編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
   NO.878  2016.02.04 掲載
地域     自由が丘」ウォッチング
★平成4年4月発行『とうよこ沿線』第56号「自由が丘ウォッチング」から
    五十数年前の 
         自由が丘
自由丘学園


      昭和24年、目黒通り。目黒区と世田谷区の区境

左手が自由が丘地域。左のバスあたりが区境で、後方の世田谷区域は舗装されていない
 話す人 林田 茂さん(自由ヶ丘学園前校長 78歳)

 昭和139月、私は九州福岡の片田舎から上京し、4年編入で自由ケ丘学園に入学しました。

 “文化住宅”が建ち始めた頃

 当時の自由が丘は、店数は駅に近づくほどに増え、その周囲に文化住宅が建ち始めた頃、まさに発展途上といった感じでした。
 新住宅は平屋が多く、どの家も書斎付き、見るからに「文化人の町だなあ」と思わせるただすまいをしていました。それがまた、豪邸が建ち並ぶ田園調布に比べ、構えは小さくてもどこか落ち着きを感じさせるものでした。

 学校周辺はケヤキや竹藪に囲まれた農家が点在する農村地帯。どの農家も周囲に生け垣があったものの、家の広さが分かるほど開放的で、生徒が柿を盗んだりイタズラしても「欲しければあげるよ」などと、大らかな人が多かったですねえ。
 当時から広い道幅だった目黒通り辺りの地形は、高低差があって見通しが良くきくヒノキ林の原野。よくここで手旗信号の訓練をしたものです。
  しかし困ったのは泥道とホコリ。駅周辺以外は粘土質の道でしたから、冬は霜どけのぬかる道、春は畑から吹きつける砂ぼこりが黄塵万丈といった感じでしたよ。

 地元の生徒は殆どいない5年制の高校

 私立自由ケ丘学園中学校は現在の5年制の高校で、校舎は木造2階建の12教室と柔道場の2棟。ここに生徒約500人足らずが在籍していました。それも、日黒区内の生徒は殆ど居なく、東横線を利用した都内や川崎・横浜からの通学者ばかり。その中に台湾や朝鮮の子弟も目立ちました。


 当時はまだ台湾や朝鮮は日本国でしたから、こちらに下宿して編入試験で入学した留学生です。みな頭が良く、生活水準も高い。彼らはよく勉強し、薬学や医学の道へ進んだ者が多かったですね。

 生徒と一緒に寝泊まりする藤田校長

 私が最も影響を受けたのは藤田幸作先生でした。若い頃苦労された人で、校長であり教師であり、そして用務員であり、小使いとして何でも学校の建設的なことには率先して実行していく。
 編入してくる生徒はそれぞれに何か事情があり、前の学校を退学してきたわけですよ。喧嘩口論、家庭事情、病気、喫煙など……。
 藤田先生は柔道場を「明訓塾」と称し、ここでそうした生徒たちと一緒に寝泊まりしながら教育するのです。ときには「息抜きを」と言って、寮生20人ほどを連れて浅草へ。そこでお汁粉を食べさせたり街を見学させたり…。地元の熊野神社の祭には生徒に余興
をさせたり、と。

  得意分野で個性と才能を発揮させる

 藤田先生のこうした人間味あふれる指導で、バンカラな生徒たちは自分でも驚くほど、個性と才能を発揮するようになるんですね。病気で編入してきた者は国文を、タバコ(喫煙)で来た者は英語を、喧嘩で来た奴は柔道を、そして台湾の奴は数学を、と得意な分野を見つけてがんばらせ、それぞれの世界に巣立っていったのです。
 学園は、まさにコスモポリタンでした。  
             聞き書き:岩田忠利



         自由が丘の街に溶け込む  SANNO



 SANNOつて何のこと? そう、自由が丘駅から徒歩15分の所にある「産能短大」のこと。

所在地は世田谷区等々力ながら、キャンパスタウンとして自由が丘を取り込む形での学園祭(=産能祭)を催したことが話題となった。

 自由が丘の街との関わりは、恒例の女神祭への参加が発端。11月の産能祭では自由が丘商店街振興組合の協賛でスタンプラリーを行った。協賛店を回り、そこでスタンプを押し、10個集めて産能短大へ持って行くと、それぞれの店の素敵な賞品がプレゼントされるという催し。


