編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏 / ロゴ:配野美矢子
NO.623 2015.05.05 掲載
 沿線のささやかな自然を訪ねて  B 

      鶴見川のユリカモメ

               絵・文・地図:西尾真理子(イラストレーター  白楽


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:平成4年4月20日発行本誌No.56 号名「椒」

   

 

ユーラシアの温帯から亜寒帯にかけて広く繁殖するユリカモメは、10月頃日本列島へ渡ってくる冬鳥で、新緑の5月頃に帰ってゆく。

全長は約40センチ、白い優雅な姿に、くちばしと脚の赤が美しい。冬羽では目の後方に黒斑があり、夏羽では頭部が黒くなる。

 「名にし負はば、いざ言問うはむ都鳥……」と在原業平が隅田川で詠んだという和歌にちなんで「東京都の鳥」に指定されているが、雑食性でゴミ捨て場などを採餌場にしているためか、東京での人気はいま一つ。それにひきかえ京都では、川がきれいになってきた頃、姿を現わしたため市民に愛され、京の冬の風物詩とまでいわれている。

 港北区大曽根台に住む井上 幹さんは、10年ほど前から、鶴見川の大綱橋近くでユリカモメの餌付けを始めた。当初少なかったユリカモメも、年々数が増え、井上さんが川岸に現われると、300羽もの乱舞を見ることができたそうだ。が、残念ながら、今年は50羽ほどしか見られない。しかし、風の中に浮かぶ清楚な白い姿は、日頃の喧騒を、しばし忘れさせてくれる。

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