編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.554 2015.04.06 掲載
    第17号
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第17号「杏(あんず)
号名 「杏」
サイズ B5判
紙数 76ページ
発行日 昭和58年(1983年)7月1日
頒布方法 定価200円
表紙 イラスト「新横浜駅前の情景」
撮影者 漫画家・井崎一夫(都立大学)
デスクキャップ 久保島紀子(会社員 日吉)
特集 創刊3周年記念号

1. 
「教育の、ある試み」
  三宅島、西伊豆取材

2.  新横浜特集
  巨人軍グラウンド取材


3. 街のお医者さんガイド
  「新丸子・武蔵小杉」編
      表紙のことば     漫画家・井崎一夫

 今回は「新横浜」です。

新幹線開通のころ、「なんでこんなタンボの中に新駅が?」といぶかったものですが、あれから20年、駅前は整備され大ビル群が誕生して、新しい横浜の表玄関らしい風格を見せています。駅前から未完成の公園をぬけ、新装の「鳥山川大橋」に立ちましたが、この橋を境に、ビル街の様相は一変します。

タンボに割りこんで、見事に延びた大舗装道路。とり残された野菜畑の中に、古風なカカシが心細そうに立っていました。ブルドーザーがうなりをあげて赤土を押しあげ、はるかにかすむ森の向うあたりには、話題の「港北ニュータウンづくり」が急ピッチなのでしょう。


安政のころ、砂浜の小漁村にすぎなかった「横浜」の土地づくりは、田畑、葦原の地ならし、埋め立てから始められたと聞きますが、目の前の風景は、再びパイオニア浜っ子たちの、熱烈なバイタリティに触れるおもいです。

再来年には、ここに横浜と結ぶ地下鉄が完成するそうですから、後世の史家は、「一夜のうちにタンボが30万近代都市に……」と書くにちがいありません。「すげえなあ」私はひとり興奮ぎみでした。



昭和36年、現在の新横浜駅前。メダカ捕りの本田家の母と子

撮影:本田芳治さん(菊名)





ひとりで、と書きましたが、実際あたりを見回しても、人っ子ひとり見当たらないのです。ここは、タバコ屋のオバサンも、交番のオマワリサンの姿もありません。つまり、住宅地がないのです。時折、赤土を満載したダンプが、無愛想にフルスピードで通りぬけてゆくだけです。

人恋しさのあまり(少しオーバーかな)、駅前まで引き返し、13年前からここでレストラン、洗車場を経営する峯岸義助社長の話を聞きました。

「勝負田(しょうぶだ)、蛇袋(じゃぶくろ)といって、この辺一帯はタンボというよりは、両面小高い山にはさまれた湿地帯でした。私は、菊名で農業を営む4代目ですが、戦後の食糧難時代に、農地の一部としてここを手に入れたのです。びっくりしましたねえ。その土地が新横浜駅前の特等地になったのですから……。偶然そうなっただけで、特別先見の明″などあったわけじゃありませんが、ただクルマ時代を予見して、駅前になんの建物もない時期に、洗車場などをを作って先鞭をつけました。」

「“タンボの中の新駅”ということで、よく岐阜・羽島駅と比較されますが、今になってみますと、新横浜駅″は当然できるべくして生まれた駅、の感が強いのです。東京・川崎・横浜を結ぶ均等のカナメの地点にあるわけですから……。将来、新宿クラスの高層ビルを考えるとしたら、横浜駅東側、そしてこの新横浜の2カか所しかありません……」と峯岸社長。

 帰りがけ、駅前で再びここらしい風景を発見しました。大銀行(もちろん仮営業所)の前庭が、なんとキャベツ畑なのです。本来なら、赤・黄の美しい花が植えられる場所なのでしょうに……。来年はもう見られない貴重な風景として、スケッチしておきました。

 号名「杏」とは…   

 

アンズと聞いて連想するものは、夜店のアンズ飴、アンズジャムと、果実に関するものばかり。しかし、中国北部原産のこの木は、古くからカラモモ(唐桃)と呼ばれ、庭木としてつくられており、案外身近にある木なのです。

バラ科の落葉喬木で、卵円形に鋸歯のある葉。まだ桃の花も咲かないような早春に白または淡紅色の花を−度にたくさん咲かせている様は、すばらしいものです。タネは昔から杏仁と呼ばれ、咳止めの漢方薬として有名です。 (日吉・久保島紀子)



鶴見区の「横溝屋敷」の「アンズ並木」、杏の花

撮影:北澤美代子さん(綱島)

 拝啓 暑中お見舞い申し上げます

  第17号“杏”デスクキャップ

     久保島紀子(日吉 会社員)


 ギラギラと照りつける太陽の中、読者のみなさんは、いかがお過ごしでしょうか。私たち『とうよこ沿線』スタッフは、昼は会社に学校にと、それぞれの本業を。そして夜は編集室でデスクワーク。あるいは取材、広告集め、あるいは即席編集室パブにてビールを一杯と、一日24時間をフルに活用した日々を送っております。

 ――みんなの協力で一から創ったもの――

 たくさんの人の協力を得て、『とうよこ沿線』もとうとう3周年を迎えることになりました。

第2号から参加をし、古株というだけで、「ネッネッ、そこの消しゴム取って!……ありがと。アッ、ついでに辞書もお願い!」と、ずうずうしくスタッフを使ってしまうのが得意な私が、記念すべき3周年記念号のデスクキャップを終えられたこと、大変うれしく思います。

これは決して一人でできることではなく、嫌な顔もしないで私の頼みをひきうけてくれたスタッフ並びに協力者のおかげだと思っています。一ページ一ページが、自分たちで一から創りあげたもの。今まで通り、じっくりと味わってみてください。


 ――読後感想を巻末のおハガキでお願い――

 蒸し暑い日中を終えて、ホッと一息、夕暮れの涼風の中で、ぜひこの『とうよこ沿線』17号をお読みください。さらに涼をさそってくれる窓辺の風鈴のよぅに、さわやかな読後感をみなさんに与えることができたら、この上ない幸せです。
 ご返事は、本誌「ボイスBOX」宛、お送りください。巻末のおハガキはもちろん、直接編集室にお越しいただいても結構です。

 それでは、杏号をきっかけに、多くの人々との出会いが始まることを期待して……。

 さて、次号デスクキャップにバトンタッチ! 次号はなんと、早慶戦ならぬ、早慶ががっちり腕を組んでのスタートです。片や早大OB、誠実なお兄さんの辻村さん。片や慶大OB、ポップなお兄さんの田岡さん。たくましい独身男性の二人三脚に、乞うご期待!!   敬具


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