編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
   NO.881  2016.02.06 掲載
地域
 
新丸子・武蔵小杉・武蔵中原」
               ウォッチング

★平成7年5月発行『とうよこ沿線』第63号「新丸子・武蔵小杉・武蔵中原」ウォッチング」から

   すっごく綺麗な街に変身!
                  その名も 「小杉南一番街」と決まる

 東横線の武蔵小杉駅前に久しぶりに降り立つと、目を奪うほど綺麗な街に変身していた。
  失礼な話だが、雑然としたイメージが強かったこの商店街が通りは隅々まで薄紫のタイル舗装、電柱は片側に整然と寄せられ、明るい水銀灯が数多くついている。よその街≠ノ来たようだ。



今春ショッピングモールが完成した小杉南一番街

 早速この街の顔″、武蔵小杉駅前通り商店街振興組合(組合員110人)理事長の角川栄喜さん(中華一番経営)を訪ね、その街づくりの裏話をうかがう。

 「この商店街は戦後の昭和2223年ころ、今のフードハウス大野屋さんの先代社長らが設立し、昭和33年当時から本格的に活動し始めたのです。
 今回のモール化事業についても15年前から積立金を年間150万円ずつコツコツためて、平成5年1月に振興組合に法人化し、これに踏み切ったんです」


 やはり何事もー朝一夕にはできないものだ。総工費3億5020万円(川崎市負担の道路基盤整備費は含まず)。街区の全長は500メートル。振興組合組織では街区内の大小の全業種が含まれる。東横病院、3金融機関、イトーヨーカドー、マルエツなどもこの商店街の組合員だ。これらをまとめあげるのは、さぞ役員さんのご苦労もと思ったら、
 「不在地主の協力を得るのに少々手間取ったくらいでしたよ」と角川さん。
  皆さんがこの事業のコンセプト《明るく、安心できる、楽しい街》に同調し協力されたようだ。

 街の通りはすっかり生まれ変わり、その名も新たに《小杉南一番街》と決まった。ただ一つ残された悩みは「放置自転車とゴミ問題」。この点を角川さんは、
 「平成9年に東急の複々線化の高架工事が完成したら高架下を駐輪場に使用させていただきます。とにかく綺麗な街、清潔な街づくりが私たち役員の夢ですから」

 今年6月からはこの商店街の先、法政通りの工事が始まる。リニューアルの武蔵小杉駅前は今、新しい街に燃えている。

             文・写真:岩田忠利











    
   全国でもしいガラス工芸学校


 ガラス工芸を習いたいが、どこで教えてくれるのだろうかと思っている人はいませんか?

  じつは武蔵小杉〜元住吉間の市ノ坪にあるんです。そこは「東京ガラス工芸研究所」、昭和56年の創立です。

 ここにはガラス工芸の道を志す学生が大勢いて、1年半で基礎的な技法を学び、残りの半年でその技法を元に各自が独創的な作品をつくっています。

 ガラスといえば、手を切ったりケガをするなどのマイナス・イメージがありますが、この研究所ではガラスは、彫刻や美術の素材と同じように一つのアートの素材として扱います。例えばガラスをカットし、絵付け、研磨などいろいろなことに応用します。



ガラス工芸は真っ赤な炎に耐え、学生たちの夢のままに自由自在にその姿を変える


 

 学生さんの創作作品は年2回(2月と10月)、東急百貨店本店で「学生展」として展示即売会が行われます。
 値段は安いもので500円からと手頃で、既製品とは一味違うユニークな作品が多く、地方の業者の人も買いに来るほど″隠れフアン″が多いのです。

 卒業生は自分で工房をもったり、外国へ留学したりといろいろ。
 案内してくださった同研究所代表・松尾敬子さんは最後に読者の皆様にこう要請しています。

 「一般の人はガラスのことを知らなすぎます。ガラスに関心を持ち、もう少しガラス工芸の素晴らしさを知ってもらいたいですね。私たちも人に感動を与える作品を創りますから…」 
                     文:川本なおみ

 連絡:中原区市ノ坪3331
     東京ガラス工芸研究所・松尾敬子
    0444342544











             


