編集:岩田忠利/編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
NO.514 2015.03.10 掲載 

     

   追跡! 地域問題
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   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”

   掲載記事:昭和61年5月1日発行本誌No.33  号名「柳」

 

 バスの待ち時間が正確に!
  ― 東急バスが新交通システム導入 ―


  待てど暮らせど来ないバスにイライラ……こんな経験はどなたもお持ちでしょう。
  身近で手軽な交通機関である路線バスは、半面時間が不正確(いつ来て、いつ目的地に着くのか不明)であるという大きな難点をかかえ、しかも他の交通手段の充実も手伝って、都心部における利用者のバス離れの傾向が、近年業界全体に見られるそうです。


バス停でバスを待つ人々

  そこで登場したのが、この「東急バス新交通システム」。すでに朝日新聞で大きく取り上げられ、機械の設置も進んでいるこのシステムについて、本誌も東急電鉄広報室に伺ってみました。

      どんなところが新しい?

 この新システムとは、大体次のようなものです。

@基本ダイヤに従い、バスを運行する。
  
  A主要停留所等に設置した感知機が、各バスの運行状況を微弱電波で東急バス目黒営業所に送信する
  B営業所内のコンピューターが、送られたデータをもとに、等間隔運行を図るようダイヤを新たに編成し直す。

C新ダイヤを運行中の各バスに送信すると同時に、主要停留所に設置した案内標識に、2台目までのバス到着時刻を表示する
 (表示時刻の誤差は2分以内をメドとし、早発する場合はないそうです)。

 つまりこのシステムは、バスがいつ来るかわからない、というイライラを解消するだけでなく、ダンゴ状態の運行を改善することによって各停留所におけるバスの待ち時間をほぼ一定にし、道路混雑時でも待ち時間を現行より短縮できる、という大きな特長を持っているわけです。
 単なる接近表示システム(バスが停留所に近づくとそれを表示する)は、すでに都営バスや東急バスの一部にも導入されていますが、今回の試みは、待ち時間の短縮という点でそれらとは根本的に異なる、全く新しいシステムであると言えるでしょう。

  3月末から目黒通り中心に

 今のところ、実用開始時期は3月下旬(従って、この記事が皆様のお目にとまる頃にはもう実施されていることと思います。導入される路線は、目黒通りを中心とする下記の表の4路線6系統です。

碑文谷線 黒01系統 目黒駅〜大岡山小学校
清水線 黒02系統 目黒駅〜二子玉川園
黒03系統 目黒駅〜砧本村
学校線 黒05系統 目黒駅〜成城学園前駅
黒07系統 目黒駅〜弦巻営業所
三軒茶屋線 黒07系統 目黒駅〜三軒茶屋


 施設面では、目黒駅前ターミナルの総合案内板を始め、2台目までのバス到着予定時刻と最終バス終了を表示する案内機付きシェルターや標識が主要停留所に設置されます(下の地図参照)。

   東急バス新交通システム導入路線


地図:伊奈利夫

 

ただし、前記の通り、このシステムは従来にない全く新しい試みなので、当の東急自身、実施してみないと現実にどんな状況になるのか判断しかねる、いわば一種の「賭け」なのだそうです。そのため、現時点ではこれ以上導入路線を増やす予定はありませんが、もし好調ならば、将来的には、混雑の激しい玉川通りや池上通りにも導入していきたいとのことでした。

 なお、新システム導入に先がけて、新型車両21台が運行されています。この車両は、子供やお年寄が乗降しやすいように車体全体を低くしたり、観光バス並みに背もたれを高く、窓を広くするなどの工夫が施されていて、利用者にも大変好評であるようです。

    利用者自身にも責任が

この間題の根本には、交通総量の過多という難問が横たわっている訳ですから一バス会社はもとより、行政側の対応にもどうしても限界があります。
 そんな中で、路線バスの正確な運行を期すために、この新システムの他にも、バス専用・優先通行車線の法制化やバスベイ(バス停車用のスペースをとった停留所)設置のための道路改良工事、といった努力がなされています。

  しかし、こうしたせっかくの施策も、実際には他車両による優先レーン侵害や違法駐車等で、決して有効に機能しているとは言えません。根本の難題を解決する特効薬がないだけに、かえって、さまざまな方策の一つ一つの積み重ねが非常に重要になってきています。
 そういった意味で、
便利で正確な都市交通網を整備していく責任の一端は、他ならぬ私たち都市住民自身にもあるのだということを忘れてはならないでしょう。


    
取材・文:松本高明/取材:大下三千代









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