「表紙の写真、お宅のすぐそばで撮りました。法隆寺を前面にプリンスホテルが見えて、菊名の町が一目ですよ。表紙の言葉「とんとん表紙」に一筆いかがですか〜」
電話の向こうからいつもながらの落ち着いた声でお誘い。トントンビョウシで乗ってしまったのは、男もシビれる編集長の声“バス”のせいだけではない。わが住む里の絶景に、われながらしばしウットリ、夕空に浮かぶ富士、丹沢の山並みに魅せられるのが珍しくないからだ。そういえば近頃は、わが家から10bばかりの道端で三脚を立てて富士をねらっている人を、時々見かけるようになった。
その昔どなたが言い出されたのか、近くに「菊名スカイライン」の名があった。確かに夕方、市バスの59番か80番で帰ってくると、仲手原あたりから左手の窓いっぱいに西の山並みが広がる。なるほどスカイラインである。
谷底に張り付いたようなこの町にデコボコが目立つようになったのは、10年くらい前からだったろうか。ひときわ高い円筒形のホテルに目を見張ったと思ったら、浜銀のビルもぐんぐん背を伸ばしていた。谷間の町のスカイラインは大都会の様相を呈し始めた。
そ、ここは菊名。横浜新都心、新横浜をお隣に控えた町なのである。
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