           中原区内唯一の道場  
中原柔道館



「おりゃ−、ドスン!」
威勢のよい掛け声が外まで響く。
ここは中原区で、唯一の柔道場。1階が及川接骨院、その上に道場があり、及川悦博さん(49歳、柔道5段)が代表を務める。
 30畳の広さを持つ道場では、20人ほどの子供たちが稽古している。いささか狭く感じるが、内容は充実しているようで、子供たちの熱気がビンビン伝わってくる。




 「町道場には、優れた柔道家を輩出するだけでなく、地域の生涯教育の場として、上手な人も、そうでない人も受け入れる器が必要だ。この環境があるからこそ、柔道を志す者同士、お互いを尊敬する心と礼節が芽生える。技を磨くだけでなく、心と身体の鍛錬が重要だ」。

  経済的な理由で減り続ける町道場にあって、及川さんの柔道に対する熱意は衰えるところを知らない。
 
 人生に受け身になっているあなた、自信を失くしているあなた、及川さんに一度心も背骨も診てもらおう。   

               文:田中知明
 連絡:中原区小杉町1-525 7225092
   中原柔道舘・及川接骨院
 
      

    〜移転の際の不用品も買い取る〜
         
電気製品・家庭用品のリサイクル店



 リサイクルショップといえば婦人服を連想するほど女性対象の店が多い。ここ「リサイクル日吉」は品揃えが全然違って、むしろ男性や家族連れが多い。

 市ノ坪の府中街道沿い、出光スタンドの相向かい。その店は元機械工場だった建物をそのまま使ったもので、15坪ほどに家庭電化製品、音響製品、家具、照明器具、事務機器、受話器、時計などビッシリ。外のテント内にも大型の物が積んである。




 

 社長の柳田晃史さん(51)はこの工場経営者でエンジニアだったが、昨年5月に中原警察署から古物商″の免許をいただき、リストラでこの商売を始めた。

電気製品や機械物は「動かなければただの粗大ゴミ」。そこは機械屋さん″の柳田さん、故障個所をすぐに見つけて直してしまう。

 洗濯機は新品同様で8干円前後など、どれも信じられない値段。そのうえ中原区内なら無料配達もしてくれる。この品揃いと安さ、その親切を伝え聞いてお客がかなり遠くから来ているようだ。

 また、電話すれば使用可能なもの(タンスなどの大型なものを除く)なら何でも幾らかで引き取ってくれる。移転の際の不要品処分に困っている人に喜ばれ、感謝されている。粗大ごみで出すなら大概有料。
 資源再利用のためにもリサイクル日吉に連絡してみては……。         文・:岩田忠利 
 所‥中原区下小田中 リサイクル日吉 柳田晃史 
   携帯090850-65182

             

       1歳児無料けて15年


 日本医大病院・正門前の「写真工房いしばし」。店に入るとまず目につくのが壁に貼ってある数多くの幼児の顔写真です。嬉しそうな顔や、何だか頑固そうな顔、やんちゃな顔が生き生きととらえられています。



1歳児の写真の前で石橋栄次さん

 昭和36年にこの写真店を開業したのは石橋栄次さん(62歳)。現在はスタジオ写真のほか医学写真や航空写真など撮られています。



 

 そんな石橋さんが無料で1歳児を撮り始めたきっかけは、
 「カメラが各家庭に普及した割には、子供の小さい頃の写真で“この1枚”というのが無いと思ったから」。
 1歳児にこだわるのは、
 「1歳という年齢は、社会を学習していなくて、親の影響も受けていないから」。

情報が氾濫している今日、歩き出す年頃になると良い意味でも悪い意味でもいろいろな知恵がつき、純真無垢の姿が失われてくるということのようです。

 昭和55年頃から撮り始めて15年。その数はおよそ2500人。その依頼は口コミで広がり、県外に引っ越しをしても2番目・3番目の子供の写真を撮ってもらいにみえる方もいるそうです。

「今の世の中は、タイ焼きのように型にはまった大人になっちゃうけど、この写真みたいに一人一人表情が違って型にはまらずに生きていけるといいのに……」

 そう、子供が個性豊かに成長することを願う石橋さん。きょうも子供の目の高さに立ち、一番良い表情を追い求めていらっしゃることでしょう。 
               文:吉野奈奈

連絡:中原区小杉町1-513 写真工房いしばし            044711-2332



     最近のキノコは町で採れるの? 沿線唯一「キノコ園」


  

