編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.707 2015.06.27 掲載
NO.4

    オカマショーの巻

             
  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”

   掲載記事:昭和58年5月1日発行本誌No.16  号名「柏」


アルメル・マンジュノ

(フランス人、日吉在住)

NHKラジオ・
フランス語講座講師


アテネフランセ・
フランス語教師

   

もうこの連載も4回目。ストリップ、ポルノ、ラブホテルはもう取りあげたので、今回は取材先を決めるのにひと苦労でした。まだトルコ(風呂)に行ってないですって!?
  いくら何でも女の私がトルコに行くのはねえ…。それで、ひとまず渋谷のノゾキ劇場に行くことにしました。
 ところがどこへ行っても、出演希望者に間違われ、お客として来たんだと言うと、「およしになった方が…」と断られてしまうのです。仕方がないので、女性でも気軽に行ける歌舞伎町のオカマショーに決めました。




おすすめしたい日本のオカマショー

   男とは思えない美人ぞろい

目的の店は、なんとチャイコフスキーの有名なバレエ曲の名前が付いていました(ただし鳥の色が白から黒に変わっている)。入り口には出演者の顔写真が貼ってあり、それを見ながら、−番可愛いいのはトマトちゃん、一番きれいなのはラフーちゃんかな、としばしうっとり。

 天井の低い店内には、小さなステージがあり、それを取り囲むように席が並んでいます。ショーが始まる前にまず腹ごしらえ。メニューは主に中華で、料理と飲物を必ず一つずつ取るシステム。店の雰囲気にぴったりの、ホテルの守衛みたいな制服を着た上品なウエイターたちが、テキパキと給仕してくれます。お客様は大部分が若いOL風の3〜4人のグループです。店内はショーを待ちわびる彼女たちの熱気でムンムンしています。

 さて、ついにスポットライトがつき、クラシックバレエの衣裳の踊り子が6人、しゃなりしゃなりと登場してショーが始まります。踊り子の、男とは思えぬ美しさに驚くばかり。特にラブちゃんは見事に化けているので思わずゴックン。背中や太ももはボリショイ・バレエ団のプリマも顔負けの美しさです。



 幕開けのダンスが終わると、いろいろなナンバーが矢継早に演じられます。踊り子たちは、純白のドレスから和服まで、さまざまな衣裳で登場し、それに合わせてドナルド・ダックの声やお経が流れるのです。テーマ音楽にのってスーパーマンまで現れました。
 こんな所まで日本の折衷主義が入りこんでいるのでしょうか。1回のショーは約45分で、最後は、フレンチカンカンの格好で踊り子みんながステージにのぼり、終わりになります。
  45分じゃ短いなあと感じるほど、滑稽で、活気があり、子供っぽい所はあるけれども、けっして下品ではありません。

   外国人よ、ぜひオカマショーへ!

 日本を訪れる外国人は、一度こういう所へ足を運ぶべきです。そうすれば、日本人がマスコミで紹介されているような感情のない仕事人間ではなく、ふざけあったり、笑ったり、人生を楽しむことを知っているということが分かるはずです。
 さらに、日本社会は、キリスト教とブルジョア精神のタブーに縛られたフランスなどより、変態性欲に対して大変寛大なことを認めるでしょう。そして、日本人の顔は、映画でお馴染の三船敏郎のような剛健で、少々恐ろしい武士の顔や、政治漫画の中のメガネを掛けたサラリーマンの顔は必ずしも一致しないことに驚くでしょう。 日本人の顔は非常に女性的だったり、性別の特徴が曖昧だったりすることが多いのです。これをうまく利用したのが沢田研二で、在日外国人女性の間で大変人気があります。

 ところで、私は外国人だけにオカマショーを勧めているわけではありませんよ。皆さんもぜひ一度愉快なひとときを過ごしに出かけてみませんか。

 日曜日を除き、毎晩8時と10時の2回公演。1回目の公演が実際に始まるのは8時20分頃ですが、7時45分頃までに行った方がよさそうです。特別な服装をして行く必要は全くありませんが、お好きな方は、男装、女装、中性装、どれでもご自由に……。

  イラスト:石橋富士子(横浜)

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