産能祭デノメーンイベントは「振り袖ファッションショー」
あでやかな着物にみんなうっとり、美人が多いんです

これが学生だけでなく一般参加もOKということで大盛況だった。また産能祭期間中、自由が丘の街並を彩る街路灯の下に産能祭の赤と青の旗100本を掲示させてもらい、これも好評だった。

 産能短大は、T部・U部・通信教育などの5部に分かれているが、今年から大きく変わり、さらに充実する。社会での即戦力″となるべく実践的カリキュラムに片寄らない、幅広い視野を持った創造性豊かな人材育成をめざしている。
 また、リサイクル活動も盛んで、校内で古紙回収を行い、その収益金を募金と合わせて、湾岸戦争で被害を受けたクルド人難民ヘユニセフを通じて送った。

 学校法人産能大学には、産能短大と並んで4年制の「産能大学」が神奈川県伊勢原市にある。日本で初めて経営情報学部を設けたが、本年月からはその大学院ができる。新卒業生と社会人とが相互に刺激しあえる場になるよう期待されている。         文:小田順子







   街を彩るヒトとミセ

          40周年を迎える 自由が丘デパート

      話す人  理事長・五十嵐孝蔵さん

雨後のタケノコのように建つ自由が丘のビル・ラッシュ――。ところで、この数多くなったビルの中で、どこのビルが自由が丘で一番早く建ったか、ご存知ですか?

そう、当たり! 自由が丘デパート。完成は昭和281212日で、この街の鉄筋ビル第1号だったのです。
 それが現在、B1とF1に各50店ずつ、2Fと3Fで30店、4Fに外語塾などと大所帯に成長し、もう40周年を迎えます。





 そこで只今、これを記念すべく店の主人100人が集まって御礼のキャンペーンを企画中です。それは「300人のお客様を招待してのグルメ8クルージンク」を楽しんでいただこうというもの。それだけではないのです。まだまだ、あります。すべてはこの夏、実現するそうですからお楽しみに!

 建物も40年も経てば、お肌の曲がり角”をとっくに過ぎてしまいました。で今、その強度テストをしたりお化粧直しをしている最中。そして五十嵐孝蔵理事長さんはこんな構想と要望を皆さんに。

 「もう世間に発表してもいいでしよう。じつは、地下2階・地上9階の新しい施設を備えた新ビル建設を計画中なんですよ。どうせ造るからには、お客様に好かれる商業施設にしたいですからねぇ! いまこの実現のため、大勢の人が集まっては協議、研究中なんです。どうか皆さん、よい知恵を私どもに貸してください」

連絡:自由が丘デパート事業協同組合 3717-3131

      

         店に舞いこんできた  純白の鳩



 自由が丘のすずかけ通り、白山神社の少し手前に、自然オリーブの専門店「美星堂」。ここにオーナーの垂水重美子さんがいますが、いつ伺っても底抜けに明るく、どなたをも楽しくさせてくれます。

 店内には垂水さん作詞の『オリーブ音頭』の歌が流れ、商品もさることながら、いろんなものが並んでいます。その中に鳥篭があり、作り物の白い鳩がその中に。そのいわれを尋ねたところ、心暖まるお話が……。

 ある日、一羽の鳩が美星堂に飛び込んできて、以来8カ月も窓を開けても飛び立たず、店内で自由に遊んでいました。くちばしはピンク、足が赤で、体が純白――。

人間でいうと高貴な人に当たるそうで、動物は立ち入り禁止の川崎大師本堂にも、この鳩は特別に許可され入れたとか。垂水さんはそれに「伯参」と名付け、毎日とても可愛がっていました。
 ところが、8カ月経ったある朝、澄みわたった青空のもと、飛び立っていきました。







