5月上旬、編集長に「桷の木の写真を撮ってきて!」と頼まれ、私は慌てた。それまで桷を私は知らなかった。急いで本で調べた。全国的に分布している木だが、花期を終えているので見つけにくいようだ。
そこで各地の緑化センターなどに電話して訊いたが、殆ど枯れてしまっていた。
近所の井上寛史さん(元農水省勤務)にお願いして東京都森林科学園(八王子市高尾)の職員・船津さんに頼み調べてもらったら同園に2本あった。
6月8日、恋人に会いに行くような気持ちで高尾へ。やっと出合ったのが、立入禁止の場所にひっそりと生えている2本の桷だった。
バラ科リンゴ属のズミ(桷)は「酸実」とも書き、別名を「コナシ」や「ミツバカイドウ」とも呼ぶ。上高地の小梨平はズミの別称にちなんだもの。名前のズミは「染み」を意味し、樹皮から黄色の染料を採ったことに由来する。
花期は5〜6月。つぼみは紅く、花開くと純白に。雪が降ったように白い満開の光景はじつに壮観だ。 (綱島 加藤弘年)
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