名物も時代ととも変わってゆく
開業医 布施徳郎(川崎市中原区井田)
|
私の秘蔵本のなかに『珍味を求めて舌が旅をする』というちょっと変わった題の一冊の本がある。大正13年の日本評論杜の発行で、いわば最近よく出されている「食べ歩き」の本の走りとも言えるものだ。
この中に「奈良茶めしは川崎萬年屋の名物で今でもあるはずだ。川崎大師のあのへんは昔から奈良漬を名産としていたからね」というくだりがあった。
そう言えば大師の門前町では今でも奈良漬が売られている。昔、この辺は水田のひろがる純農村で南部に「川崎宿」があった。米のほか、瓜(うり)の生産もきっと多かったのであろう。
|
|
葛餅(くずもち)が名物のことは知っていたけれど奈良漬もまた名物であったとは……。
奈良漬についてご存じの方がいらっしゃいましたら、お話をぜひ聞かせていただきたいものです。
|
|
|
大失敗になりかけた話
住谷不二男(世田谷区等々力)
|
台湾から、台北での全国集会の席に講演の依頼で招請の話が来たのは11月18日。講演の日は12月7日で、5日羽田発。
|
|
私は5年間有効の数次旅券が83年2月15日まで期限があるのを持っていたので、早速OKの返事をした。
先方から喜んで中華航空の航空券を送ってきたので査証手続きに行ったら、なんと旅券の期限が切れているという。有効期限前3カ月で無効だという。 |
|
|
約束をしたあとで、この事がわかった。国際的な信用にもかかわる。顔色を変えて当惑した。係りの人のさしずで、新しく旅券手続きをし、これが下りたのは出発の3日前、12月3日。この日午前中にビザの手続きをしなければ4日(土曜)に下りない。旅行社に頼んでも間に合わない。あちらこちら駆け回って、予定の4日午前10時、ビザを手にしたときは、心の中で思わず万歳を叫んだ。
世の中のことは全部相手がある。これは国の話であるが、自分がよいと思っても相手が別の考え方をすることがある。
|
|
待ちくたびれた家族
教員 石塚千鶴子(目黒区平町)
|
新潟から出てきて8年目。先日実家の兄に赤ん坊ができた。これを機会に2週間先の土日をかけて、新潟の実家に帰ることにし、連絡したのです。家族は喜び、待っているからという返事。
ところが、その直後都合が悪くなって行けなくなってしまったのですが、それを実家に言おう、言おうと思いなが |
|
|
|
ら、ついに当日まで言いそびれてしまいました。
遠い新潟で暮らす実家の者たちは、私の到着をまだか、まだかと夜中までず〜っと待ち、たくさん用意していた私の好物が冷めきってしまうまで待っていたそうです。翌日の朝、両親に電話すると父の声「もっと人の気持ちを考えて慎重に行動しなさい!」とキビしい一言。つづいて母の声「一生懸命、好物をこしらえて待っていたんだよ。今度から他人に迷惑をかけないようにね。仕事を頑張って!」。それから兄の声も「いいんだよ、今度来いよな! かわいいぞ、赤ちゃん」
もう涙があふれて、ごめんなさいの連発でした。
|
|
信じないおじさんへ
中学1年 中岡奈津美(神奈川区松見町)
|
週3回……私、東白楽の塾に行っているのです。夜7時からですから、帰りはどうしても9時ごろになってしまいます。
ある日、いつものように妙蓮寺駅に着き、家に電話をかけて、さあ急いで帰ろうとするところへ、うす汚いジャンパーを着た太ったおじさんが後ろから話しかけてきました。
「ちょっとお姉ちゃん」「はい?」
「こんなに遅く何してるんだい?」「はぁ?」「早く帰ろうね」
「でも塾に行っていたんですよぉ」「だめだよ、家の人が心配してるよ」「だから今、急いで帰ろうと思ってるんです……」
|
|
「おじさんはここら辺の補導員なの。決して怪しい人じゃないからね。だから早く帰りなさいね」「はぁ、わかりました、さようなら」「はい、さようなら、子供がこんな時間うろうろしてちゃいけないよ、うん」
果たして、あのおじさんは私を信じてくれたのだろうか。私は遊び歩いてなんかいないよ。
おじさん、この文を読んでくださっているでしょうか。
|
|
仲間はずれ
九品仏小3年 池田哲人(世田谷区奥沢)
|
ちかごろ、はらのたつ話といえば、やはり友だちにいじわるされて仲間はずれにされることです。ぼく一人だけ、あそびの仲間に入れてくれなかったりする人がいます。
|
|
わざとぼくと口をきくのをさけたり、ほかの友だちにぼくのわる口をいいふらしたりするやつがいます。そういうときは、ほんとにかなしくなりますが、ぼくはそのときかんがえます。
どうしたら、仲間はずれやいじわるをなくすことができるか、と。
みんな一人一人が自分が仲間はずれにされたときのことをかんがえればいい、とおもいます。
きっと、かなしくなって、また仲よしになるとおもいます。
|
|
|
|
|
|
|
 |
「とうよこ沿線」TOPに戻る |
 |
825編へ |
|
 |
「目次」に戻る |
|
|
|
|
|
|