4年前まで娘が田園調布のC幼稚園に通っていた。ボクも園の行事にはホトンド参加し、様々なことを体験した。
横浜や渋谷方面など遠くから通園する児童には、必ず母親が付き添っている。彼女たちのことをボクは「送迎ママ」と名付けて大いに注目していたのである。
明日はどのワンピースを着てゆこうか、口紅の色はどれにしようか、とドレッサーの前で数十分過ごしてきたのだろう。どちらの送迎ママのオシャレも見事なまでにスキがなかった。
毎朝、ここ田園調布の並木道を歩むにはカンペキなファッションとウエストを引き絞る緊張感が要求されたのである。
ヨソ者が田園調布に臨むとき肩に力が入ってしまうのは仕方のないことである。
一方、生活者としての田園調布夫人はこのような現象を半ば迷惑そうに、半ばクールに眺めていたのが印象的だった。光が眩しいと、その影は濃い。田園調布に生きつづけるには様々のご苦労もおありになるようだ。
近い将来、東西が自由通路でつながるという田園調布・駅前事情。西側の格調が東側へ浸透するのか、東側の庶民性が西側へ拡張するのか、そして、その時のニュー送迎ママはどのような生態を見せてくれるのか。田園調布を愛して止まない一漫画家の胸の鼓動はいやが上にも高まってゆくのである。
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