もちろん女性客は私だけ・・・
最初の取材先が、東横沿線のちょうど真ん中あたりにある「○○ストリップ劇場」――。夜空に赤いイルミネーションがつき、大相撲の国技館のように何本も細く長い旗がたなびく劇場のゲートを、私は勇気を出してくぐり抜けました。
まず入場料が高いのには驚いた。1人さま4,000エン。さぞかし劇場内は立派で、少なくとも座り心地のいい椅子があると思っていました。ところが、なんと倉庫に毛の生えた程度。まるであわてて建てたサーカス小屋みたいでした。
劇場内に入ると、30人ほどの観客。私みたいな女性客はここには何年も来ないのか、みんなが私の顔をジロジロながめるのです。周りを見ても女性客は一人もいない。私は背筋に氷をあてられたような恥かしさ。
音楽は耳もとでバケツをたたくようにボリュームいっぱい。踊子さんたちは、ヴィーナスというにはほど遠いけれども、プロ根性を見せてその音楽に合わせ一生懸命熱演していました。でも、どの踊子さんたちも同じようなパターンで、ステレオタイプの演技。2、3人目の踊子さんからはその先の演技が読めてしまうのです。ですから、意外性への期待が薄れて興味はぜんぜん湧かない。
しかし、それなのに観客は、みんな大人しく、真剣で、まるで新劇でも見ているようでした。こういう場合のフランス人なら、もっとリラックスして笑いや野次を飛ばし、踊子さんと一体となって楽しむことでしょう。反対に日本のストリップは、学生がちょうど解剖学の授業を受けているみたいです(とくに女性のアノ部分を中心に……)。
会場のあちこちに居眠りする人や舞台と反対方向を向いている人たちがいる様子を見ると、観客すべてが楽しんでいるようには見えませんでした。若い人たちがグループでビールでも飲みながら、おもしろおかしく騒ぎに来るような図を私は想像していたのです。
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日仏ストリップの違いは…
一般に外国人は、もしこうしたストリップ劇場が日本に存在していると知ったならば、それは日本人がほかの国民にくらべてセックスに対してフラストレーションが強いからだと思いがちです。しかし、私はこうした紋切型の考えには反対です。むしろ日本は消費天国なのでセックスといえども産業として立派に成り立つのだと考えたいのです。
ともあれ、私は日本のストリップのことはもちろん以前から聞いて知っていました。けれども、先日実際に見てみると、それははるかに自分の想像を超えたものでした。とくにショーの中身はその最たるもの。とてもここで紹介するだけの勇気が私にはないので割愛しますが、エロ、グロ、ナンセンスとしか言いようがありません。

陽気なフランス |
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暗い日本 |
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肌は首筋しか見せなかったという大和撫子(やまとなでしこ)の時代からみると、ずいぶん変わりましたねえ、ニッポンの女性は……。
イラスト:石橋富士子(横浜)
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