編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.806 2015.12.06 掲載 
故郷
駅長訪問
NO.2
中目黒駅 松田 透駅長 の巻
                        ★昭和55年9月30日発行『とうよこ沿線』第2号から転載

文:殿岡時子(主婦 田園調布)  

       お世話の相手は電車480本と子供たち


 東横線の中でもっとも乗降客の多い中目黒の駅。そのほかに祐天寺・学芸大学・都立大学の3駅も担当する松田駅長をたずねました。



松田 透駅長

  東急の駅長16人中、最古参

 東急の駅長サン全16人のなかで最古参の松田さん。入社は昭和14年、14歳のとき。当時現役だった兄君の生活ぶり見ていて、
 「カメラぶらさげ、好きな旅行ができるのではないか、と思った」のが動機。
 駅長としてのキャリアは、目蒲線の武蔵小山をスタートに、目黒、蒲田、つづいて日吉から中目黒へ、まもなく
10年になろうとしています。

 ご出身は世田谷区若林。現在は田園都市線長津田に夫人との2人暮らし。2人の娘さんはすでに嫁ぎ、お孫さんが3人。

    休日は子供会会長で多忙

  休日は、町内の“子供会会長”として少年野球の監督に、水泳、キャンプに。夏休みには映画会やサーカス、子どもの国の野外料理……と目白押しのスケジュールをこなす、やさしいおじさま。子どもたちに話が及ぶと、目を細めてそれは嬉しそうなお顔をなさる。お休みのたび、子どもたちに狩り出されては、奥さまがおさびしいのではと思いきや、「家内は手芸に凝っていて、いろいろ創作しては人にあげるのが楽しみなんですよ」とまたまたやさしい目が笑いました。


 任務中のご苦労話を、と伺ったら、
 「東横線のお客さんは、交通道徳が身についていて、整列乗車もキチンと守ります。その点、私たちの仕事は大変やり易いですよ」
 とのお言葉でした。
 「ごくたまに、酔客がホームから落ち、引き上げるのに駅員数人がかりというハプニングも……」。でも、不思議とこれまでに怪我はなく、事故にも至らずに済んだということです。



仕事中も笑顔を忘れない駅長さん

 見守るのは乗換え客13万人に電車840

  一日に、上り(渋谷行)329本、下り(通過含み)326本、営団地下鉄(中目黒発)185本、と日比谷線乗り入れ地点でもあるため、地下鉄への乗りかえ客がおよそ13万人。これで、トラブルもなく無事を保っていられるのは、乗客のマナーの良さもさることながら、陰に日頃の努力の積み重ねがあってのこととお見受けする。

 「車輌関係の向上はもちろんですが、鉄道はサービス業。物的、人的サービスにもっと努めねば、と考えています。オ早ウゴザイマス、有難ウゴザイマスのひと声運動など、誠意と協調の精神を心がけていくことが大切。それが結果として、無事故で気持ちよく乗れる電車になるのでは……。そうすれば運賃値上げの歯止めにもなって、みなが幸せというわけです」。

 こう、ニコニコして語られるなごやかな人柄が、もう一人の松田助役以下スタッフの駅員さんたちの明るさに波及している。そんなことを確信いたしました。

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