慶應義塾のOBで、日吉には2年間、マジメに通っていた。漫画クラブにいて、毎日漫画ばかりを描いていた。日吉はボクの青春の街だった。
外国には「学生街」というのがある。パリのカルチェ・ラタン、ドイツのハイデルベルク等々だが、商店と学生が一つになって街の歴史と文化を創っている。
ところが、日本にはその手の良質の学生街というものがとんとなかった。慶大生の銀座、早大生の新宿というけれど、あれは早慶戦後の馬鹿騒ぎ用の臨時会場にすぎない。学生が、日々その街に通い、その街で過ごし、その街の人や店を愛する所でないと真の「学生街」とは言えないのだ。
ここ日吉は近頃、大学側と商店街側が人工地盤で一つにつながった。これで学生たちはデートに、クラブの集まりに、気楽にこの街を利用できる条件が整った。
もしも、ぼくが現役の慶応ボーイだったなら、喫茶店のマスターに話をつけて店を漫画展の会場に借りるだろう。ボクの個展になら大勢の彼女が漫画を観に来てくれるから、お店にとっても悪い話ではないはずだ。街が学生を育て、学生が街を発展させてゆくのだ、と思う。
近い将来、日吉こそ「学生の街」の王者になることを心から祈っている。
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