編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.567 2015.04.10 掲載
    第30号
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第30号「楠(くす)
号名 「楠」
サイズ B5判
紙数 764ページ
発行日 昭和60年(1985年)10月1日
頒布方法 定価200円
表紙 写真とイラストの合成
 「中目黒駅近くを流れる目黒川と目黒のサンマ」
表紙作成者 写真:一色隆徳(学生 祐天寺)
イラスト・畑田国男(漫画家 緑が丘)
デスクキャップ
山本裕二(学生 妙蓮寺) サブ・高田信治(綱島)            
特集
1. 
特集 わが街シリーズ 中目黒編

2. 新連載「ペットくん登場」

  
      表紙の裏ばなし      一色隆徳

渋谷から急行電車に乗ると、最初の停車駅がこの中目黒。地下鉄日比谷線との接続駅でもあります。

今回の表紙、背景写真は駅の渋谷寄りをかすめるように流れる、目黒区内最大の河川・目黒川。かつては鮎が泳ぎ、友禅流しの光景も見られたという清流も、今やその面影は全く失せ、汚水がコンクリートの河床をやっと覆う程度に流れているに過ぎません。

イラストの方は、というと……おわかりですね。落語「目黒のさんま」です。
――江戸の昔、さる大名が秋の遠乗りの折、中目黒まで来ますと百姓家の軒先からサンマを焼く香りがしました。サンマは庶民の食べる大衆魚とされていましたから、殿様は見たことも、もちろん食べたこともありません。



目黒川で友禅流しの染物屋さん

まだ清流だった昭和20年代
 

 百姓家へ赴き、一口食べると、これがウマいのなんのって……。で、お屋敷に帰ってもサンマの味が頭から離れません。あるとき招待を受け、いかなる料理でも食べられる機会を得ると、殿様、待ってましたとばかりにサンマを所望しました。相手方も庶民の料理を出すわけにはいかず、サンマを蒸して骨抜きし、粉を入れて団子にし、お椀に入れて出しました。殿様、一口食べると、不味いのなんのって……それで「これは何方にてとれたサンマか?」と尋ねますと、「房州より取寄せました本場物でございます」との答え。殿様「それがいかん。サンマは目黒に限る」――そういうお話です。

無論、この話はあくまで創作ですが、主人公は大名でなく将軍であることもあるようです。目黒は御狩場として歴代将軍がこぞって訪れた所で、こうしたことがこの話の背景になっているのです。

ちなみに、目黒区民まつりでは『目黒のさんま』パレードが見られるそうですし、私の住む祐天寺には、やはリ『目黒のさんま』という菓子があって好評を博しているようです。

 号名「楠」とは…   

日本の巨木をリストアップすると、この樹種、楠が多くを占めます。
 「とうよこ沿線」ホームページのボード「名木古木」にもわが国最大の巨木として鹿児島県蒲生町(かもうまち)の樹齢
1500年の「蒲生の大楠」が載っています。これは同町在住で本誌愛読者の方の投稿によるもの。ご覧ください。なにしろ大きくて太い幹。その幹にはドアーが付いていて人間が出入りできるのです。

写真右は東京のど真ん中、文京区の住宅街に現存する樹齢600年、幹の太さ8.5bの「本郷弓町の大クス」です。幹の周りにシメ縄が巻かれ、根元を踏み固めないよう竹の柵で囲み、周囲にはゴミひとつ落ちていません。地域の皆さんがこぞって、この楠をいかに日頃から大切に管理しているかが一目で分かります。

楠の木は良い香りがして昔は樹皮を防虫剤“樟脳”の原料としたそうですが……。(岩田忠利)




樹齢600年、幹の太さ8.5b「本郷弓町の大楠」

文京区本郷弓町、後楽園近く

撮影:岩田忠利

     編集日記

  第30号“楠”デスクキャップ
  山本裕二(妙蓮寺・大学生)

  第30号“楠”サブキャップ
  高田信治(綱島・電気工事士)



左:高田信治 右:山本裕二

 ――渡る世間に鬼はいない

 812 朝10時編集室着。特集の説明書と2820冊を持って中目黒へ。あるお店に飛びこむ。
 「あの〜『とうよこ沿線』という雑誌を編集している者ですが……」「なんだ、客かと思ったら広告屋か。帰った、帰った!」いつもこの調子だ。今日もやっぱりダメか――午後4時。残っているバックナンバーは3冊。

目黒銀座のジーンズショップ「六壺藩」に飛びこむ。「あの−、『とうよこ沿線』という雑誌を編集している者ですが……今回中目黒を特集することになりまして……」「ふ−ん、知らないねえ。社長がいるから話してよ」社長にバックナンバーを見せる。「へえ、おもしろい本だね。で、いくら出せば載せてくれるの?」「あ…ありがとうございますっ!」
 渡る世間に鬼はない。改めてそう思った。

 ――邪念は捨てるべきだった?!

 817  電話のベルが鳴った。「ハイ、『とうよこ沿線』です」「あの−、『とうよこ沿線』のバックナンバー、何冊かほしいんですけど……」「ハイ、ありがとうございます」「それから、次の号はいつ出るんですか? 私、待ち遠しくって……」
 苦い女性の声だ。うん、本誌の読者なら、きっと美しい人だろう。こんど個人的にお会いしたい。なに、デスクキャップの職権乱用だと!? そんなの構うもんか。などと考えてたら、緊張で声がうわずって「あ、あの−、あなたのために、なるべく早く出しますっ!」と言ってしまった。
 そしたら彼女は、「あなたって変な人ね」と言って電話を切ってしまった。ああ、惜しいことをした。
(山本裕二)


 ――気がつけば徹夜になっちゃった

 94 いつものように、夜8時半に編集室へ。なぜか不気味な静けさが漂っていた。
 先輩スタッフの福田君に聞くと、「嵐の前の静けさですよ。高田さん、覚悟してください」
 そうか、印刷屋さんに原稿を出してから本になるまで30日かかるから、7月31日を締切りにしたんだ……えっ! 1カ月以上も遅れているじゃん。それで最終締切りを91日にして10月1日納品にしたんだっけ。

う−ん、まず何から始めようかな。そうだ。自分が担当している「見上げてごらん夜の星」のレイアウトをしてしまおう! なんたってこの原稿、書くのに3日連続で夜中の3時までかかったもんな、うまいことレイアウトしなくちゃ。レイアウトも終わり、イラストも描きあげ、さて次は何しようかな?
  すると編集長が、「高田君、目次のレイアウト、やってくれよ」。へい! わかりました。元気に返事をしたものの、「もくじ」のレイアウトなんか、やったことないよ。訊きたいけどみんな忙しそうだもんな。邪魔できないし、そうか前の号を調べりゃいいんだ。ホイホイッと編集長、できましたよお。
 
 編集長「もう少し見やすくならないか」
 アララ、やり直しだ! エーンエーン。でも、がんばらねば。どっこいしょ、ホイできた。ハイ、編集長−。
 編集長「うん、ありがとう!」
 やった! ついにOKでたもんね。だけど今、何時なの? あれっ、朝5時じゃないか。徹夜になっちゃったよ−。まずい、きょう、仕事だ一!
(高田信治)


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