編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
NO.755 2015.11.15 掲載 
戦争
裕二の
東西 比較文化論
第1回
 
            文:山本 裕二(平塚・本誌編集委員・会社員)  

                    ★昭和61年7月10日発行『とうよこ沿線』第34号から転載

 私は九州・佐賀に生まれ、以来24年間のうち、16年間を佐賀で過ごしました。その後、横浜の大学に4年間通い、この春就職して滋賀県長浜市に1カ月半生活し、現在は神奈川県平塚市に住んでいます。

 日本は狭いと言いますが、気をつけて観察すると風俗や習慣が東日本と西日本ではかなり異なっていることが分かります。その相違点をいくつか拾ってみました。


 バカとアホと

 「アホちゃいまんねん、パーでんねん」という言葉が最近流行したようですが、近畿地方の人々は、「アホ!」と言われても本気で怒ったりはしません。どこか親しみのある表現なのです。その反面、「バカ!」と言われるとケンカになってしまいます。これは、相手の人格を完全に否定してしまう言葉なのです。

 このことは、東京の人が友人に向かって「君ってバカだなあ」と親しみをこめて言うのと対照的だと思うのですが、いかがでしょうか?

家賃と敷金と

 不動産屋のガラス戸に賃貸マンションやアパートの紹介を書いた紙がたくさん貼ってありますね。この沿線では、敷金が家賃の12か月分ということが多いようです。

ところが京阪神地方では、家賃の20カ月分もの敷金を取られるのです。



イラスト:
高田信治

61間のアパートで50万円の敷金を払わされることもあるのです。その分、家賃は比轍的安く抑えられています。6畳・台所・3畳・トイレ付きで2万円程度と、この東横沿線と比べると約1万円は安いですね。
 この違いは、家主の考え方の差をはっきり表していると思われます。敷金は、引き払うときに間借り人に返却されるものですが、関西の家主は、「同一人物に長く貸し続ける」ことを前提とし、預かった敷金を運用して、金利を稼ごうとしているのです。うまくいけば大きく稼げますが、かなりのリスクもあるわけです。反対に、こちらの家主は、敷金よりも月月の家賃で、安全かつ確実に稼ごうと考えているんですね。彼らにとって敷金とは、夜逃げされたときの保証金ぐらいの意味しかないようです。

 プラットホームと乗客と

 大阪の地下鉄の乗車マナーは最低だと言われています。ラッシュアワーでさえも、ホームには人が“均等に分布”し、電車が着くといっせいに乗車口に集まるのです。
 こちらでは、程度の差があるにせよ、ラッシュアワーには整列乗車が守られていますね。どうしてこのような違いが起こるのか、私にはわかりませんが……。

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