編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.809 2015.12.07 掲載 
故郷
駅長訪問
NO.5
菊名駅 平野一(はじめ)駅長の巻
                        ★昭和56年5月1日発行『とうよこ沿線』第5号から転載

文:石井真由美(会社員 港北区新吉田町)   写真:三戸田英文(元住吉)

       花嫁の父となる、ハンサム駅長


 平野駅長――眼鏡の奥のやさしそうな目は、毎日5万人近くの人の命を預かる駅長さんというより、俳優さんのイメージ。


「わたしは東急の職員ですよ! 帽子を見てください」

  昭和21年、東急に入社。35年間、駅の業務、乗務とひと通りの鉄道業務を経験され、駅長に就任されてからは1年3カ月。
 「まだまだ新米ですヨ!」と笑いながらおっしゃるが、なんのなんの、駅長の指示に従う65人の駅員さんは、心から平野さんを慕っている様子。

 ご趣味は? と、ワンパターンの質問に、駅長室の盆栽を指さし、
 「あれですヨ、あれ」と楽しそうに答えてくださった。休みの日は、庭いじりをして過ごしていらっしゃる。
 また、マルチーズを2匹も部屋で飼っている。この犬のことでは、奥様にひどく怒られたそうで、どうやら娘さん2人を加えた、女性上位の明るい家庭らしい。



  しかし根っからの明るい駅長さんにとって、いま一番気がかりなことは、5月に嫁ぐ娘さんのことだそうである。
 「とにかく幸福になってほしいですね。それだけですよ」と淋しそうに、自分自身に言いきかせていた。

 大倉山・妙蓮寺・白楽駅の3駅の駅長兼務


 菊名駅は横浜線との接続駅で、国鉄業務である新幹線の切符予約、航空券やホテルの手配なども取り扱っているほか、ギフトショップや喫茶室『キュート』も営業している。さらに菊名駅だけでなく、大倉山駅・妙蓮寺駅・白楽駅の3駅の駅長も兼務されている。
 その苦労は人並みではない。ゆっくり感傷にひたっている暇もないのでは――。
 「これからは親切をモットーに」とおっしゃるが、まさしくその通り。東横線イコール親切な駅員さんというイメージ、大切にしてほしい。

 「写真を1枚……」と三戸田カメラマンが頼むと、新しい帽子を手にしてくれた駅長さん。私たちの沿線農園≠ナ、今度いっしょに野菜をつくって気分転換、英気を養いませんか?



恋人です!… って言ってもおかしくないでしょ?

 

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