編集:岩田忠利 / 編集支援:タイトルロゴ:阿部匡宏
NO.802 2015.12.06 掲載 
故郷
NO.5
誠意情熱になる
 
日頃見慣れた仕事をされている人たちに仕事の内幕を語ってもらうページです

 ★昭和60年6月1日発行『とうよこ沿線』第28号から転載

文・..写真:一色隆徳(祐天寺) 
  
  ハングリータイガー元住吉店
   料理長 近藤胸一さん


   100人もの行列ができる人気店

 ステーキハウス「ハングリータイガー元住吉店」は、いつ行っても大盛況。
  ガラス張り、高い天井――店内は明るく広くモダンな造りだが、木をふんだんに使っているので、ファミリーレストランのような空虚さはない。
 人気は牛肉100%のハンバーグステーキ、土・日ともなると、100人もの順番待ちの列ができるというから凄い。都内からも多くの常連を呼び寄せる味の仕掛人が、料理長の近藤胸一さん、その人。

たいへん温厚な人で、笑顔がまた実にいい。客席正面のオープンキッチンで肉を焼く表情は明るいが、それでいてプロの迫力″が伝わってくる。
 「誠意と情熱を形にして、お客様にお出しするんです。やっぱりおいしい料理を食べていただきたいし、また、それは料理人の義務であり、存在理由でもあるわけです。料理ってものは、ウマくて当たり前、マズけりゃ詐欺だと思いますね」
  と近藤さん。この心意気が最高の味を作りだす第一歩と言えそうだ。それを前提に、さらに技術的なもの――いわゆる“腕”が要求されるのかもしれない。

肉の焼き方“違いが分からない”その極意

 「御覧のとおり、荒びき肉を丸めて塩・コショウして焼くだけです。極めて単純です。吟味された良い材料を使って、単純に料理する――これが一番うまいんですよ。フランスあたりでもそういった動向があるようです」

 
 確かに、一見した限りでは他店と特別異った点は感じられない。
 「無造作に焼いているように見えるでしょう? でもね、肉を裏返すだけでも、なかなか難しいんですよ。それから、焼度は同じでも、その日の肉質の微妙な違いなんかでも味が変ってくるんですね。あらゆる条件の中で、いつでも均一のおいしさに仕上げることが大切なんです」




  記事を書くためには、やはり実際に食べて見るべきだ! と一人合点。かくしてテーブルに運ばれたハンバーグステーキは掛値なしに「うまい」ものだった。その旨を伝えると、「味ではどこの店にも負けない自信があります」
 と、胸を叩いて答えてくれた。
 近藤さんも家に帰れば2女の父。意外なことに料理はしないそうで、「家では女房が料理長ですから……」と微笑んだ。


    近藤胸一(こんどうむねかず)さん

宮崎県出身。横浜・戸塚の高校へ。10代で料理の業界に入り、昭和51年「ハングリータイガー」入社。同55年、元住吉店オープン時に今の職場に移る。戸塚の自宅ではマイホームパパ。32

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