編集:岩田忠利 / 編集支援:阿部匡宏 / ロゴ:配野美矢子
NO.621 2015.05.05 掲載 
 沿線のささやかな自然を訪ねて  @ 

     菊名池のアイドルたち

                 絵・文・地図西尾真理子(イラストレーター  白楽


  沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”


   掲載記事:平成3年8月1日発行本誌No.54 号名「榛」

   
 

   バンの親子

 妙蓮寺駅近くの菊名池公園には、3分の1ガマの群落におおわれた3000平方bほどの池があり、水鳥のバンの夫婦が子育てをしています。
 バンはヤンバルクイナの仲間で、水掻きはありませんが、首を前後に揺すりながら可愛く上手に泳ぎます。大きさは鳩ほどで、黒っぽい体に真っ赤なクチバシ、お尻と側面の白斑、黄緑色の長い脚、脚の付け根の赤いポイント、となかなか美しい鳥です。

 近くにお住まいの獨協大生物学講師・菅野徹さんによると、バンが同池で子育てをするのは今年で4年目、330日に一番雛6羽、515日に二番雛9羽が生まれたそうです。

 天気の良いお昼前後に池を訪ねてみると、色鮮やかな親鳥の隣で、白っぽい褐色の一番雛が餌をついばんだり、水浴びをしながらはしゃぎ回ったりしています。茂ったガマの間から姿を見せた二番雛は、赤い小さなクチバシをつけた真っ黒な毛糸玉のよう。公園を訪れる人々は、元気で育つようにと優しく見守ります。

菅野さん発行の『妙蓮寺通信』は去年の夏、死にかけていた雛をつきっきりの看護で助けた港北区富士塚のSさんご夫婦や雛を無料で診察した藤井動物病院の藤井先生のような温かい人々の姿を伝えています。

    自然とともに

 菊名池は、かつては約3万bの広さを誇り、美しい自然を求めて、高浜虚子や斉藤茂吉も訪れた名池だったそうです。

ところが、下水の不備により生活排水が流れ込んで水質が悪化、その悪臭を断つためにあまりにもあっさり、と埋め立てられてしまいました。菅野さんをはじめとする地元の人々は、「菊名池を元通りに戻してほしい」と横浜市に陳情を続けています。
 
 残った他の水質は良好で、
10種の魚類、16種のトンボ、水鳥もバン以外に12種、特にセキレイ類や、カルガモ、コアジサシ等が見られ、冬になるとキンタロハジロが多数飛来するそうです。

菅野さんたちの夢が実現したら、より素晴らしい街中のオアシスが生まれるでしょう。かけがえのない宝物になると思うのですが……。

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