――昭和17年生まれの駅長さん
初老の太った駅員さんが、私を長谷川さんに紹介してくださった。
「えっ、あの若い方が駅長さん?」
私は先の駅員さんを年格好から、てっきり駅長さんと勘違い。深々とおじぎをしたのです。今までご登場願った駅長さんは、私の観念としての駅長さんタイプが多かったようで。
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新装した南口に立つ長谷川駅長
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東急の駅長さん16人の中で、一番若い駅長さんが、自由が丘駅長、長谷川大二さん。まっ白なYシャツにネクタイをきゅっとしめて、丸の内あたりを足早に歩くエリートサラリーマン風というのが、お会いしての私の第一印象。
事実、乗降人員一日平均22万人。沿線3番目の切符の売り上げがあるという駅のきりもりをしている長谷川さんには、私が勝手にえがくエリート社員としての資質も充分おありになるとお見受けしました。
昭和17年渋谷区原宿生まれ。39歳。昭和39年東急に入社。駅の業務を一通り経験されて、二子玉川園駅の駅長を経て、53年5月に自由が丘駅長に就任。
自由が丘駅は、大井町線との接続駅であり、航空券やホテルの手配などを取り扱う自由が丘駅案内所もある。加えて大井町線緑が丘駅から九品仏駅・尾山台駅・等々力駅・上野毛に至る各駅の管理をかね、これらすべての責任者としての長が、自由が丘駅の駅長さんである。
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――趣味も町なかを歩くこと
お好きなことは本の整理と、近くの住宅街や町なかをぶらりと歩くこと。
上野毛の社宅に奥様と3人のお子様。しかし、自由が丘の街で行事や催し物があれば休日も出勤。「なかなか家庭サービスもできません」
「でも、自由が丘駅は、周りに大きな団地もありませんし、ラッシュ時も他の駅よりはラク。それに乗客が全体的におっとりとしています」
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「聞き役、案内役に徹しなさい」という駅長さん、私にもそうしてくださいました |
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――駅長さんとしての心得は
「安全確保は無論のことですが、聞き役、案内役に徹しなさい」というのが、自分にはもちろんのこと、駅員さんにも日頃言い聞かせていること。「理屈はどうあろうと、乗客の皆様のおっしゃることを、まずお聞きして」
駅員さんから、「おやじさん」とよばれ、町の人たちからは、気軽く、「やあ」と声をかけられる、そんな親しみ易さもお持ちの駅長さんである。
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