 キノコは東北や信州の山奥で採れるものと思っていたら、中原区下小田中の住宅地に「宮田きのこ園」というキノコ栽培業の家があった。
 聞けば、主人の宮田和博さん(45)が10年前に脱サラで始め、3年後には実弟・崇さん(43)も脱サラして手伝うようになったという。

 味噌汁に入れても大根おろしでも美味しいナメコの栽培は1年中だが、シイタケは4月から10月まで栽培。それも自然の中で樹木の根元などから採るのではなく、人工栽培で、キノコ工場のようだ。

 例えばナメコは″おがくす″を入れたポリ容器に菌を植えて室内温度15C.湿度80%に蛍光灯の光をあてて60日間培養すると、ニョキニョキ生えてきて1回目の収穫。また10日後には2度目の収穫ができる。5棟の培養場があり、1棟に約7200個のポリ容器が棚に並び、合計3万6000個の容器から採れる。







ポリ容器の中に生えたナメコと宮田和博さん

 こうして収穫されたナメコはビニール袋に詰め、川崎市内の市場へすべて出荷される。東横沿線唯一のキノコ園、そこの新鮮なナメコを食べてみたい方のために、ただ1カ所の小売り先を紹介! そこは、井田中学裏の道路沿いのタマゴと一緒に売っている自販機。
            文・写真:岩田忠利

場所:中原区下小田中6-14-1 
    宮田きのこ園 7773537

        

   本号・表紙の写真を撮った 
白井さんは鉄道写真マニア


 本号・表紙の写真は、新丸子・大楽院そばのガソリンスタンドの社長、白井嶽吉さん(58)が撮影したものです。

 白井さんは子供の頃から大の鉄道フアンで、もちろん今でも列車に乗ると一番前を陣取るほど鉄道好き。その彼がとくに鉄道写真に興味を持ったのは、北アルプスを背景に走る大糸線の列車の勇姿に感動してから。

 白井さんは今でも連休にはカメラかついで全国の鉄道の写真を撮りに行きます。それも、もっぱら最新型の列車よりもローカル線のものを。「沿線に住む人の匂いがするから」だとか。列車に乗ったらまず地元の乗客と話をする。そこからその鉄道の普段着の顔が見えてくるからだそうです。

 お気に入りの路線は2両編成のディーゼル車が会津若松〜新潟間の深山霊谷を走る只見線。こだわりの写真を撮るためには、雪が降っていてもじっと2時間に1本の列車の通過を待ちます。そこで自分で「決まった」と手ごたえのある、シャッターを切った瞬間、それが鉄道写真の醍醐味。

 最近ねらっている鉄道は秋田の五能線だそうですが、行く行くは日本全国、果てはスイスの山岳鉄道などをのんびり旅するのが夢、とのこと。



ガソリンスタンドで働く白井さん
 「一日中、時刻表を見ていても飽きませんよ」
 と二コニコ話す白井さんのお顔に永遠の少年の瞳を見たような気がします。

   文:吉野奈奈





 姉妹の頭脳はコンピューター並み  注文“伝票なし”


 昼時や夕食時ともなれば店内は溢れんばかりのお客さんで賑わう。ここは新丸子駅西口から徒歩1分の「三ちゃん食堂」。壁面に単品メニューがずらっと160種も……。 それを四方八方から飛ぶ注文の嵐に伝票なしで注文を取る、すごい女性がいた。

 中山初枝さん(43)・美江さん(37)姉妹である。お二人にその疑問を問いかけると、
 「大勢の人(最高55席)が来店されるので、伝票を書いているヒマがないのよ」
 と、あっさり返されてしまった。
 それにしても、あれだけ多くのメニュー。しかも一人で何品ものオカズを注文する。いくら仕事とはいえ、この記憶力はコンピューター並み、凄い!

 この姉妹は父親が昭和42年からこの食堂を経営されていたので、高校卒業後からずっと手伝っている。キャリアもかなりのものだ。







姉の中山初枝さん(右)と妹の美江さん(右)

 このお店は「若いお客さんにお腹いっぱい食べてもらおう」と始めただけに、ボリュームたっぷりで値段も手頃。そのため「早くて安くのサービス精神でお客さんに接している」そうだ。
 だから手際よく仕事をこなし、笑顔を絶やさないとても感じの良い二人だった。  文:川本なおみ

所‥中原区新丸子町733 三ちゃん食堂 水曜定休


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