編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.816 2015.12.09 掲載 
故郷 わが家の味
NO.3
 
                       ★昭和56年5月1日発行『とうよこ沿線』第5号から転載

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楠本憲吉さんの手づくりの

シャリアピン・ステーキ


作る人:楠本憲吉(俳人・随筆家・緑が丘)

取材・文:吉谷恵美子(主婦・綱島)  写真:三戸田英文(元住吉)
 



 会うなり楠本先生から「どうぞ」と差し出された短冊を手に「わぁ、うれしい!」と喜ぶ吉谷恵美子さん


 ご実家が大阪の老舗料亭「灘万」である楠本さんは、たいへんな食通。俳人として、また随筆家としてのご活躍は周知の通りですが、食べ歩きその他のお仕事で一年の3分の2は旅に出ておられる。

       ◆     ◆

 父の日、母の日、子供の日、敬老の日などには台所に立つこともおありで、ご本人もおっしゃる。
「おふくろの味というのがあるのだから、おやじの味≠ェあっても良いのではないかな。カツオのたたきや、手打ちウドンなどは男の人向きの料理じゃないですかな」。ただし、仕入れと作ることまでで、下ごしらえや後片付けは「苦手でね」と笑われる。

 「男性もたまには台所に入るべきですよ。ダシの取り方ひとつにしてもどんなに大変かというのを見て、奥さんの苦労を知るのもいいことですね」。なんともフェミニストな、うれしいお答え。

 男の料理の神随は、「一つは、T・P・Oにあわせたタイミング。そして二つめは運動神経ですね。これは手先の器用さに通じることで、料理屋などではとくに、調理場で血を見ることは大変なタブーです。ヤケドをしたり、手を切ったりしないためにも運動神経の良さを求めますね」。

 そんなことを伺いながら、先生のお料理の手さばきを拝見。日本料理をご紹介くださるのではと思いきや、意外にもお肉料理……。シャリアピンという声楽家が、帝国ホテルで注文してからこの名が付いたといういきさつのあるステーキ。ぶ厚い、よく使いこんだ鉄のフライパンを持ち、奥さまのエプロンをかけて……。


 シャリアビンステーキ

    <材料>

 半ロース肉       150g
 バター         大さじ2
 王ネギ(みじん切り)  小1個
 王ネギ(おろしたもの) 大さじ1
 さやえんどう(つけ合わせ)100

    <作り方>
@  肉の両面に塩こしょうして皿にとり、おろし玉ねぎをまぶして1時間おく。

Aみじん切り玉ねぎをバターで薄茶色にいため、塩こしょうをしておく。

B厚手のフライパンにバターを熱し、肉を入れ、中火で動かしながら焼き色をつけ、返して裏を焼く。

C皿に盛り、肉の上にAの玉ねぎを平らに広げてのせる。

Dさやえんどうは、ゆでて、バターでいため塩こしょうしてつけ合わせる。

 コンソメスープ

   <作り方>

 牛すね肉400gに水10カップを加え、火にかける。アクを取ってから、人参、玉ねぎ、セロリ、パセリのじく、 ローリエ2,3枚を入れ、コトコト2時間。半量になるまで煮つめる。

 これをフキンでこして、塩こしょうで味つけし、仕上がりに醤油を少々おとす。器に盛りつけてから、パセリのみじん切りをちらす。








グリンピースと野菜の蒸し煮

  <作り方>

 さやつきのグリンピースで300g、これを莢(さや)から出したものと、キャベツのザク切り4分の1個分、それにさいのめ切りの人参2分の1本と玉ねぎ半個、ブツ切りしたベーコンを3枚分。

 これを全部ナベに入れ、細火でしんなりするまで蒸し煮する。ベーコンの味がにじんでなかなかの美味。









「火加減がむずかしんですよ」と料理に熱中する楠本先生


「では、ひとつ、味見してみましょうか」とフォークを手に



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