編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.844 2016.01.12 掲載 

   WOMAN  PROFILE―――― はつらつ女性



川崎市中原区下小田中出身。元ミス川崎。
昭和51年、内藤アカデミー設立。以来夫の幸彦氏と共に地域の子供達の教育に情熱をそそぐ。学童クラスを担当して20年。このクラスに入りたいために引っ越してくる家庭もあるほど。



  川崎市中原区下小田中3丁目
「内藤アカデミー」学童保育担当
 鞄燗。・副社長

  内藤英子さん











 学童保育クラスは
  長男・長女から25男、25女の大家族

川崎市中原区になんともユニークな学習教室がある。なんと体育館付きである。地域の子供たらを心身ともに健康に育てたい……という思いで昭和51年に開校された。

小学1年〜3年の学童保育クラスがこれまた愉快。お母さん先生・お父さん先生に始まって、お兄さんにお姉さん、児童の年齢順に長男から25男、25女までいる大大家族なのである。クリスマス会やお誕生会などのイベントの他に、お泊まり保育だってある。こんなにも家庭的で温かい学童クラスが、東横沿線にあったなんて。この楽しい教室は「内藤アカデミー」。

 内藤英子さんは、この教室を創立なさった内藤幸彦さんの奥様で、この20年間学童クラスのお母さん先生として慕われてきた。子供たちと接することが大変だと思われたことは一度もない。

 子供たちにはいつもエネルギーをもらっている、という。だが一時期、お母さんを独占できないことで、2人のお子さんに淋しい思いをさせてしまったこともあった。そのお嬢さん方も今では、英子さんのよき理解者でアドバイザー。医学生の長女は週に2日ほど英語の講義を受け持ってくれるようになった。


 生徒も職員も常に何かに挑戦

 内藤アカデミーでは生徒だけでなく教える方も常に新しいことに挑戦している。英子さんの今年の目標は、書で再度入選すること、漢字検定の準1級をクリアすることだそう。いつも、いつもプラス思考。子供たちと過ごすこの毎日がとても楽しい。
 「ちょっと見てくださる?」と生徒たちの作品を次々並べて見せてくれる。一つ一つ実に愛しそうに。毎日の子供たちとの弾んだ会話が聞こえてきそう。

 英子さんの毎日はとてもお忙しい。学童の先生のお仕事に加えて、主婦としてのお仕事、学校の役員。ご主人の仕事の関係で海外からのお客様も多いし、教室のイベントには何百人分ものお料理を一手に引き受ける。
 「主人はとても人使いが荒いんです」とおっしゃるお顔は甘く、なごんでいる。労いの言葉を欠かさずかけてくれるというご主人のやさしさが、英子さんを通して見える気がした。







   子供たちにエネルギーをもらっています


  パンチ佐藤も卒業生!

 「実はパンチ佐藤さんも卒業生なんですよ」。
 え〜あのプロ野球オリックスにいた? ふと見るとサイドテーブルの上に元生徒さんからのお便りが所狭しと飾られている。「結婚しました」「子供が生まれました」「転勤から帰ってきました」。パンチ佐藤さんの結婚式の写真もその中に発見。今では家族ぐるみでつきあわれているという。

内藤アカデミーはどうも人生の節目に帰って行きたい心の拠り所であるようだ。こんな学習教室は他にはちょっと見当たらない。ここでは、いじめも非行も無縁である。

     やさしさの魔術師

 肩書きを聞かれるととても困る、と英子さん。家族やアカデミーをただ陰で支えてきた20年間だった。表舞台に立つことはあまりしなかった。だから今日のこの取材も「私なんかでいいのかしら」と。常に一生懸命で前に向かっていらっしゃるその横顔は、まさに「はつらつ女性」そのものだ。普段どおりの装いなのに、言葉も表情もはんなりと美しい。


 聞けば“元ミス川崎”だったとか。どうりで。内面からにじみ出る気品とは、こういうことを言うのだろう。
  お歳は? と失礼ながらうかがうと、「子供たちには28歳ということにしています」といたずらっぼく微笑まれた。
 英子さんは、周りの人を春の陽差しのように包んでしまう不思議な女性だ。

 「子供に育てられ、主人に育てられ、教室の子供たちに育てられ」と繰り返しおっしゃる。職員にも家族にもみんなに恵まれ支えられて今日までやってこられたのだ、とも。しかしその“優しさ光線”を発しているのは実はご自分だということに気がつかれていないのだろうか。

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間あまりの取材で、心がほっかり温(ぬく)んでいた。どうもいつの間にか英子さんの優しさの魔法をかけられてしまっていたようだ……。

             (文:品田みほ)



★平成10年5月30日発行『とうよこ沿線』第70号から転載
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