代官山にヒルサイドテラスができた昭和45年はエキスポ70の開かれた年だと思う。
A・Bの2棟しかなかったけれど、豊かな緑の中の白いテラスが印象的だった。友人のカメラマンが猿楽町に住んでいて、レンガ屋で仕事の打合わせをし、ケーキもよく食べた。
GFもこの近所の住人で、テラスを中心に代官山一帯が最高のデートコースでもあった。もちろん当時は超・穴場。
C棟ができた昭和49年。山手通りのカトリック教会で結婚式を挙げた。雪のバレンタイン・デーのことで、白いテラスがさらに真っ白に見えたことを覚えている。
新妻はC棟の『くらふと滝陶』へ入会し、長男を産むまでの数年間、沢山の陶芸作品を産んでくれた。その時の作品、灰皿、ペン置きなどは今でもボクの机の上にある。代官山とボクには、深い関係があったのである。
D・E棟ができた昭和53年頃から急にアンノン族が増えてきたような気がする。彼女たちのご来場はウィークエンドに集中する。彼女たちのファッションショーを見物するのも楽しいけれど、ボクはウィークデーのふつうの代官山が好きだった。(今回の表紙絵はウィークデーの、一シーンです)
代官山はギャルのメッカとして有名になった感じがするけれど、実は大人の街なのだ。テラスの他にも素敵なお店が沢山ある。史跡の多いこの環境と個性豊かな店々が溶け合って独特のフンイキを創り出す。こんなステキな街を、オリーブ少女たちだけに独占させておくのはもったいない、と常々思っていた。
「玄関らしい玄関がない。どちらが表で、どちらが裏かも分らない。誰もが風のように出入りできる不思議な魅力を持っている」とは近刊の拙書「ビル・ウォッチンク」で述べたヒルサイドテラス評ではあるが、この評は、そのままわが街・代官山にも通用する。
風になった気分で、代官山へ遊びに行こう。特に、大人の方々よ。
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