われわれは、中辛・7倍・20倍をそれぞれ注文した。中辛は、ごくふつうの辛さ、7倍が一般人の限界といわれているので、20倍がどの程度か読者も想像がつくのではないだろうか。
私・Yは、7倍にチャレンジする。さすがに一般人にとっての限界といわれるだけあって、かなりの手ごたえだ。口の中がヒリヒリと痛む。20倍に挑戦しているHaを見ていると、なんと「うまいですね」などとニタニタしながら食っているではないか! こいつの舌はどうなってるんだろう。Haは、あっさり一皿たいらげてしまった。私は、このままでは引き下がれない。さっそく20倍を食ってみることにした。
運ばれてきたルーを見ても、他のカレーとなんら変わるところはない。
ところが、ひとたびそれを口へ運んだとたん、このやさしげなカレールーは鷹の爪をむき出した、辛いなんてものじゃない。まるで口の中を熊手でひっかき回されているようだ。油汗が流れ、全身がふるえる。
苦闘の末、残りが4分の1ほどになったとき、私はダウンした。
それを待っていたかのようにHaは、「もらっちゃっていいですか?」と尋ねるやいなや、私の皿を取りあげ、ペロリと食ってしまった。
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自分の皿だけでなく私の皿までたいらげ、
イバるHa |
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マスターとその奥さんも、「こんなに余裕をもって食べる人は初めてですよ。ふつうは息もつかずにイッキに食べるのがコツなんですけどねえ」とビックリ。
Haは、例によってニタニタ笑いつつ、「次は20倍の大盛りを5杯食べますよ」と宣言した。
マスターの顔が青ざめたことは言うまでもない。
文:山本裕二(妙蓮寺・大学生)
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