ちょうど今ごろですと、縁日、夏祭り、縁台将棋……。そこには大人も子どももみんな一緒になった、世代、年齢を越えた人間同士の交流がありました。
ところが皮肉なことに、衣食に追われなくなり物が豊かになるにしたがって、こうした生活環境、人間関係が失なわれてきました。「人間の欲望は、豊かさとともに膨張する」と言われますが、何か空しく、さみしく思うのは私ばかりではないと存じます。
現代の風潮
私は、今こそ物量優先、効率第一、なんでも数量化して評価する、そうした経済の論理に引きづられたような社会のシステム、風潮を見直していかなくてはならないと思います。
私は、そこに今私たちが当面しているいろいろな問題を解く一つのカギがひそんでいると考えます。もちろん、私は単に「昔は良かった」と、時代を逆もどりさせれば良いなどと考えているわけではありません。いやそれは不可能ですし、好ましいことばかりではないでしょう。ただ、私はあたたかい心の通い合う近隣社会をとりもどしたいと思います。そうした社会こそ生きる喜びのある社会ではないでしょうか。私が県民の皆さんに「ともしび運動」や「ふるさとまつり」を呼びかけ、また「地方の時代」を全国に提唱いたしましたのもそうした考えからです。
700万県民時代
ご承知のように、今年秋ごろになると存じますが、神奈川県は人口700万人時代を迎えます。
700万人といえば優に一国の人口(スイス633万人、オーストリア752万人、デンマーク509万人)に匹敵するわけで、私はあらためて責任の重さを感じます。と同時に、700万人が働き憩う福祉神奈川づくりの決意を新たにしているところです。しかし、率直に申して、行政にできることには限界があります。お金をつぎこみ、福祉施設や制度を整えれば福祉社会が実現するというものではありません。福祉に血を通わせ、魂をふきこむのは県民の皆さんです。
このことは、街づくりの場合でも同様です。と申しますより、住みよい街づくりには広い意味で福祉の精神が貫かれていなくてはならないと存じます。
地域の皆さんが、個性と創意を発揮し、多様を生かした街づくりを進めていくこと。みんなが参加し、協力する。ときには気に沿わないことがあっても我慢する。そんな地域の皆さんの参加と連帯こそ、福祉社会、住みよい街づくりの出発点でありましょう。また、そうした主体性のある参加と連帯は、民主主義を活性化させ、地方自治を守り育てていくことでもあると私は信じます。
『とうよこ沿線』活動を外部にも向けて
皆さんが『とうよこ沿線』に寄せられた力をお貸し下さい。企画、取材、編集、そして校正等々、私も経験があるのでわかりますが、大変なことと存じます。ぜひその力を外に向かっても発揮していただきたいと思います。
私も大きな時代の流れをしっかりと踏まえ、地方自治の新しい可能性を探求してまいります。
『とうよこ沿線』の皆さん、ともに子や孫に誇れるふるさと神奈川をつくってまいりましょう。
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