 まるで幸運を運んでくれたかのような伯参との出合い。垂水さんはそれを詩に書き、作曲家・井川裕多加氏がメロディを付け、ビクター・オーケストラの演奏で彼女自身が歌った曲目『春のおとずれ』がレコーディングまでされたのです。


  垂水さんの店で遊んでいた頃の「伯参」

日本では鳩は八幡様の使いといわれ、キリスト教では精霊のシンボル、特に白鳩は純潔の象徴とか

  店:自由が丘3-6-11 美星堂 37242690


 アール・ヌーヴオーの美術館

 自由ケ丘セザームの地下1階に光の花、アール・ヌーヴォーのランプを中心にガラス工芸品をコレクションした「一誠堂美術館」がある。

 館長の川邊忠俊さん(60)は駅前の老舗「一誠堂」の社長であり、約20年前よりアール・ヌーヴォーに魅せられて趣味で収集を始めた。しかし、独り占めするのはもったいないということで、平成2年創業60周年を記念して美術館を開設した。
 展示室は、アール・ヌーヴォーの代表的作者エミール・ガレ、ドーム兄弟、ミューラー、アージー・ルソーなどのガラス工芸品が照明に映えて、この世のものと思えぬ美しさ。
 付属のティーサロン「エミール」での一休みもお勧め。1018時。水曜休館  0337187183



豪華で上品なティーサロン「エミール」

 

 みんなの夢いっぱい
 チルドレン・ミュージアム

 「あっ、サンタクロースが煙突から入ろうとしているよ!」

 そんな子供たちの声が聞こえるファンタジックな建物――それがチルドレン・ミュージアム。大人になっても失いたくない子供の心を大切に、と集まってきた洋服やおもちゃたち。

 自分が主人公の、世界で一冊だけの本も作れるし、月に一度の楽しいイベントも待っている。また、41819日はイースター、535日は子供の日、621日は父の日のカード作り、と毎年みんなが楽しみにしている恒例イベントも。

場所:自由が丘1-25-17 371818855 第3水曜定休





 世界各地の民芸品店、集合!

 駅前ロータリーから大井町線を渡ってまっすぐの所、東横線ガード向かいに「リブレ」はある。ここには、なんと5軒もの民芸品店が集まっているから驚き……。

 地下1階にはアフリカ・インド民芸「パラフォン」、1階には中南米民芸「チチカカ」(年中無休)、2階にはアジア民芸「シャンテイシャンテイ」、3階にはヨーロッパ民芸「アンティキタ」、4階にはインド民芸の大人向け「ドコン」がある。
 どの店にも、布地、アクセサリー、お面、小物等々、思わず手に取りたくなるような物ばかり。土の香りがして、何だか懐かしいような気分で妙に落ち着いてくるから不思議だ。4店は水曜定休。
場所:奥沢5-29-10 リプレチチカカ 37222275



民芸品の殿堂「リブレ」



 外反母趾でお悩みの方へ

 テレビなどでお馴染み、あの「はきやすさ」で有名なホソノが自由が丘南口にオープンして1年。ここには、さまざまな足と靴に悩む人たちが集まってきます。

 「外反母趾(がいはんぼし)」という現象、ご存じですか? 
  足に合わない靴を履き続けていると、親指の所が変形してしまう病気のことです。それ以外にも、いろいろな病気を招いてしまうことさえあるそうですから怖いですね。

足は単なる移動する道具ではなく、全身のコンディションを整える第二の心臓でもあるのだそうです。足が痛い、腰が痛い、肩が凝る……こんなときは、とりあえず靴を疑ってみるべき、とか。

 この店に靴で悩む人が多く集まってくるのは、この悩みに応える靴があるからだそうです。大型店に比べデザインの種類は決して多くはなく、オーソドックスなものが中心ですが、この店独自の木型プラス、豊富なサイズバリエ−ションで足の健康や身休の健康までアドバイスしてくれる。まさに靴に悩む人の強い味方。

連格:奥沢5-28-15 カルツェリアホソノ 37210204

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