編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏
                                   NO.754  2015.11.15 掲載
紀行  寄稿 東京都知事・鈴木俊一

 
 年のはじめに思うこと

                     昭和57年1月1日発行『とうよこ沿線』第9号から転載


 『とうよこ沿線』の読者のみなさん、1982年、あけましておめでとうございます。

 東京都知事になって3回目の年頭にあたり「この東京をどのようにして、より良いまち≠ノしていくか」を考えますと、毎年のことではありますが、身のひきしまる思いがいたします。

 昨年は『マイタウン東京元年』

 私は、昨年『マイタウン東京元年』を宣言いたしました。

 

「安心して生き生きとくらせるまち東京≠めざして、みんなの力を合わせていくならば、ふるさとと呼べるまち東京≠ェ、きっと、実現できる。この実現にむけてお互いに歩みましょう」と都民のみなさんに呼びかけたのです。そして、東京都は、総額3兆余円にのぼる、向こう3カ年のマイタウン東京総合実施計画を策定しました。今年は、さらに、これらに長期的視点を加え、21世紀をめざすまちづくりの方策をうちだしたいと考えております。

 こうしたまちづくりの方向を考えるにあたって、私は、常々、開放的で市民の主体性に支えられたコミュニティ≠ェ、その根底におかれなければならないと思っております。「参加とふれあいに支えられた地域社会」――これこそ、マイタウン東京の原点であり、地方自治の源泉であると思うからです。

 ただ、東京をはじめ、かつて激しい都市化の波に洗われた首都圏の多くの地域では、コミュニティの形成、発展が、なかなかむずかしい面をもっていることも、私は存じております。
 しかし、今日、人口の流動現象はある程度沈静化し、人々の定住指向が徐々に強まってきていることも事実です。そして、このような傾向に呼応するように、自分たちのまちは自分たちの手で“すみよいわがまち”にしていこうという力強い芽が、各地でもえ出ています。ほんとうに心強いかぎりです。

『とうよこ沿線』のようなコミュニティ・メディアに期待

このところ、『とうよこ沿線』のようなタウン誌や、ミニコミ誌などが、各地で盛んに出版されるようになりました。コミュニティ・メディアとしてのこうした小雑誌の発展は、まちづくり活動のバロメーターとして位置づけられると思います。
 東京都は、昨年11月、関係のみなさんと語らって、『いま、コミュニティと小雑誌を考える』と題するシンポジウムを行いました。いろんな角度から幅広い問題提起がなされ、たいへん有意義であったわけですが、同時に、みなさん方のご苦労も理解することができました。

 今後、技術革新が進む中で、新しいコミュニティ・メディアの誕生も考えられていくことでしょうが、そうであっても、タウン誌、ミニコミ誌などの雑誌が、コミュニティの形成、発展に与える影響は計り知れないものがあると考えます。また、雑誌の発行に寄せられるみなさんのエネルギーこそが、コミュニティを活性化する原動力であると思います。そうした意味からも『とうよこ沿線』が、一層充実したものになってほしいと願っています。

  東横沿線住民の一人として

 私は、ふだん、渋谷の東京都知事公館に住んでおります。このたび、誌面をとおし、東横沿線住民の一人として、また、東京都知事として、広く東横線沿線の都民と神奈川県民のみなさんにごあいさつができますことを心からうれしく思います。
 今後、私たちのまちをより良いものにしていくためには、東京・神奈川両自治体の連携に加えて、東京都民・神奈川県民ひとりひとりのみなさんの心の交流が何よりも望まれます。
 「心のふれあいのあるまちづくり」をみなさんと一諸にやっていきたい、そう心から期待しまして、新年のごあいさつといたします。

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