呼べばいつでもピーポーピーポーと駆けつけてくれる頼みの綱。なぜか食事時になると出動の声がかかることが多いそうだ。「おかげで好物の麺類が食べられないので困る」という。
交通事故より多い急病の搬送
幹線道路が多い地区だから交通事故が大半、かと思うと「60%が急病」だそうで、そのうち半分は入院不要のケース。それでもいつも心掛けていることは「どんな人も皆、九死に一生を得る思いで呼ぶのだから、どんな軽くても意思に沿うような対処を」。
ただ困るのは病院でも暴れる酔っぱらい。それと「どうしても〇〇病院へ!」と命令する人。なぜなら各管轄ごとに近くの救急指定病院がいくつか決められていて、遠くの病院を指定されると搬送中、自分の管轄内に救急車不在になってしまうから。その間、大事故が起きたらどうします? そう思ったら各病院勤務の先生、ベッド数をちゃんとコンピューターによって知っている救急隊長の判断に任せましょう。
最近は救急車内での応急技術のレベルアップにより一命をとりとめることも多い。後日お札を言ってきたりしてくれると「こっちは任務だと思ってしたまでなのに、ほっと心が温まるね」と。
医者より多くの“急患”を診る
今や医者より多くの患者を診てきた尾方さん、昔は失敗談も。
「高輪署で隊長として初出動した時、患者さんに『慶応病院まで』と言われ、とっさに三田に慶応大学があったことを思い出したんだよね。で、慶応の門に救急車ごと乗り込んでしまって警備員にも患者さんにも叱られたっけ」とか。
それから真行寺さんが一言。「どう見てもご年配の女性に親しみを込めて『おばあちゃん』って言うとおこられたりするんだ。孫もいないからおばあさんじゃないってね…」。
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出動は一日に平均10件弱
お二人とも実に多趣味。「休日は仕事のことは忘れていたい」というのもわかる気がする。
3日に1度は24時間待機。朝8時40分に勤務が終わり、そのまま訓練指導に出ることも多々。
一日の出動は平均10件弱。月に数度は無惨な状況に遭遇する。「この仕事、やめたら気が抜けてポックリ、かもしれないね」と。
数日後、私が訪れたら前の取材以来出動がないとか。
「でも忙しくないっていうのは、いいことなんだよね」とニッコリ。
真行寺四郎(しんぎょうじ しろう)さん
大井消防署を経て昭和52年に東調布消防署へ。第3部自称「中年トリオ」の隊長であり、大ベテランのご長老。趣味は写真・書道。横浜在住。47歳
尾方俊之さん
大井・高輪消防署を経て昭和52年に東調布へ。ポンプ・はしご車隊員から救急隊に入って12年目。学校・町会の救急指導の人気者。川崎在住。38歳
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