編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.848 2016.01.15 掲載 

   WOMAN  PROFILE―――― はつらつ女性



横浜市出身 40歳。学芸大附属高校から国立浜松医科大へとすすむ。ご主人の健二さんとは大学の同級生。十数年の勤務医を経て4年前に「さかきばらクリニック」を開業。2男の母。



  横浜市神奈川区白幡向町
 医療法人社団 若梅会
「さかきばらクリニック」院長

      
榊原映枝さん


 榊原先生には、鮮明に思い出される「死」がる。研修医になったばかりの事だ。その患者さんの病状が安定になってからというもの、先生は病院に泊まり込み、昼夜を共になさっていた。そしてついにお亡くなりになった時、その患者さんの奥様が取りすがって泣いたのは夫にではなく、先生にだった、という。誠意の限りを尽くしてくれた先生に対する、精いっぱいの気持ちだったのだろう。
 医者になって初めて向き合う「死Jであった。20年近くたった今でも忘れることのできない壮烈な思い出だ。この経験が「患者の側に立つ」という今の診療の原点となっているのかもしれない。

「どう、大丈夫?になる患者さんにはつい電話しちゃいます


 白幡向町に開業して4年。「さかきばらクリニック」は白楽駅から徒歩7分ほどの閑静な住宅街の中にある。自宅で開院すれば、まだ小さい我が子との時間もとれるし、「少しはのんびりできるかも」と。ところが、これがとんでもない誤算だった。丁寧な診察と気さくな人柄で人気は上がる一方。とてものんびりどころではない。

 明るく気さくな、面倒見のいいお医者さん

 お昼休みは往診タイム。デパートの紙袋に診察道具を詰めこみ「一人じゃ淋しいから」と看護師さんと一緒にいらっしゃる。いささかの気取りもない。スカッとした応対。ちょっとした病気など吹き飛ばしてくれそうな明るさだ。往診先のほとんどは、体の不自由なお年寄り。心配な患者さんには、夜思わず電話を入れてしまう。「どう、大丈夫?」時には旅先から遠距離電話してしまうことも。こんな面倒見のいいお医者さんはそういるものではない。人気があるのも納得だ。

 「要領が悪くてね」ついつい診察時間が長引いてしまう。映枝先生の病気を見極める眼には定評がある。これをご主人曰く「動物的なカン」と。


 患者さんから心配される忙しさ

一見元気そうでも体から病気のサインを発していることがある。それを見逃さないように、と思うとどうしても長くなる。確かに待つだけのことはある診療である。

 先生の毎日は猛烈にお忙しい。在宅診療もなさっているので、ご自分の時間がほとんどとれない。大好きなテニスや登山ができなくても、仕事をしている時間がとても楽しい。つい我を忘れて患者さんにのめりこんでしまう。倒れなければいいけれど……と逆に患者さんたちに心配されてしまうほどだ。いかに地域の人に愛され、信頼されているか、がよく解る。

 今年の春からは、現状を見かねたご主人が勤務医をやめて手伝ってくれるように。これで夢のように楽になった。
 2人の息子さん(小6・小2)も今のところなんの迷いもなく医学の道を志しておられるとか。頼もしい限りだ。「ほんとになってくれたらラッキー! もうそれだけが生きがいって感じで……」

 先生も仕事を離れればフツーのお母さんだったのデス。ほっ。     (品田みほ)


★平成10年10月25日発行『とうよこ沿線』第71号から転載
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