綱島駅西口から徒歩3分、大型スーパーなどたくさんの新しい店が並ぶ綱島一の繁華街。道を一本入ると、静かな住宅地の中に子供たちの声がします。
ここが来年50周年を迎える尚花愛児園です。現れたのは園長の生稲精子さん。親しみのある笑顔はいかにも陽気で明るそう。
0歳から5歳までの幼児270名を預かっていらっしゃる園長さんの開口一番。
「私自身、働く母親(先代園長)を見て育ち、働きながら子供たちを育てました。ですから今お預かりしている乳幼児たちの保護者の気持ちはよく解ります」。
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園児に梅干し・タクワンの作り方を
とてもそんなご苦労を感じさせない園長さんの育児方針は、
「子供たちは綱島で育つのですから、まず地域の伝統を大切にし、地元の歴史を肌で感じてもらいたいのです。地域の自然も少なくなり情操教育の場が失われてゆくので、それに代るものとして地域の歴史や伝統行事を保育に取り入れました。自然の恵みを感じるために、梅干し、タクワン、みそ、野菜作りなどを体験し、近くを流れる鶴見川の源流から河口までを見学し、雨で始まる水の循環を知るようにしています]。
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伝承遊びや手作り玩具の楽しさも…
園長先生のお話は続き、
「今は一人っ子が多いでしょ。だから私は地域の伝承遊びを大事にしています。伝承遊びは、直接肌をふれあい、人間関係を作るたいへん良い教材です。地域の高齢者(寿令会)の方たちとのふれあいも生まれます。なかには、自然の草木を材料にして自分で作った玩具で遊ぶ楽しさもありますからね。
こうした中から自然の大切さがわかり、公害教育にもつながっていくと思います」
しかしこの保育の推進には、その背後に、
「言い尽くせないほど多くの地域の方々のご協力がありました」と生稲園長。
この保育活動が横浜市から評価され同園は昭和63年に「郷土文化伝承活動」特別保育科目実施園として認定されています。
「見て! 一郎ちゃんが初めて歩いた」「和子ちゃんの歯が生えたわ!」……保母さんたちは大騒ぎ。
この感動の瞬間を保護者に早く伝えたいため各部屋にはビデオが置かれ、すぐに撮れるようにしてあります。
朝7時から夜7時までの延長保育のため、なかなか保護者会がもてません。そこで、『園のたより』を毎月配布して細かい保育記録を保護者に伝えています。
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先代園長の教育方針で、女の子は知識や趣味は浅く広く、と育てられたため現園長は多趣味で、それが保育内容の発想に大きく役立っているそうです。
昭和53年、先代園長伊東きよのさんが急逝。生稲さんは生涯の夢を捨て後継者として「やらねばならぬ」保育者の道を即座に選ばなければならなかったのでした。そして10年後、こんどはご主人がガンで他界。
それが今、乳児室のあどけない赤ちゃんの顔、園庭を飛びまわって遊ぶ園児たちの顔が、生稲さんを「真の保育者」、いえ、それを通り越して「保育馬鹿」にまでしてしまったようです。

園児と遊ぶ生稲さん
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(文 福崎克代)
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