編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.821 2015.12.13 掲載 
★画像はクリックし拡大してご覧ください。
戦争
百日草の詩(11)
 
本誌「思いつくまま!」
★昭和58年3月1日発行『とうよこ沿線』第15号から転載



  東横鉄道唱歌

 辻村功さんは小さい頃からの鉄道マニアです。
 通学、通勤に東横線を利用してきた辻村さんは、もちろん本会の会員。
 鉄道好きがこうじて駅名を織り込んだ
50番もの東急鉄道唱歌を作詞しました。今回、その中から「東横編」を招介します。

                           投稿:辻村 功(会社員 港北区日吉本町)


 ♪名高き忠犬ハチ公の
  銅像立てる渋谷より
  東横線はヨコハマへ

  急行電車も走るなり

 ♪代官山のトンネルを
  抜ければ並ぶ地下鉄は
   ここより乗入れ日吉まで
  東急電車は千住まで


 ♪祐天上人開山の
  浄土の名刹祐天寺
  碑文谷公園すぎゆけば
  柿の木坂に都立大

 ♪ここで降るるも乗換も
  自由が丘は繁華の地

  城南屈指の賑わいよ
  地名の起源(おこり)は学園に

 ♪ここに開きし渋沢が
  田園調布の街並は

  田園都市の先駆(さきがけ)ぞ
  並木の銀杏も美しき

 ♪夏はすずしき多摩川の
  河原に遊ぶこどもたち
  冬は行手の空遠く
  雪を頂く富士の山


 ♪武歳小杉が元祖なる

  田園そばを賞味せん
  元住吉の車庫すぎて

  石碑は東急発祥地




 ♪日吉の丘に聳ゆるは
  慶応義塾の大校舎
  陸の王者が執る筆の
  しるしの甍(いらか)世に布(し)かん


 ♪綱島温泉あとにして
  渡る流れは鶴見川
  大倉山の梅林に
  うぐいす鳴きて春近し

 ♪車掌に駅名尋ぬれば
  菊名と答えて妙蓮寺
  弁財天は港北の
  七福神のひとつなり

 ♪白楽孝道山花まつり
  すぎて横浜ステーション
  
昔は海のこの土地を
  拓(ひら)きし嘉右衛門(かえもん)高島町

 ♪春咲く花は桜木町
  ながめは野毛山 掃部山(かもんやま)
  伊勢佐木 元町 中華街
  山下公園 氷川丸


        

      坂道の足音
                                   投稿:中島きくよ(クリーニング店経営 港北区綱島西)




筆者の店の前、綱島西口の「柿坂」

 「それぞれの足音を生む冬の坂」

 秋には、庭木等ないこの店の前にも公園から吹き寄せてくる落ち葉が冬の訪れを告げ、春には桜の花びらがガラス窓を貼絵のように飾ってくれる。そんな素晴らしい自然と――、そして様々な味わいをかもし出してくれるちょっと急な坂道――、その坂道に今まで感じたこともなかった人々の足音に私は惹かれてしまったのである。

 「足音に個性の見えも春の風邪」

 人間病気になることも決してマイナスばかりではない。自己を見つめ新しい何かを発見することもある。この句は、風邪をひいて一日中寝込んでしまった時感じたありのままの一句である。

  道路の真上がちょうど寝室になっているので、朝早くから夜遅くまで坂道を行き交う人の足音が、まず頭の中に入ってくる。その足音が捉え方によっては非常に楽しく聞こえてくるのである。


 朝の足音、昼、夜、それぞれ皆違う。

 まして坂道の足音には個性があって表情があってリズミカルで、私はそれ以来足音を聞くのが楽しみの一つになってきた。

 足音なんて、とそう思われるかも知れないが、足音にも四季おりおりの様相を呈し時代をも感じさせてくれる。なかでも冬の朝のラッシュ時の足音が一番好き。まるで交響曲の第三楽章あたりを聞くようで実に盛り上がりを感じる。全身を足に受け、急ぎ早に坂を降りる力のこもった足音がピーンと張った大気にぶつかり、その部分だけがまるで空気を溶かし一条の流れを作っているかのようである。そんな時、にわかに軽快な足音が全体のリズムを割ってスピーディーに飛び込んでくる。タタタタタタ…ちょうど水鳥が水を切っている、そんな情景が見えるようである。

 昼の足音はレガート、笑い声のアンサンブルといった感じ。
 そして夜は実に様々な足音が耳に入ってくる。上り坂になるので朝のような現実感はないが、一つ一つに心が感じられる。まして夜中の足音は一定のリズム感を殆どもたない。その足音の一つ一つに自分の推理を重ねながら消えてゆくまで追ってゆく。

1983年も足音から明けてゆく」

 カランコロン、そんな足音はいつか時代の波から遠ざかってしまった。――その代わりやがてはこの坂にもロボットのあの金属性の足音が聞かれるのも、決して初夢ばかりではないかも知れない。

 「不器用に生きて露置く柿の坂」





                 

        今だから富士山
                                  投稿:一色隆徳(高校生 目黒区中町)


   富士への想い

本誌の前号にも「富士を訪ねて」という記事があって楽しく読ませていただきましたが、現代人の心の中にも、今もってこの霊峰に対する強い関心が残っているようです。かく言う私も富士に惹かれた一人で、富士を見るために一昨年あたりからオートバイに乗って山梨・静岡周辺をまわっています。

   無限のアングル、富士山


 ご存知のように富士は3776bという日本一の高峰で、かつ単独峰ですから、東西南北いかなる方角からも眺めることができるので(何しろ昔は福島から京都まで21都府県で見えたとか…)、そのアングルは無限といえるでしょう。富士五湖と呼ばれる山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖に始まって、八海で有名な忍野、広大な原野の裾野、富士山直下の都市の御殿場、富士、富士宮、富士吉田、太宰治の富嶽百景で有名な御坂峠、迷い込めば出られないという青木ケ原樹海、牧地帯の朝霧高原、天下一の眺めの三ツ峠山、箱根や伊豆地方の眺めも良いものですし、田子の浦や静岡付近の新幹線の車窓で見た人も少なくないでしょう。どこも素晴らしい眺めです。



     富士の魅力とは…

 ところで、富士の魅力とは何でしょうか。優美、華麗、繊細、雄大、気高さ、明るさ、その他いろいろな姿を見せてくれますが、私は壮厳な姿がそれだと思います。
 昨夏に初めて富士に登りましたが、折しも台風の到来でひどい目に遭いました。まさに横なぐりの豪雨にぬれねずみになって、夜更けの頂上へ登りながら、富士が人を寄せつけまいとしているような気がして、恐怖さえ感じました。富士は美しくも厳しいものだと身をもって知ったわけです。

 さて、この号の出る頃はもう春ですね。富士周辺も春は一年中で最ものどかです。河口湖・富士吉田の桜や御殿場の菜の花(いずれも4月下旬が見頃)も素敵ですヨ!
 ドライブにハイキングに出かけてみませんか。

「とうよこ沿線」TOPに戻る 次へ
「目次」に戻る NO.3 「おもいつくまま」へ