「日本人は日本という概念にとらわれず、もっと世界的な枠で世の中をとらえて、どんどん世界へ出て行ってほしいですね」
と歯切れよく笑顔を絶やさず話す山梨幹子さん、パワフルで輝いている。話していると、こちらまで心が弾んでくる、ふしぎな人です。
ビル6階は北欧伝統工芸のまさに殿堂
彼女はスウェーデン刺繍や織物など同国の文化を初めて日本に広めた人として知られる。昭和58年にその功績が認められスウェーデン国王から最高の栄誉である「勲一等、北極星勲章」を授与されています。
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環七通りに面した柿の木坂にあるスウェーデン織物研究所は6階建て。
エレベーターに乗ると、その中に花瓶に生けた花、こんな小さな空間にも女性らしい心づかいが取材で緊張気味の心をなごませてくれる。2階に下りるとそこは刺繍の材料と北欧の小物などのショップ。木製のインテリアに囲まれた室内は童話の世界を思わせるメルヘンチックなグッズで溢れ、見ているだけで楽しい。3階は全国から泊まりがけで織物を習いに来る生徒さんたちの実技の教室。そこには十数台の大きな織機が並んでいます。全館にスウェーデンや北欧の刺繍・織物・クラフトのハードとソフトがぎっしり詰まった、まさにその殿堂なのです。
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山梨さんは中学3年のときスウェーデン女性と文通を始めました。料理研究家になりたくて、都立大学仏文科を卒業後、食都リヨンへ遊学。その途中、文通相手に会うためスウェーデンにも立ち寄ったのです。
スウェーデン刺繍や文化との出合いはその時。「スウェーデンに行くと、彼女は織物の先生になっていたのよ。当時あちらの印刷物や包み紙などが日本に比べて、とても綺麗なデザイン! それが非常に新鮮に感じたわ」それ以来、山梨さんは彼女からスウェーデン刺繍の基本を習い、その教室を開くまでになったのでした。
それがヒットし都内5カ所に教室を兼ねた材料やクラフト品を販売するショップを出店したり、環七に面した現在地に6階建ての自社ビルを持ったりと、山梨さんは事業をとんとん拍子に成功させていきました。
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世界を飛び回るエネルギーの源は…
さらに今、英国・ロンドンにまで事務所を持っているワケをこう話しています。
「日本の文化をその国々に合うようにアレンジして紹介し、そして英国や北欧の文化を日本に紹介したいわ」
女性の身で世界を舞台に飛び回れるそのバイタリティの源は? と思ったら、
「そうね、庭いじりかしら」との返事。福島県猪苗代に建てた北欧風の山荘に月1度、1週間ほど過ごし、そこで四季折々の花や木を育て、リフレッシュするのだそうだ。このお話の時はとくに満面笑みといった感じで、じつに楽しそう。また、週1回は映画を観るそうで、「今のクリエイティブな人たちが何を求めているかを知るためにも映画は欠かせないのよ」とおっしゃる。
自然と映画をこよなく愛する山梨さん。それが作品にも人柄にも温かさと斬新さを感じさせるのでしょう。
(文・渡辺弘子)
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