編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子

NO.547 2015.04.02 掲載 

    第11号
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第11号「欅(けやき)
号名 「欅」
サイズ B5判
紙数 76ページ
発行日 昭和57年(1982年)5月1日
頒布方法 定価200円
表紙 イラスト「田園調布西口駅前の情景」
撮影者 漫画家・井崎一夫(都立大学)
デスクキャップ 小山節子(白楽)
特集
1. 
もし明日、地震が来たら?
  沿線避難路 実地体験レポート

2.  われらはコロンブス
  野球シーズン真っただ中、さあ、野球場に行こう!

      表紙のことば     漫画家・井崎一夫

  今回は「田園調布」です。
  まいど駅前風景が続きますが、この駅描かぬわけにはまいりませぬ。デラックスではありませんが、山小屋風の洒落た小さな駅は大正12年目蒲線開通以来のものだそうですから、そのまま沿線の歴史、というよりは日本文化史に残るハイカラ建造物のひとつとも言えそうです。駅前の半円形のこれまたかわいい庭園の中に、こんな文章が刻まれていました。
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  この広場を中心とする凡そ80万平方の地域は、明治文化の先覚者渋沢栄−翁が我国将来の国民生活の改善のために当時漸く英米に現われ始めた「田園都市」に着目して、都市と田園との長所を兼ねた模範的住宅を実現させようと念願して、すでにあらゆる公的関係から退かれた後であるにも拘わらず、自ら老躯を運んで親しく土地を選定された所であります。

その目的の為の大正7年田園都市株式会社が創設されて、翁の理想に共鳴する人々に土地の分譲を行ない我国最初の近代的大都市が実現しました。この都市全体を一つの公園のように明るく美しいものにする為、建築その他に関して色々な申し合わせを固く守り、特に道路との境界には一切土塀、板塀などを設けず、花壇か生け垣の低いもの程度とすることなどを厳格に実行しました。その結果、この明るい住宅地と楽しい散歩地が生まれたのであります。

                  昭和34年秋、田園調布会会長 矢野一郎
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デンエンチョウフの名は、日本の高級住宅地の代名詞です。広い住宅の庭園にはまだまだ自然がそっくり息づいていました。有名人が多く住んでいます。人と生まれたからには、犬小屋にでもいい、一度ここに住んでみたい、と言った漫才師のセリフを思い浮かべながら、放射状道路のいくつかを歩き三丁目通りに来かかると、「住民掲示板」を囲んで、セーラー服の一団が大声をあげていました。
 「へえ、長嶋さんもここの住人?」「加藤って、加藤剛かしら?」「坂上? 二郎さんのことじゃない?」「まさかァ……」

有名人タレントなら誰でも田園調布住人にしてしまうところなど、あんまりお利口じゃないみたい。
 街角のタバコ屋のオバサンの証言(?)によると、休日にはこうした一行があとをたたないそうです。「敷地ばかり広くて住む人が少ないからタバコの売り上げはサッパリだよ、いっそ有名人のお屋敷ガイドでもやっペか」と、このオバさん歯を出して笑いました。
 田園詞布の庶民の顔をチラリと見ました。すこしホットしたな。


 号名「欅」とは…   

欅の特徴はなんといってもあの帯状に広がる枝ぶりにある。春の新緑、夏の濃い緑、秋の茶褐色の葉はもちろん、空いっぱいに広がろうとする力強さとおおらかさが感じられ、何ともいえない魅力ががある。

樹齢何百年という古木になると、高さ40b、径2bにも達し、4月から5月には淡い黄緑色の花をつける。ニレ科に属し、材は黄色みを帯びて堅く、美しい木目は家具に、あるいは建築用装飾材に使われる。分布は日本全土、台湾、中国、東洋系の樹木というわけだ。

東横沿線にも隋所にケヤキの木は見られる。今回取材した目黒区平町の町内会事務所の前の神社にも相当歳を重ねた欅が立っていた。ちなみに渋谷区と世田谷区は、欅を“区の木”に選定している。

 花見のシーズンが終わったこの時期、欅の下に立って若葉と木漏れ陽の織りなす金色のシャワーを浴びるのもいいのではないか。
             小山節子



綱島街道沿い、秋の東住吉小学校の欅

撮影:岩田忠利













  樺″号編集を終えて!

   本号欅<fスクキャップ   
   小山節子
(反町・フリーライター) 


思えば、11号のデスクキャップを、と岩田編集長から仰せつかったのが昨年の11月。企画を練りはじめたのはジングルベルの曲が街中に賑やかに流れている頃でした。
  あれから約半年、やっと船出の時を迎えた欅=\―。今、皆様のお手元で何を語っているのでしょうか。

ものみな新しい生命力に溢れ、生き生きと活動を始める5月のさわやかな息吹きがページの中から伝わってくるようなら嬉しいのですが……。

――ご協力の皆様に「有難う」

というのも、この11号を滞りなくお届けできたのは、若い編集スタッフの大活躍あればこそ。とりわけ、クラスメートがバイトに旅行に明け暮れている春休みに、編集雑務の全てを引き受けてくれた学生のOKコンビ。仕事が終わった後、疲れも見せず、編集室に立ち寄っては明るい微笑を届けてくれたミス編集室のKさん。彼らの仕事ぶりはまさに春まっさかりのフレッシュな若さそのものでした。

仕事とデスクとの二足のワラジがうまく履けず、ただオロオロ、ウロウロしていただけの無能キャップをカバーし、実質上のデスクを務めてくれたのは彼らだったのです。
 誌上での内輪話はあまりほめられたことではありませんが、まずは彼らに「有難う」そして「お疲れさま」を言わせてください。もちろん、執筆に、取材に、広告業務に寝食を忘れて飛び回ってくれた他のスタッフにも、協力依頼に心よく応じてくださった皆様にもこの場を借りて「有難うございました」のひとことを贈らせて頂きます。

 ――次号のデスクはチョコレートの山の上に寝た(?)青年

 さて、次号「桂」のデスクキャップはこの号で大活躍のOKコンビのひとり、桑原芳哉君(横浜国大教育学部3年生、身長178a、体重66`のそれはカッコ良くて頭の切れるナイスボーイです。
  読者の女性の皆さん、ぜひ彼の片腕に! ちなみに片腕は何本でも大歓迎だそうです。何しろ過ぎし2月14日には、チョコレートの山の上に寝るはめになった、というエピソードの持ち主ですから、競争はかなり激しくなると思います。ワレこそは…と思う方はぜひ、編集室の白いドアをノックしてみてください。眼鏡をかけたスラッとした青年がいたら、それが彼。お腹の突き出たミドルは違いますので念のため。

――編集室から飛び立った仲間、今は?

欅≠ニ本号の名前を決めた頃は、冬の寒空に裸の枝を広げていた慶大キャンパスの欅も今やすっかり新緑の中。この春、編集室から実社会へ飛び立っていった何人かのメンバーはどんな世界でどんな枝を広げていくのでしょうか。

春は出会いと別れの季節。この一冊が完成するまでにあったいくつもの出会いと別れをひとつひとつ噛みしめながら、ここにペンを置くこととします。






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