編集:岩田忠利 / 編集支援:タイトルロゴ:阿部匡宏
NO.800 2015.12.05 掲載 
故郷
NO.3
どんな出逢いにも笑顔で…
 
日頃見慣れた仕事をされている人たちに仕事の内幕を語ってもらうページです

 ★昭和60年2月1日発行『とうよこ沿線』第26号から転載

文:桑原芳哉(大倉山) 文:一色隆徳(祐天寺)
  
横浜駅西口・シアル 案内係
 村上かおりさん/阿部由美子さん/福地由紀子さん

  午前10時。「いらっしやいませ」。赤いユニフォームが迎えてくれる。横浜駅西口「シァルの一日が始まる。

 “ロシアル”ってどこ?

 「レストランは何階?」「子どもの靴を見たいんだけど…」「コインロッカーはどこ?」――いろいろな質問にてきぱきと答える案内係の皆さん。なかには、おかしなことを聞いてくるお客もいることだろう。

「『六本木へ行きたいんだけど…』なんて尋ねられますね。それでも、できるだけお教えするんですよ」
 「最近おもしろかったのは、『ロシアル』ってここですか、とか。『横浜西口・シァル』が『横浜西・ロシアル』だと思われていたんですね」。こんな時は「笑いをこらえるのに必死」という。

困るのは、「コーヒーのおいしい店はどこ?」とか、「どのレコード屋さんがいいかしら」といった質問。「シァル」には、多くの店がテナントとしてはいっているので、特定の店を「おいしい店」として紹介することはできないそうだ。
 「初めの頃は、お店の名前も場所もわからなくて、いつもパンフレットを見ながら、でした」と3人は口をそろえる。でも今は、そんなことはないので、ご安心を。

「上にまいります」で下に

 シースルーエレベーター″をはじめ、3基あるエレベーターも案内係の持ち場。こちらでも、初めの頃は失敗があったのでは……。
 「上にまいります、と言いながら、下(▼)のボタンを押して、そのまま下に行ったり。お客様の話が聞こえて、案内そっちのけで、ついその話に加わったり……」
 2、3人でご利用の時も、エレベーターの中ではできればお話は止めていただきたい、というのが3人のお願い。ほかのお客様の声が聞こえないこともあるそうだ。

狭い密室に女性がひとり。変なお客もいるような気もするが…。
 「いますよー。夏、“ビアテラス”が開いている時など、団体に囲まれたり…。酔ったお客様は、やはり困ります」



 「後ろにぴったりくっついてきたり、いつまでたっても降りないで、上ったり下ったりを繰り返す方も。こんな人は、乗ってほしくない、と思います」
 「でもたまには、降りてほしくない、と思うようなお客様もいます。たまに、ですけど……」それがきっかけで…なんて話は、あまり聞いたことがない、とのこと。

   毎日ちがう“出逢い”

 敬語の使い方やマナーなど、この仕事をしていると、ふだんの生活にもプラスになるところが大きい、というのが3人の共通した考え。
 「家にお客様が見えたり、道で何か聞かれたりした時でも、とっさに敬語が使えるようになりました。前は『そうですでございます』なんて言ってましたけど」
  
  毎日ちがう出逢いがあって楽しい、とも言う。
 「いろんなお客様がおいでになって、変化もあり、刺激になります。ほかのデパートなどに行っても、つい、目は案内係にいきますね、自分たちの方がいい、とか思ったりして」
 いつも心がけていることは、「どんな小さなことでも、ていねいに」「お客様の立場になって」「笑顔を絶やさずに」といったこと。
 簡単そうでこれはむずかしい。酔ったお客や、いやらしいお客にも笑顔で応対。これは大変な仕事人″だ。

       ☆     ☆

 夜8時半。「またのお越しをお待ちしています」。赤いユニフォームの一日も、終わろうとしている。


 村上かおりさん

横須賀市にお住まい。事務の仕事から「変化を求めて」転身。21

  阿部由美子さん

茅ヶ崎市にお住まい。ジョーのナレーションなどを勤め、「お客様と接するのが好き」で入社。25

  福地由紀子さん

 横浜市旭区にお住まい。ピアノ教師から、「たくさんの人とふれあえる」と。この仕事に。25

 昭和5711月、横浜駅西口「ステーションビル」が「シアル」に改装したのを機に、皆さん入社。店内案内にエレベーターに、赤いユニフォームが目立ちます。

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