編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.518 2015.03.12 掲載

        画像はクリックし拡大してご覧ください。

  追跡! 地域問題
  Hotline
18
 地域問題を取材し、お伝えします!           
   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載“復刻版”

   掲載記事:昭和62年7月20日発行本誌No.39  号名「槿
(むくげ)

特集

 

 横浜新都心に東横線が乗り入れ!?
     ―― MM21、新たなステップへ ――


 

東横線が現在の渋谷から桜木町まで全通したのは、昭和7年の331日であった。以来東京と横浜とを結ぶ都市間鉄道として発達し、今では1日約100万人もの乗客を運んでいる。

 しかし、現状のままでは輸送力に限界があるため、先の運輸政策審議会(運輸省の諮問機関)の「答申」によって、東横線の複々線化、目蒲線への乗り入れ、相鉄沿線からの新線接続が予定されているのは、既にお伝えしたとおりである。(NO.513参照)
 ところが、ここでまた別の東横線に絡む動きが起こっている。ここのところ新聞等で報じられている東横線の横浜「みなとみらい21」地区への乗り入れ計画である。横浜−桜木町の廃線問題も含めて、大きな論議を呼んでいる。

 今回のホットラインでは、東横線の乗り入れ問題にスポットを当てながら、みなとみらい21計画を広く取り巻く状況についてもレポートしてみたい。



廃線計画が取り沙汰されている東横線桜木町〜高島町駅間。手前が桜木町駅、右手の空き地がMM21地区、後方ビルぐんが高島町駅と横浜駅方面


  みなとみらい21とは…

 「みなとみらい21」(略称MM21)はすでにご存じの方も多いと思うが、もう一度アウトラインをご紹介しよう。



イラストマップ:石野英夫


 MM21は、次の3つの柱によって建設・計画されている未来都市である。

 1.    横浜の自立性の強化……関内・伊勢佐木町地区と横浜駅周辺とに二分化されている街を一体化し、かつ市民の働く場・憩いの場を提供する。

 2.    港湾機能の強化……国際交流の場、緑地の整備、旅客船バースなど、従来の物流中心からの転換を図る。

 3. 首都圏の業務機能の分散……首都圏の業務機能を分担し、東京の過密状態を緩和する。
  敷地は、元三菱重工業横浜造船所の跡地を含む186ha。計画は就業人口19万人、居住人口l万人となっている。
  地区内には、ビジネス街、ホテル・ショッピング街の商業ゾーンを筆頭に、国際会議場・展示場などの国際交流ゾーン、既設の日本丸メモリアルパークをはじめとするウォーターフロント(水際)ゾーンなどが計画されている。

           MM線の必要性

  さて、この壮大な計画のMM21であるが、これだけの規模に対応した交通網の整備が必要である。
 まず道路網であるが、国道15号の青木橋付近から、関内地区へと抜ける都市幹線道路、地区北側の山内埠頭と県庁とを結ぶ臨港幹線道路が予定されているが、地区外での工事が必要となるため、完成までに時間を要するであろう。

 既存道路との接続では、後でも触れるが桜木町・戸塚線の地区内への延長がある。しかしこの線上には既存の桜木町駅駅舎があるため、駅舎を横浜駅側に移設することで工事決定している。
 道路網は以上のような形であるが、同時に市内外からの通勤客等を地区内へ大量に運ぶ鉄道もまた新都心の形成上、きわめて必要性が高いといえる。

  当初この計画は、JRの横浜線の延伸を予定していた。東神奈川から海側へコースをとり、横浜そごうの海寄りを通り地区内へ。そこから県庁・元町を経て根岸へと続く、延長約11kmの新路線である。横浜の副都心として変貌の著しい新横浜と直結し、また市北西部からの人の流れをスムーズにすることなどが目論まれていた。

 しかし、折しも、旧国鉄の民営化により横浜線の所轄であるJR東日本会社との調整が進まなかったという中で、今回の東急東横線の延伸案が浮上してきたといわれている。

   MM21は東京都心に直結。
   だが、廃線計画には反発

 新聞等によれば、ルートは東白楽駅から地下に潜り、横浜駅からMM21地区内へとカーブし、地区内を横断、県庁から元町谷戸橋付近へと抜ける。延長は約8キロで、運営は第3セクター方式になる模様。

 横浜市としては、「未だ東横線乗り入れに決まったわけではない」(横浜市都市計画局・金田課長)としているが、東横線が乗り入れることにより、MM21は東京都心と一直線で結ばれる。

 ただこの延伸にともない、横浜−桜木町の既設区間の廃止が取り沙汰されている。地元の野毛・桜木町地区の住民にとっては、京浜東北線や地下鉄はあるが、片足をもがれる格好となる。
 とくに、MM21による海側へ人々の流れが予想される、桜木町駅山側の野毛商店街にとっては、少なからず影響の出ることが心配されている。





