編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.808 2015.12.07 掲載 
故郷
駅長訪問
NO.4
 横浜駅 北原 漠駅長 の巻
                         ★昭和56年3月1日発行『とうよこ沿線』第4号から転載

文:篠崎洋子(主婦 神奈川区上短反町)  

        “横浜駅のおやじさん”



  「おやじさん、ご面会です!」
  若い駅員さんの元気な声。東横線桜木町仮駅舎。車のノイズ入りのノイズ、時たま発車車輌のアナウンス。ちょっとした生活派のロック調、活気が快い。

  親しみのある現場タイプの駅長さん

 北原 漠さん。昭和3年生まれ、52歳。中柄でガッシリとした体躯。見るからに人の命を預る現場タイプで、フチなし眼鏡の官吏さんとは正反対。クルクル活動的な眼をニコニコされると、今日は象さん! という親しみと頼もしさにつつまれる。

 正式な職任は、東京急行電鉄横浜駅、駅長。といっても守備範囲は桜木町・高島町・横浜・反町駅までと極めて広い。昭和20年入社されて、もう35年間の超ベテラン。



桜木町・高島町・横浜・反町と4駅兼務の
北原駅長です

鎌倉の歴史散歩、ゴルフ、撮影会と広い趣味

インタビューの定石通りご趣味は? とお聴きする。 「下手なカメラをぶらさげてですね、ぶらぶら歩いたり若い人たちと話したり」
 鎌倉がお好きと伺いましたが、お寺とか仏像とか?
 「いえ、まあ一般的に歴史が好きでその方面の読書はしてますが、ただそうした意味で鎌倉には五山を始め、妙本寺とか報国寺とか幾つかの切通しに日本史の面影が残っているでしょう。人ごみをさければまだまだ静かな散策道がありますからね」


  楽しさは厳しさを支える“潤滑油”

 「家族的なチームですからね、鉄道の仕事は。ベルが鳴ってコンベアーベルトやコンピューターとにらめっこする生産工場とは意味が違うと思うんですよ。機械はボタンを押してやれば勝手に動いていきます。私たちはそういうわけにはいきません。事故防止.という最も大きな問題一つをとっても、スムーズでチームワークがなければ必ず起きることです。ある意味ではコンピューター以上に厳しい姿勢を駅員の一人一人が持ってなければなりませんよ」
 だからおやじさんなのである。



忙しい合間の取材は、立ち話で…

 「厳しさを確保する潤滑油は楽しさだと思いますよ」と話される。街の喫茶店や鎌倉山の静かな空気をゆったりと味わわれ、若い人たちと世間話に興じたりされる。

  ◇

 昨日は職場の急用炊出しで、おにぎり70個、明日はラーメン30杯と若い人と一緒に弁当を作るおやじさん、今日もニコニコと温かく、そして厳しい。






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