「樅」といえば、山本周五郎の『樅の木は残った』がすぐに思い浮かぶ。時代小説の傑作である。それに、この本が出るころには、クリスマスが間近に迫っていることだろう。
樅は、クリスマスツリーだけでなく、建築や器具・製紙材料などに用いられている、マツ科の植物である。しかし、この樅という字は何故か私にとっては縁遠くて、一瞬何と読むのか迷ってしまったのである。
ちなみに、山本周五郎は、本号の特集地、港ヨコハマをこよなく愛し、小説の舞台にした作品が大半である。また、周五郎はわが東横沿線の新丸子と大変縁が深い小説家であったことは、新丸子の人でも殆ど知らない。
そもそも、彼の本名は清水三十六(さとむ)である。本名・山本周五郎は新丸子出身の質店店主の本名だ。
かの不朽の名作『樅の木は残った』は、この人、山本周五郎さんがこの世に居なかったならば存在しなかったのである。その経緯は、本誌38号創刊7周年記念号の「アルバム拝借」でどうぞ!
(武蔵小杉・大塚健嗣)
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