場があった。昔はこの辺も山の中、馬による交通が主だった…。
語るのは、飯田忠次郎さん(88歳)。雪ケ谷村で7軒7苗(苗字のこと)の頃の旧家の出。
南雪谷5丁目10番あたりは、昔、湧水豊富な洗い場だったのでこの場所に“水神様”が祭られていた。これが最初、金製だったために何者かに盗まれてしまい、のちに木製にして社に納めた。(現在これは雪ケ谷八幡神社に安置)。
当時この水神様のある小川にはカキツバタが咲き、ウチワホタルの群れが飛ぶ桃源郷だった。しかし今日でもこの地には清水がこんこんと湧き、東調布公園の野球場脇に流れているのだ。
歌手・雪村いずみ(本名朝比奈知子)は「デビュー当時この泉にほど近い所に住んでいて、芸名を雪ケ谷村の泉からとった」
とその由来を話す飯田忠次郎翁。

昭和16年春、水神様の湧水を引いて造った洗い場
春カブを洗うのは飯田忠次郎さんの父・浅次郎さんと母・なをさん
提供:飯田忠次郎さん
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ここはSL停車駅、雪谷の丸の内
こちらは東雪谷2丁目。荏原病院・大田区出張所・消防署が並び、ひと呼んで「雪谷の丸の内」。
そのうえ、SLあり。ん。SLが!? どうして、こんな所に? ふと表札を見ると、あの建築家の清家 清さんのお宅。早速、訳を聞いてみました。
「このSLは、ワーフー2600、主に東北地方を走っていて、昭和57年に廃車になる時、特別に払い下げてもらったんです」。
中をのぞくと、ステキな書斎。さすが……。SLは子供の頃から大好きとあって話は尽きない。SL君の、喜ぶ汽笛が聞こえそう。
すごいぞ! 地球を54周
雪が谷大塚駅から銀杏並木を南西に歩くと、東調布公園にあたる。
こちらはD51−428、昭和11年〜20年みちのく路を走り、走行214万5187キロメートル、なんと地球を54周したSLだ。昭和47年、当公園に停車して、今ではすっかりチビッコたちの人気者。
他にも、上記の水神様の湧水を利用した小川、交通安全を願う児童交通公園、水泳場、野球場、サイクリングロードと、レクリエション設備も豊富。休日は、家族連れでいっぱい。
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明治初期の雪谷甚句(唄)
♪ハァー 雪谷名物3つある
♪ハァー 1つは氷場
♪ハァー 2つは憲兵所
♪ハァ一 3つは八幡神社なり
冬場に天然氷が宮崎・石井家で取れ、中原街道の石川橋のたもとに憲兵隊の駐屯所があった。
この頃の出所は、明治中頃まで造り酒屋をしていた前述の当主・田中正光さん76歳。木のくさびで建てられた旧家には、今でも木製の恵比寿様が安置されている。
田中さんは雪谷小学校の生徒たちに郷土史の勉強としてお題目を披露したり昔話を話して聞かせたりして郷土文化の伝承に努めている人。地元の伝説である「朝日長者の財宝」、「おしめ洗い地蔵」、「直井家の家系」などの話が得意で、とっても面白い。
知ってる!校名の由来
大田区立池雪(ちせつ)小学校といえば明治11年創立、110年の歴史を誇る。
当初、児童数は30〜40人。わらぶき屋根の校舎も今では鉄筋コンクリート。きょうも1000人の生徒が元気に登校して来ます。
で、この池雪小、校名の由来にこんな話が…。
創立当時の学区域は、上池上・道々橋・裏石川・雪ケ谷など5か村にわたっていた。そのうち、大きな2村名を取り「池雪(いけゆき)」としたが、安易すぎるので<ちせつ>と読み変えた。な〜るほどねえ。
小学校のそばに、むかし日蓮上人が花を摘んだという伝説がある「花抜き坂」、行った?

花抜き坂から遠く池上本門寺の五重塔、近くに新幹線の軌道が見える
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なぜか信州中仙道!
南雪谷2丁目18番地。古ぼけた木の道標が建っている。ここが信州中仙道? 「とんでもない」とは、ご主人の吉澤さん。むかし宝塚で仕事中、芝居の小道具だったのをもらい受けたそうだ。
それにしても旅人泣かせ。たまに「ここが信州ですか?」と訪ねてくる珍客も。
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旅人泣かせの道標 |
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さすがぁ、DENENCHOFU POST OFFICE
郵便局の建物というと、どういうイメージ? 四角四面のコンクリート。白い壁に〒マーク。
ところがどっこい、ここ田園調布郵便局は規格品じゃない。まず入り口が造形的でユニ−ク、それにマッチさせて、玄関の郵便局名もDENENCHOFU POST OFFICE と横文字なのだ。窓口にカーペットを敷いたのも、全国初だそうだ。各階は郵便・貯金・保険の3事業別に赤・緑・青のパステルカラーで色別、屋上のタンクは目隠して石庭風に。
そのうえ、テニスができるレクレーション室も。
地域の特性を生かし、地域の文化的ストックとなるように設計した当の本人は、東京郵政局建築部の観音克平氏だそうだ。
場所は環八と中原街道の交差点、大田区北嶺町21番地。
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眺める角度によって異なる田園調布郵便局の姿 |
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なんだ坂! こんな坂?
雪谷は坂が多い。花抜き坂、宮前坂、権現坂をはじめ、名もない坂が数十カ所。
中でも異彩を放っているのが、東雪谷5丁目20番の「この先、行き止まり」の看板の坂。下を見ると、キャー! 急な坂道、下り坂。ガードレールで出入口をふさぎ、通行止は数十年前。「行き止まり」ならぬ「行き止まらぬ」坂道なり。
そういえば、石原裕次郎主演「陽の当たる坂道」のロケが行われたのも石川台駅前線路沿いの坂だ。
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