 事実、この計画が新聞に報じられた昭和62611日、地元への市の説明会が行われたが、突然の計画変更に参加者が反発し、35分間で流会したという。
 その後、横浜市が地元に駅舎移動に伴う新駅前広場の整備、桜木町東戸塚線沿いのペデストリアンデッキ(高架歩道橋)の建設を確約することで、地元との調整段階にようやく入ったとする向きもあるが……。


危機感漂う老舗商店街、野毛の街

沿線住民は乗り入れに大賛成

 さて、沿線住民からみた場合、今回の延伸計画は、どのように受け止めているか。それぞれの地域で活躍されている以下の3名の東横沿線の方々にご意見をいただいた。

 意見を総合すると、延伸については賛成であるということである。MM21地区もさることながら、今まで不便であった山下公園や元町が近くなることを歓迎しての声といえよう。東横線に通勤・通学の足としてだけでなく観光路線としての色合いも加わることは間違いない。
 また横浜のファッションの原点、元町と自由が丘・代官山・渋谷が結ばれることにより、さらに東横線は“おしゃれ≠ネ路線になるだろうし、沿線のイメージもさらに上がるのであろう。(これ以上の地価高騰をもたらすとすれば問題であるが……)。



東横線の新駅予定地と言われ、歓迎ムードに沸く元町商店街入り口。実現すればここを拠点に港・中華街・外人墓地・マリンタワーなどの観光ルートとなる


  ウォーターフロント(水際)は 今、ホットスペースだ!

 今、東京は再開発ブームである。特に地価が高く、まとまった土地のない都心から一歩遠ざかった東京湾岸地区の大規模開発は目白押しである(下記別表参照)。まさにはやりのウォーターフロントだ。
 だからMM21としてもこれからの中で特色を出してゆかねばならないし、デメリットは失くしてゆかねばならない。

  こうした時に出た東横線乗り入れ案は、まさにタイムリーなプレゼントだといえよう。計画どおりの街並が10年先、15年先に港の水面に映えているかどうか、楽しみなところである。


  東京湾岸で計画中の主な開発計画

■竹芝開発(港区)……船客ターミナル、多様  能ホール、業務ビル
 ■有明地区(江東区)‥‥‥ビジネス地区、
  スポーツレジャー地区(ヨットハーバー)

 ■13号地理立地(江東区)‥…東京テレポー  ト構想、国際会議場
 ■大川端(中央区)……都心定住型住宅の供給  (「リバーシティ21」)
 ■幕張新都心(千葉市)……国際見本市会場(  「暮張メッセ」)
 ■浦安市舞浜‥…東京ディズニーランド、国際   ホテル群


これが私の意見です



 横浜国大元学長・経済学者  越村信三郎さん

           延伸は賛成、廃線は反対

 
文明開化の発祥の地、元町・山下町への乗り入れには賛成だが、由緒ある横浜〜桜木町間を廃線にし新線コースを走るのは反対である。野毛、高島町地区の商店街・住民・企業へのデメリットが気になるからである。
 現在の桜木町駅は官庁街・観光地へ行くにも中途半端な位置にあるので延伸は歓迎だ。それも桜木町駅を起点にパリやロンドンの地下鉄のように元町・山下町、MM21地区、伊勢佐木町へと縦横に……。
 また新線の新設よりは現状の高島町〜桜木町間の高架下を活用すべきだと思う。このコンクリートの壁が、海と山を完全に遮断し、あの地の発展の障害となっている。高架下を相互に往来できる効果的利用を考えたらどうだろう。



横浜市港北医師会副会長  
内藤哲夫さん
             山下公園まで通じて本当だ

 
私は延伸には大賛成だ。私はそもそも山下公園まで東横線が通じていて本当だ、と思っている。例えば会合や結婚式が山下公園周辺のホテルで行われることが多いが、今は桜木町駅からタクシーで行っている。実に不便な話だ。

 将来的にMM21は東急にとってもドル箱になるであろうし、桜木町駅から先に伸ばすといっても建物が建てこんでいて無理だ。ただ長年の関係から、心情的には桜木町に何がしかのものを残しておいてほしい気はするけれども…。



自由が丘商店街振興組合
専務理事 三枝輝雄さん

               海の手″文化圏の形成

私の個人的な考え方としては、この構想は、21世紀を見すえた新文化圏の形成となり、すばらしいと思います。
 当商店街では以前、中央線沿線の山の手=A隅田川を中心とした川の手=A青山・渋谷・自由が丘経由の横浜に至る東横沿線と湘南地域を海の手≠ニして若者を対象に買物調査をしたことがあります。
 この構想が実現すれば、商業者の視点は別にして、元町・山下町が加わった海の手¢褐ンの交流がはかられ、新しい文化圏の形成となると確信します。

                 取材・写真・文 岩田忠利 / 取材・文 本田芳治
「とうよこ沿線」TOPに戻る 次ページへ
「目次」に戻る